KY活動は、どの現場でも毎朝やっているのに、進め方を教わったことがある人は多くありません。前の職長のやり方を見て覚え、「今日も気をつけていきましょう」で終わる朝礼も、めずらしくないはずです。
この記事は、職長と安全担当の方に向けて、KY活動の型(KYT基礎4ラウンド法)を厚生労働省の解説どおりに整理し、朝礼の5分に収める削りどころと、作業別の危険と対策の見本をまとめたものです。例に出す危険と対策はすべて書き方の見本で、実在の現場のものではありません。最後は、その現場の職長と作業員が決めてください。

先に結論:4つの問いを順番に投げるだけ
KY活動の型は、4つの問いです。厚生労働省の職場のあんぜんサイトが載せているKYT基礎4ラウンド法の進め方を、朝礼で使う形に並べ直すと、こうなります。
| ラウンド | 問いかけ | 紙に書くこと | 絞り込む数 |
|---|---|---|---|
| 1R | どんな危険がひそんでいるか | 「〜なので〜して〜になる」の形で出た危険を全部 | 絞らない |
| 2R | これが危険のポイントだ | 重要な危険に○印、合意で◎印とアンダーライン | 1〜2項目 |
| 3R | あなたならどうする | 「〜する」の形の対策案 | 各3項目程度 |
| 4R | 私達はこうする | ※印をつけた重点実施事項と、チーム行動目標 | 各1項目 |
同サイトでは、2Rで絞り込んだ危険のポイントと、4Rで決めたチーム行動目標を、リーダーのリードで指差し唱和して確認するとされています。最後は現場で確認する指差し呼称項目を全員の合意で決め、タッチ・アンド・コールでしめくくる流れです。
順番を覚えるより、1Rは危険、2Rは絞り込み、3Rは対策、4Rは約束と役割で覚えたほうが、朝礼では迷いません。
書式の準備が面倒なら、exbk.jp のKY活動シート(無料・登録なしで使える)を先に開いてみてください。今日の作業と条件を選ぶと、危険のポイントの候補が並び、重点を2つまで選ぶと朝礼で読み上げるシートになります。日付ごとに保存され、参加者のサイン欄つきで印刷できます。
こうした現場の書式を社員が自分で形にする進め方は、建設業向けのClaude Code研修で扱っています。研修の題材は作業日報やKY活動シートなど、実際に毎日書いている書類です。
KY活動とKYT、どう違うか
言葉が似ているので、現場でも混ざりがちです。厚生労働省の説明を並べると、役割がはっきりします。
KY活動について、同省の転倒災害プロジェクトのページには「業務を始める前に『どんな危険が潜んでいるか』を職場で話し合い、危ない点について合意をした上で対策を決め、設定された行動目標や指差し呼称項目を一人一人が実践することで、安全衛生を先取りしながら業務を進める方法」とあります。KYのKは危険、Yは予知の頭文字です。
一方でKYTは「作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法」と説明されています。Tは訓練(トレーニング)です。
つまり、今日の作業に効かせるのが活動、人を鍛えるのが訓練。毎朝の朝礼でやっているのは活動のほうで、その進め方の土台に訓練の型を借りている、という関係になります。
由来についても同じページに書かれています。もともと住友金属工業で開発されたものを、中央労働災害防止協会が問題解決4ラウンド法と結びつけ、さらに旧国鉄の指差し呼称を組み合わせた「KYT4ラウンド法」が標準とされている、という経緯です。指差し唱和が型の中に入っているのは、そういう出自があるからでした。
4ラウンドの進め方を、もう少し細かく
準備するものと人数も、同サイトに書かれています。イラストシート、模造紙、赤黒のマジックインキ。チームは一人ひとりが意見を出しやすいように5人から6人を標準とし、リーダー(司会・進行)と書記を決めます。必要に応じてレポート係や発表者も置きます。
1R どんな危険がひそんでいるか
リーダーが状況を説明し、この中にどんな危険が潜んでいるかを問いかけます。メンバーの発言は「〜なので〜して(危険要因)〜になる(事故の型)」の形で出す、と決められています。
この言い方は窮屈に見えますが、守ると効きます。「足場が危ない」では対策が立ちません。「雨で足場板が濡れているので、資材を持って移動するときに足を滑らせて転落する」まで言えば、3Rで何をすればいいかが自然に決まります。
2R これが危険のポイントだ
出た危険のうち、チームにとって問題のある重要な危険はどれかを問いかけ、重要と思う項目の番号を発言してもらい、書記が赤で○印をつけます。そこからみんなの合意で、対策に緊急を要するものや重大事故になりうるものを1〜2項目に絞り、◎印とアンダーラインを引いて「危険のポイント」とします。
朝礼が長くなる原因は、たいていここです。全部を重点にすると、全部が重点でなくなります。1〜2項目という数字は、本来の型に書かれているものです。
3R あなたならどうする
危険のポイントについて、予防したり防止したりするのに「あなたならどうする」と問いかけます。メンバーは具体的で実効可能な対策を「〜する」と発言し、各3項目程度まで出します。
ここで「注意する」「気をつける」が出たら、行動に言い換えてもらいます。誰が、いつ、何を、どうするか。言い換えられない対策は、あとで守られたかどうかも確かめられません。
4R 私達はこうする
出た対策のうち、チームとして必ず実施しようというものを合意で絞り、※印とアンダーラインをつけて重点実施事項(各1項目)にします。そのうえで全員の合意でチーム行動目標(各1項目)を決めます。書き方は「〜するときは」「〜を〜して〜しよう」の形です。
最後に、重点実施事項に関連して現場で確認する指差し呼称項目を全員で決め、3回指差し唱和して、タッチ・アンド・コールでしめくくります。
朝礼5分に収めるときの削りどころ
5分しかないときに、どこを短くしてどこを守るか。工程を飛ばすより、絞り込む数と発言の形を守ったほうが早く終わります。配分の一例を挙げます(この時間配分は型に書かれたものではありません。進め方の目安として挙げます)。
| 工程 | 目安 | 短くするコツ | 削ってはいけない理由 |
|---|---|---|---|
| 今日の作業と条件の確認 | 30秒 | 前日に職長が決めておく | 条件が共有されないと、1Rが昨日と同じになる |
| 1R 危険を出す | 1分30秒 | 一人1つ、順に言う | 職長だけが話すと、気づきが出てこない |
| 2R 絞り込む | 30秒 | 挙手ではなく番号を言う | 重点が3つ以上だと、誰も覚えていない |
| 3R 対策を出す | 1分30秒 | 危険のポイントごとに1〜2案 | 「気をつける」で終わると実施の確認ができない |
| 4R 行動目標と指差し呼称 | 1分 | 目標の文型を決めておく | 唱和しないと、その日の約束になりにくい |
毎日同じ内容になる、という悩みもよく聞きます。作業と条件が同じなら、危険も似るのは当たり前です。変わるのは天候、進捗、人の組み合わせ、隣で動いている業者。今日だけ違う条件を1つ先に言葉にしてから1Rに入ると、出てくる危険が変わります。
作業別の危険と対策の例(すべて見本)
ここからは書き方の見本です。実在の現場の事故ではありません。自分の現場の言葉に置き換えて使ってください。
掘削(床掘り・溝掘り)
| 危険(1Rの言い方) | 対策の案(3R) |
|---|---|
| 掘削面が雨や湧水で緩んでいるので、底で作業していて、崩れた土砂に埋まる | その日の作業を始める前に、点検者が地山の浮石やき裂、湧水の状態を点検する |
| 掘削した溝の縁を歩いて移動するので、足を踏み外して溝に転落する | 通路を溝から離した位置に決め、縁に近づく作業のときは声をかけ合う |
| 地中の埋設管の位置を確かめずに掘るので、管を壊して水やガスが噴き出す | 試掘で位置を確かめてから機械掘りに入る |
重機作業(バックホウ・ダンプ等)
| 危険(1Rの言い方) | 対策の案(3R) |
|---|---|
| 後退するダンプの死角に作業員がいるので、気づかれずにひかれる | 後退の合図を出す誘導員を決め、誘導員が見える位置以外では後退させない |
| バックホウの旋回範囲の近くで手元作業をしているので、旋回したバケットに接触する | 旋回範囲をカラーコーンで区切り、中に入るときは運転者と目で合図してから入る |
高所作業(足場・2m以上)
| 危険(1Rの言い方) | 対策の案(3R) |
|---|---|
| 雨で足場板が濡れているので、資材を持って移動するときに足を滑らせて転落する | 資材は手持ちをやめ、上げ下げの方法を朝に決める。移動前に足場板の水を拭く |
| 手すりを一時的に外して材料を入れるので、外したまま作業を続けて墜落する | 外す人と戻す人を同じ人に決め、戻すまで次の作業に移らない |
道路上の作業(交通規制あり)
| 危険(1Rの言い方) | 対策の案(3R) |
|---|---|
| 規制帯の外に体が出て作業するので、通行車両に接触する | 規制帯の幅を朝礼で全員に見せ、外に出る作業は保安員の合図を待って行う |
暑い日
| 危険(1Rの言い方) | 対策の案(3R) |
|---|---|
| 暑い中で休まずに作業を続けるので、熱中症で倒れる | 休憩の時刻を朝に決めて全員で読み上げ、単独作業の時間帯をつくらない |
表の「危険」の欄が、どれも「〜なので〜して〜になる」の形になっているのを見てください。この形を守るだけで、対策の欄はほとんど自動的に決まります。
よくある失敗
現場で見かけるつまずき方を挙げます。どれも、型のどこかを飛ばしたときに起きます。
- 職長が1人で読み上げて終わる。1Rの目的は、気づきを集めることです。
- 危険を挙げただけで対策を決めない。3Rと4Rがないと、記録は残っても作業は変わりません。
- 対策が「注意する」「気をつける」。行動に言い換えないと、実施の確認ができません。
- 重点が3つも4つもある。2Rで1〜2項目に絞るのが本来の型です。
- シートを書くのが目的になっている。書き終わってから唱和する順番が逆で、決めたことを声に出してから現場に出ます。
シートに何を書くか、アプリでどう楽になるか
紙でも表計算ソフトでも、この項目が並んでいれば型どおりに書けます。
| 項目 | 記入の見本 |
|---|---|
| 日付・現場名 | 9月29日/【見本】町道サンプル線 道路改良工事 |
| 職長・参加者 | 職長と、その日の作業に入る全員の名前 |
| 今日の作業・条件 | 掘削、重機作業/暑い日 |
| 危険のポイント(◎) | 後退するダンプの死角に作業員がいるので、気づかれずにひかれる |
| 重点実施事項(※) | 誘導員が見える位置以外では後退させない |
| チーム行動目標 | ダンプを後退させるときは、誘導員の合図を見てから動かそう |
| 指差し呼称項目 | 「誘導員ヨシ!」 |
| サイン欄 | 参加者全員 |

exbk.jp のKY活動シートは、この並びで作ってあります。今日の作業(掘削、高所作業、つり作業、重機作業、道路上の作業など)と条件(暑い日、雨、風が強い日など)を選ぶと、その組み合わせで起きやすい危険の候補が「〜なので〜になる」の形で並びます。重点は2つまでしか選べません。選ぶと、読み上げ用のシートと対策案が下に出て、参考にした労働安全衛生規則の条文番号も添えられます。条文番号は自分でも確かめてから使ってください。
印刷するとサイン欄がつきます。ログインせずに使うとブラウザの中だけに保存され、サーバーには送られません。事務所のパソコンと現場のタブレットで同じデータを見たいときだけ、無料のアカウント登録をすれば同期できます。アプリの画面と作った経緯はKY活動シートのアプリの紹介にまとめました。
AIに下書きを作らせると、どこまで書けるか
この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本の条件を渡して1Rから4Rの下書きを作らせてみました。渡した条件は「道路改良工事、掘削と重機作業、暑い日、作業員6人」だけです。返ってきたのが次の文です。
1R:後退するダンプの死角に作業員がいるので、気づかれずにひかれる/掘削面が湧水で緩んでいるので、底で作業していて崩れた土砂に埋まる/暑い中で休まずに作業を続けるので、熱中症で倒れる
2R:ダンプの死角の項目を危険のポイントとする
3R:誘導員を決める/後退の経路をカラーコーンで区切る/運転者と誘導員で合図を決める
4R:ダンプを後退させるときは、誘導員の合図を見てから動かそう
文の形はそろっています。ただ、この下書きには今日の現場がありません。ダンプの出入口がどこか、誘導員に立てる人が何人いるか、隣の業者が何時に入るか。AIはそれを知らないので、どの現場にも当てはまる文しか書けません。
だから使いどころは、空欄を埋める前の呼び水です。出てきた3つを朝礼で読み上げて、「うちの現場だと、これは違う」「今日はこっちのほうが危ない」と作業員から出てくれば、1Rとして成立します。AIが出した文をそのまま重点にして唱和するのは、型としても中身としても逆の使い方になります。
書かせ方のコツは、条件を細かく渡すことです。この種の指示の工夫はと呼ばれますが、現場で必要なのは難しい技術ではなく、作業・条件・人数・時間帯を省かずに書くことだけでした。
書式を自社のものにする
KY活動シートのアプリは で作りました。日本語で「こういう書式で、こう動くものを」と指示して組み立てる道具です。
どの作業でどの危険を先に見るか、シートに何を残すかは、その現場の人がいちばんよく知っています。元請から渡される書式が現場ごとに違うのも、建設業ではよくあることです。だから、書式を持っている人が自分で作れるほうが早い。exbk.jp の建設業向けのClaude Code研修は、その進め方を扱っています。Zoomのライブ形式で全10時間(2時間×5回)、題材は作業日報、KY活動シート、工事写真台帳、出来形管理表、段階確認の予定といった、いま手書きやExcelで作っている書類です。プログラミングの経験は前提にしていません。
建設の現場でAIをどう使うかを広く見たい方は建設業でのAI活用を、何から手をつけるか迷っている方は建設業のDXの始め方をどうぞ。事故やヒヤリの原因をたどる方法はなぜなぜ分析のやり方、作業ごとの手順を紙にする話は作業標準書の作り方にあります。
まとめ
- KY活動の型は4つの問い。1Rで危険を出し、2Rで1〜2項目に絞り、3Rで対策を出し、4Rで重点実施事項とチーム行動目標を各1項目決めて唱和する
- 1Rの発言は「〜なので〜して〜になる」の形で出す。この形を守ると、対策の中身が自然に決まる
- 朝礼が長引くのは、工程が多いからではなく、絞り込んでいないから。絞る数は型に書かれている
- AIが作れるのは、どの現場にも当てはまる下書きまで。今日の現場の事情を足すのは職長と作業員の仕事
- 危険と対策の最終判断は、その現場の職長と作業員が行う
毎朝の書式を、誰かに作ってもらうのを待たずに自分たちで形にできると、現場ごとの違いにそのまま合わせられます。その進め方は建設業向けのClaude Code研修で学べます。
