この記事は、中小の建設会社の経営者と現場管理の方に向けて、建設DXとは何かと、大きな投資をせずにどこから始めるかをまとめたものです。国の施策(i-Construction 2.0、インフラ分野のDX)は、国土交通省の公式ページで確かめられた内容だけを短く紹介します。

先に結論:入口は重機より書類

建設DXの入口は、重機やドローンより先に書類です。見落とすと現場が止まる情報を1か所に集め、毎朝1画面で見られるようにする。ここから始めれば、お金も人手もほとんどかけずに効き目が出ます。

知りたいこと答え
建設DXとはデータとデジタルの道具で、仕事の進め方そのものを変えること
国の目標i-Construction 2.0 で、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割(生産性1.5倍)
中小が最初に手をつける情報資格・検査の期限、段階確認・立会いの予定、工程の遅れ
進め方書き出す → 1か所に集める → 今日から数えて並べる → 毎朝見る人と時間を決める
次に広げる先工程表、日報(出面)、搬出記録、写真台帳・施工計画書

期限や予定を1画面で見る形は、exbk.jp の建設現場アプリのダッシュボードで試せます。無料で、登録なしで使えます。

建設DXとは、仕事の進め方を変えること

DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、直訳すると「デジタルによる変革」です。

パソコンやタブレットを配った、ソフトを入れた、というだけではDXになりません。紙の日報をタブレットに打ち込むようになっても、事務所で誰かが結局それを紙に写しているなら、仕事の進め方は元のままです。

建設の現場に当てはめると、起こしたい変化はたとえば次のようなものです。

いまの状態DXで起こしたい変化
資格や検査の期限は、担当者の頭と卓上カレンダーにある期限が近いものが、誰が見ても分かる形で並んでいる
段階確認の予定は、監督員とのやりとりのメールに埋もれている今週の確認・立会いの予定が一覧で見える
工程の遅れは、現場代理人が気づいたときに電話で伝わる遅れている作業が、朝の時点で事務所にも見えている
出面や搬出量は、月末に日報をめくって数えるその月の延べ人数と搬出量が、日報を書いた時点で集計されている

どの行も、新しい機械を買う話ではありません。変えるのは、情報がどこにあり、誰がいつ見るかです。

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国土交通省がめざしていること

i-Construction と i-Construction 2.0

i-Construction は、国土交通省が進めてきた、建設現場の生産性を上げるための取組です。ICT(情報通信技術)を土工に全面的に使うことなどで建設生産システム全体の生産性を上げ、魅力ある建設現場をめざすものとされています。

令和6年4月16日、国土交通省は「i-Construction 2.0」を策定したと発表しました。報道発表の要点は次のとおりです。

項目内容
背景さらなる人口減少が見込まれるなかで、インフラの整備と維持管理を将来にわたって続けていく必要がある
目標2040年度までに、建設現場の省人化を少なくとも3割、つまり生産性を1.5倍に上げることをめざす
3つの柱施工のオートメーション化/データ連携のオートメーション化/施工管理のオートメーション化

3つの柱のうち、データ連携と施工管理は、書類や予定の扱い方に深く関わります。現場の情報を人が転記して回すのをやめ、データのままつないでいく方向です。

インフラ分野のDX

国土交通省は「インフラ分野のDX」として、データとデジタル技術を使って社会資本や公共サービスを変えるとともに、業務そのもの、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土、働き方も変えていく取組を進めています。ページには、インフラDXアクションプランや、オープンデータ、AIの実装に向けた取組方針などが並んでいます。

設計から施工、維持管理までを3次元のデータでつなぐ も、この流れの中にある取組です。

中小の会社はどう受け止めるか

国の目標は、大規模な公共工事や最新の機械を使う現場の話に見えるかもしれません。それでも方向ははっきりしています。少ない人数で現場を回せるようにすることと、情報を手で転記せずデータのままつなぐことです。

この2つは会社の規模に関係なく取り組めます。社員が少ない会社ほど1人が抱える期限や予定が多く、うっかりがそのまま現場の止まりや手戻りにつながります。

始める前に:つまずきやすい3つの始め方

DXに取り組んで途中でやめてしまう会社には、共通点があります。

つまずき方何が起きるか代わりにすること
大きなシステムを一度に入れる覚えることが多すぎて、現場が紙に戻る1つの書類から始める
入力することが目的になる入れるだけで誰も見ないので、続かない誰が、いつ見るかを先に決める
現場の意見を聞かずに選ぶ使いにくい画面になり、二重入力が起きる実際に書く人に、見本を触ってもらってから決める

特に大事なのは2つ目です。データは、見る人がいて初めて役に立ちます。入力の手間だけが増えて見る場面がないと、現場からは仕事が増えただけに見えます。

最初は「見落とすと困る書類」から

どの書類から始めるか。目安は2つです。

  1. 見落とすと困る(期限切れ、段取りの抜け、手戻りにつながる)
  2. いまは散らばっている(紙、Excel、メール、担当者の頭の中)

この2つを満たす書類ほど、デジタルに移したときの効き目が大きくなります。建設の現場で代表的なものを表にしました。

書類・情報いまありがちな置き場所見落とすと起きること
作業員の資格・免許の期限資格者証のコピーの束、担当者のメモ期限切れのまま作業に就いてしまう
重機の定期自主検査の期限機械ごとの点検表、リース会社の書類検査を受けていない機械を使ってしまう
段階確認・立会いの予定監督員とのメール、手帳確認を受ける前に次の工程へ進んでしまう
工程の遅れ工程表の紙、現場代理人の頭の中気づいたときには取り戻せない遅れになっている
出面(作業員の人数)日報の紙月末の集計に時間がかかる
搬出量(残土・がら)伝票、マニフェストの控え集計の漏れや、数字の食い違いが起きる

上の3つは期限や予定、下の3つは日々の記録の集計です。始めるなら上の3つです。毎日書く必要がなく、一度登録すればあとは見るだけで済みます。

重機の検査の周期は特定自主検査の記事に、マニフェストの期限は産業廃棄物のマニフェストの記事に、条文で確かめてまとめています。

手順:1画面で見る仕組みを作る

大きな投資をせずに始める手順を、4つに分けて書きます。

手順1:散らばっている期限と予定を書き出す

最初はデジタルの道具を使わなくてかまいません。資格者証のコピー、機械の点検表、監督員とのメールを集め、次の4つを書き出します。

対象(人・機械・現場)/名称(何の資格・検査・確認か)/期限・予定日/担当者

書き出すだけで、来月切れる資格が見つかることも珍しくありません。

手順2:1か所に集める

書き出したものを1つの置き場所にまとめます。表計算ソフトでも、アプリでもかまいません。肝心なのは置き場所を1つに決めることです。資格はこのファイル、検査は別のファイル、と分かれていると、見る人が両方を開かなくなります。

手順3:「今日」から数えて並べる

日付順に並べるだけでは足りません。あと何日かが見えると、手を打つ順番がすぐに分かります。

並べ方見えること
期限切れいますぐ対応が必要なもの
30日以内に期限更新の段取りを始めるもの
7日以内の段階確認・立会い今週の段取りに入れるもの
遅れている作業工程の組み直しが必要なもの

手順4:毎朝見る人と時間を決める

最後に、誰が、いつ見るかを決めます。たとえば「朝礼の前に、現場代理人と事務所の担当者がそれぞれ1画面を見る」のように、見る場面を仕事の流れに組み込みます。ここが決まっていないと、手順1〜3で作ったものは使われなくなります。

1画面で見るダッシュボードの例

手順3と4を形にすると、ダッシュボードと呼ばれる画面になります。車の運転席の計器盤のように、大事な数字や予定をまとめて1画面に表示するものです。

冒頭で紹介した建設現場アプリのダッシュボードは、この考え方で作った画面です。

建設現場アプリのダッシュボード。期限切れ、30日以内の期限、7日以内の段階確認、遅れている作業、今月の延べ人数と搬出件数が並んでいる(見本データ)
建設現場アプリのダッシュボード。期限切れ、30日以内の期限、7日以内の段階確認、遅れている作業、今月の延べ人数と搬出件数が並んでいる(見本データ)

画像のデータはすべて見本で、架空の工事を入れています。画面の上には、期限切れの資格・検査、30日以内に期限が来るもの、7日以内の段階確認、遅れている作業、その月の延べ人数と搬出の件数が数字で並びます。その下に、期限が近い資格・検査の一覧、段階確認・立会いの予定、工程の遅れ、日ごとの出面と種類別の搬出量が続きます。

画面の「基準日」は、期限や予定を数えるときの「今日」です。見本は架空の日付で入っているので、「今日にする」で実際の日付に切り替えられます。

この画面は、期限管理・段階確認・工程表・日報・搬出記録の各アプリに入力した記録を集めて表示します。手順2の「1か所に集める」と手順3の「今日から数えて並べる」を、画面の側が受け持つ形です。書類ごとのアプリは建設現場アプリの一覧で見られます。画面の項目の詳しい見方はダッシュボードの紹介記事に書きました。

ログインしないで使う間は、入力したデータはその端末のブラウザの中にだけ保存されます。まずは見本のまま触って、使い方が合うかを確かめてから、自社の期限や予定を入れてみてください。

これらのアプリは という、日本語で指示すると画面や仕組みを組み立ててくれるAIの道具で作りました。自社の様式に合わせた画面を社員が自分で作れるようになる建設業向けの Claude Code 研修も行っています。

次に広げるときの順番

期限と予定を1画面で見る習慣ができたら、日々の記録に広げます。順番の目安です。

順番広げる書類広げると変わること
1資格・検査の期限、段階確認の予定見落としが減る
2工程表遅れが朝のうちに事務所にも見える
3日報(出面)月末の人数の集計がいらなくなる
4搬出記録種類別の量が、記録した時点でまとまる
5写真台帳・施工計画書など提出書類づくりの手間が減る

1つ広げるたびに、誰が入力し、誰がいつ見るかを決め直します。紙と並行する期間は1か月などと短く区切っておくと、元の紙に戻りにくくなります。

書類の形は会社ごとに違う

ここまでの手順は、どの会社にも当てはまる考え方です。ただ実際の書類の形は会社ごとに違います。発注者や元請から指定された様式、社内で長く使ってきた項目の並び、現場ごとの呼び方があります。

市販のソフトがうまく合わないときは、社員が自分で書類をアプリにする道もあります。どんなアプリをどう作ったかは建設現場の業務アプリを Claude Code で作りましたにまとめています。

どの期限を見落とすと困るか、どの予定を朝のうちに知りたいかは、現場の人がいちばんよく知っています。その人が自分でアプリを作れれば、現場に合わないという理由で紙に戻ることが減ります。

まとめ

  • 建設DXは、道具を入れること以上に、情報の置き場所と見方を変えること
  • 国土交通省の i-Construction 2.0 は、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割(生産性1.5倍)めざしている
  • 中小の会社は、見落とすと困るのに散らばっている期限と予定から始める
  • 書き出す、1か所に集める、今日から数えて並べる、毎朝見る人と時間を決める、の4つの手順で進める
  • 習慣ができたら、工程表、日報、搬出記録へと1つずつ広げる

現場の書類を社員が自分でアプリにする方法は、建設業向けの Claude Code 研修で身につけられます。