重機を何台も持つ建設会社では、「バックホウの年次検査はいつだったか」「月例の点検表が1か月抜けていた」ということが起こりがちです。この記事は、機械管理や安全の担当者に向けて、特定自主検査の決まりを条文で確かめ、期限切れを防ぐ一覧の作り方までをまとめたものです。

数字や決まりは、e-Gov法令検索で公開されている労働安全衛生法、施行令、労働安全衛生規則の条文で確かめたものだけです。条文で確かめられなかったことは書いていません。

先に結論:年1回、有資格者が行い、標章をはり、記録を3年

特定自主検査は、車両系建設機械・フォークリフト・高所作業車の年1回の定期自主検査と、不整地運搬車の2年に1回の定期自主検査です。

決まり中身
周期車両系建設機械・フォークリフト・高所作業車は1年以内ごと。不整地運搬車は2年を超えない期間ごと
検査する人厚生労働大臣が定める研修を修了した有資格者か、登録を受けた検査業者
検査のあと検査した年月が分かる検査標章を、機械の見やすい箇所にはる
記録6つの項目を記録し、3年間保存する
月1回の検査特定自主検査ではない。ただし実施は必要で、記録の3年保存も同じ

台数が増えると、前回の実施日と次の期限を頭で覚えておくのは無理があります。exbk.jp の資格・検査の期限管理アプリは、重機の検査と作業員の資格の期限を1つの一覧にまとめられます。無料で、登録なしで使えます。

特定自主検査の根拠は労働安全衛生法第45条

第45条第1項は、事業者は政令で定める機械について、定期に自主検査を行い、その結果を記録しておかなければならない、と決めています。これが定期自主検査です。「自主」は、国の検査官ではなく事業者自身が行う、という意味です。

第2項は、そのうち厚生労働省令で定める自主検査を特定自主検査と呼び、次のどちらかが行うことを求めています。

検査をする人条文での書き方(要旨)
自社の有資格者事業者(法人なら代表者か役員)、または使用する労働者で、省令で定める資格を持つ人
検査業者登録を受け、他人の求めに応じて特定自主検査を行う者

第3項では、特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準に従って行う、とされています。定期自主検査のうち、決められた資格の人が、決められた基準で行う検査が特定自主検査だ、と覚えておけば足ります。

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対象になる機械

施行令第15条第2項の5種類

対象は施行令第15条第2項に書かれています。条文は番号の引用になっているので、たどった結果を表にします。

機械施行令の根拠建設現場での例
フォークリフト第13条第3項第8号資材置き場の荷役
別表第七の建設機械で、動力を用い、不特定の場所に自走できるもの(車両系建設機械)第13条第3項第9号バックホウ、ブルドーザー、くい打機、ローラーなど
不整地運搬車第13条第3項第33号クローラ式の運搬車
作業床の高さが2メートル以上の高所作業車第13条第3項第34号内装・設備工事の高所作業
動力により駆動されるプレス機械第15条第1項第2号工場の加工設備

車両系建設機械の6つの区分

建設会社で台数が多いのは車両系建設機械です。施行令の別表第七は6つに分かれています。

別表第七の区分載っている機械(条文の表記)
一 整地・運搬・積込み用機械ブル・ドーザー、モーター・グレーダー、トラクター・シヨベル、ずり積機、スクレーパー、スクレープ・ドーザー など
二 掘削用機械パワー・シヨベル、ドラグ・シヨベル、ドラグライン、クラムシエル、バケツト掘削機、トレンチヤー など
三 基礎工事用機械くい打機、くい抜機、アース・ドリル、リバース・サーキユレーシヨン・ドリル、せん孔機、アース・オーガー、ペーパー・ドレーン・マシン など
四 締固め用機械ローラー など
五 コンクリート打設用機械コンクリートポンプ車 など
六 解体用機械ブレーカ など

現場で「バックホウ」「ユンボ」と呼ぶ機械は、条文では二の「ドラグ・シヨベル」にあたります。各区分の最後には「類するものとして厚生労働省令で定める機械」も入っているので、手持ちの機械で迷ったら、条文か検査業者に確かめてください。

移動式クレーンは別の省令

移動式クレーンも定期自主検査は必要です。ただ根拠はクレーン等安全規則という別の省令で、特定自主検査の条文(施行令第15条第2項)には入っていません。この記事では移動式クレーンの周期は書いていません。

年次・月次・始業前の3つの関係

車両系建設機械の場合

労働安全衛生規則の条文を並べます。

検査周期条文特定自主検査か
年次の定期自主検査一年以内ごとに一回第167条はい(第169条の2第1項)
月次の定期自主検査一月以内ごとに一回第168条いいえ
作業開始前の点検その日の作業を始める前第170条いいえ

年次の検査が、そのまま特定自主検査です。月次の検査と始業前の点検は自社の担当者が行えますが、省いてよいわけではありません。

年次の検査で見る項目は、第167条で9つに分けて書かれています。原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、ブレーキ、作業装置(ブレード、ブーム、バケットなど)、油圧装置、電気系統、車体まわり(ヘッドガード、警報装置、灯火装置、計器など)です。

月次は第168条で、ブレーキ・クラッチ・操作装置・作業装置、ワイヤロープとチェーンの損傷、バケットやジッパーの損傷などが挙がっています。始業前は第170条で、ブレーキとクラッチの機能を見ます。どれでも、異常を見つけたらただちに補修などの措置をとります(第171条)。

機械ごとの周期

ほかの対象機械も、年次(特定自主検査)と月次の2本立てです。

機械特定自主検査にあたる検査の周期月次の検査記録の保存
車両系建設機械一年以内ごとに一回(第167条)一月以内ごとに一回(第168条)3年間(第169条)
フォークリフト一年を超えない期間ごとに一回(第151条の21)一月を超えない期間ごとに一回(第151条の22)3年間(第151条の23)
不整地運搬車二年を超えない期間ごとに一回(第151条の53)一月を超えない期間ごとに一回(第151条の54)3年間(第151条の55)
高所作業車一年以内ごとに一回(第194条の23)一月以内ごとに一回(第194条の24)3年間(第194条の25)

気をつけたいのは不整地運搬車です。ほかが1年なのに、特定自主検査は「2年を超えない期間ごと」です。一覧で全部を1年にそろえてしまうと、ここだけずれます。月次はどの機械も1か月です。

しばらく使わない機械

車両系建設機械を1年を超えて使わないときは、その間の年次検査はいりません。ただし使い始めるときに、同じ項目の検査が要ります(第167条第2項)。月次も同じで、1か月を超えて使わない期間は不要、再開のときに検査します(第168条第2項)。

忘れやすいのは、倉庫に置いたままの機械を現場に出すときです。期限の一覧で「休止中」と分けて書いておくと、再開時の検査が抜けにくくなります。

車検を受けた部分

道路運送車両法の点検を受けた、公道を走る機械については、その点検を行った部分は年次の自主検査を行わなくてよい、という規定もあります(車両系建設機械は第169条の2第6項)。どの部分が重なるかは機械によるので、検査業者に確かめてから記録に残してください。

検査する人の資格

資格の中身はフォークリフトの条文(第151条の24第2項)に書かれ、車両系建設機械・不整地運搬車・高所作業車はそれを読み替えて使う形です。

前提は、厚生労働大臣が定める研修を修了していることです。そのうえで、次のどれかの経験が要ります。

学歴など点検・整備の業務の経験設計・工作の業務の経験
大学・高等専門学校で工学系の学科を卒業2年以上5年以上
高等学校・中等教育学校で工学系の学科を卒業4年以上7年以上
学歴を問わない7年以上10年以上

このほか、その機械の運転の業務に10年以上の経験がある人も、研修を修了すれば対象です(第1号ニ)。「その他厚生労働大臣が定める者」という枠もあります(第2号)。

経験は機械の種類ごとに数えます。車両系建設機械は別表第七の区分で読み替えが分かれていて、整地・運搬・積込み用、掘削用、解体用(一・二・六号)でひとまとまり、基礎工事用(三号)、締固め用(四号)、コンクリート打設用(五号)はそれぞれ別です(第169条の2第2項〜第5項)。バックホウの検査ができる人が、くい打機の検査もできるとは限りません。

社内に条件を満たす人がいなければ、登録を受けた検査業者に頼みます。その場合、記録の「検査を実施した者の氏名」の欄は「検査業者の名称」に置き換わります(第169条の2第7項)。

検査標章をはる

特定自主検査を行ったら、機械の見やすい箇所に検査標章をはります。条文は「特定自主検査を行つた年月を明らかにすることができる検査標章をはり付けなければならない」としています(車両系建設機械は第169条の2第8項。フォークリフト、不整地運搬車、高所作業車も同じ書き方です)。

標章は、この機械がいつ検査を受けたかを現場でひと目で確かめるためのものです。元請の現場に機械を持ち込むときに見られることも多いので、はがれかけていないか、最新の年月のものかを、月次の検査のついでに見ておくと安心です。標章の色や様式の細かい決まりは、今回確かめた条文には書かれていなかったので、この記事では触れていません。

記録に書く6項目と3年の保存

年次・月次の自主検査を行ったら、次の6つを記録し、3年間保存します(車両系建設機械は第169条)。

記録の項目書き方の見本
検査年月日2029年9月10日
検査方法目視、作動確認、測定 など
検査箇所ブレーキ、作業装置、油圧装置 など
検査の結果異常なし/油圧ホースににじみあり など
検査を実施した者の氏名(検査業者なら名称)担当者名、または検査業者名
補修などの措置を講じたときは、その内容9月12日 油圧ホース交換

見本の日付や内容は、書き方を示すための架空のものです。

見つけた異常と、それに対して何をしたかを同じ記録に残しておくと、あとで経緯を追えます。記録は3年分を機械ごとにまとめ、紙なら綴じる場所、データなら保存先を決めておきます。データで持つなら、事務所のパソコン1台だけに置かず、別の場所にも写しを置いておく()と、故障しても記録を失わずにすみます。

期限切れを防ぐ一覧の作り方

始める前に決める4つのこと

条文の周期は「一年以内ごとに一回」「一月以内ごとに一回」なので、前回の実施日から次の期限が決まります。一覧を作る前に、次の4つを決めておくと回しやすくなります。

  1. 一覧を1つにする:機械ごと、検査ごと(年次・月次)に1行ずつ、前回の実施日と次の期限を並べる
  2. 周期を機械に合わせる:不整地運搬車だけは年次が2年。休止中の機械は「再開時に検査」と書く
  3. 期限の近い順に見る:月に1回、30日以内に期限が来るものを確かめ、検査業者の予約や社内担当の割り振りをする
  4. 作業員の資格も同じ一覧に入れる:運転に必要な技能講習の修了証や、検査をする人の研修の修了も、同じ場所で確かめられるようにする

アプリで一覧を作る

冒頭で紹介した資格・検査の期限管理は、この4つをそのまま形にしたアプリです。作業員の資格・免許と、重機の定期自主検査の期限を並べ、期限切れと30日以内のものが上に来るように並べ替えられます。

資格・検査の期限管理アプリの画面。見本データとして、架空のバックホウの特定自主検査(年次)と定期自主検査(月次)、移動式クレーンの検査、架空の作業員の資格が並んでいる
資格・検査の期限管理アプリの画面。見本データとして、架空のバックホウの特定自主検査(年次)と定期自主検査(月次)、移動式クレーンの検査、架空の作業員の資格が並んでいる

画面の中のデータはすべて見本です。「車両系建設機械の特定自主検査(年次)」「車両系建設機械の定期自主検査(月次)」などのひな形から行を足すと、前回の実施日と周期から次の期限の目安が出ます。期限切れと30日以内の件数が上に表示され、表計算ソフトで開けるファイルへの書き出しや印刷もできます。アプリの画面の見方は、資格・検査の期限管理アプリの紹介記事で詳しく書いています。

ログインしていない間は、入力した内容はその端末のブラウザの中にだけ保存され、外には送られません。別の端末で使うときや、ブラウザのデータを消す前は、画面下のボタンでバックアップを書き出しておきます。

期限はあくまで目安です。資格や免許の有効期限は、証明書を見て手で入力してください。検査の周期も、この記事の表や条文と照らし合わせてから使ってください。

自社の決まりに合わせて作る

どの機械をどの周期で見るか、誰に検査を頼むかは、会社ごとに持っている機械や体制で変わります。それを一番よく知っているのは、現場と機械管理の担当者です。

期限管理のアプリは という、日本語で指示すると画面を組み立ててくれるAIの道具で作りました。担当者が自社の点検表や一覧を自分でアプリにできるようになる建設業向けの Claude Code 研修も行っています。建設現場向けに作ったほかのアプリは建設現場アプリの一覧と、建設現場の業務アプリを Claude Code で作りましたにまとめています。

よくある見落とし

見落とし何が起きるか防ぎ方
不整地運搬車も年次1年で一覧に入れる周期がずれる機械ごとに条文の周期を入れる
倉庫から出した機械をそのまま現場へ再開時の検査が抜ける一覧で「休止中」と分けておく
バックホウの有資格者にくい打機も頼む資格の区分が違う場合がある別表第七の区分ごとに検査できる人を確かめる
月次の記録を「異常なし」だけで済ませる補修の経緯が追えない異常と措置を同じ記録に書く
標章が古いまま持ち込み先で検査の年月を確かめられない月次の検査のときに標章も見る

まとめ

  • 特定自主検査は、車両系建設機械・フォークリフト・高所作業車の年1回、不整地運搬車の2年に1回の定期自主検査
  • 検査するのは、研修を修了した有資格者か、登録を受けた検査業者。資格は機械の区分ごとに分かれる
  • 検査後は、検査した年月が分かる検査標章を見やすい箇所にはる
  • 年次も月次も、6項目を記録して3年間保存する
  • 期限は機械ごと・検査ごとに1つの一覧にまとめ、月に1回、30日以内のものを確かめる

機械の台数や検査の頼み方は会社ごとに違います。自社の点検表や期限の一覧を担当者が自分でアプリにする方法は、建設業向けの Claude Code 研修で身につけられます。