工程表は、着工前に一度つくって終わりの書類ではありません。毎週実績を書き込み、遅れが出たら順番を組み替える、現場で動かし続ける道具です。
この記事は、現場代理人や工務の担当者が、バーチャート工程表を自分の手で組み立てられるようになるための手順書です。作業の洗い出し、日数の決め方、並べ方、進み具合の入れ方の順に進み、ネットワーク工程表との違いと、発注者に求められることも整理します。出てくる工事名や数字は、書き方を示すための見本です。
先に結論:バーチャート工程表は4つの手順でできる
バーチャート工程表は、作業名を縦に並べ、横軸の日付の上に、その作業の期間ぶんの棒を引いた工程表です。手順にすると4つです。
| 手順 | やること | 決めるもの |
|---|---|---|
| 1 | 工種ごとに作業を洗い出し、施工の順番を決める | 作業名の一覧と前後関係 |
| 2 | 数量と1日あたりの出来高から作業日数を出す | 各作業の日数 |
| 3 | 工期に収まるよう順番を調整し、棒を引く | 開始日と終了日 |
| 4 | 毎週、実績の進み具合を書き込む | 遅れの有無と打ち手 |
農林水産省の土地改良工事共通仕様書の手引きでは、工程計画をつくる一般的な手順として、工種分類に基づいて施工手順を決める、工種別に適切な施工期間を決める、工期内に完了するよう相互調整する、労務や資材や機械の必要量を均す、各種工程表を作成する、という5段階が示されています。上の4つは、この流れを現場の作業に置き換えたものです。
手を動かしながら読みたい方は、exbk.jp の工程表のアプリを開いてみてください。作業名と開始日と終了日と進み具合を入れると棒を描き、遅れている作業を色で知らせます。見本の工事が最初から入っているので、書き換えながら試せます。無料で、登録なしで使えます。
こうした書類ごとの道具を、外注せずに自社の担当者が作れるようにする建設業向けの Claude Code 研修もあります。作業日報や工事写真台帳と同じで、工程表も自社のやり方に合った形でないと結局使われません。
バーチャートとネットワーク、どちらで作るか
工程管理の手法は1種類ではありません。農林水産省の手引きでは、横線式(バーチャート)、座標式(斜線式)、曲線式(バナナ曲線)、ネットワーク式の4つが挙げられ、それぞれの長所と短所が表で整理されています。よく使う2つを抜き出すと、こうなります。
| 長所 | 短所 | |
|---|---|---|
| 横線式(バーチャート) | 作業が容易、進捗状況が直視的にわかる、修正が容易 | 作業の相互関係が不明確、部分的な変更が全体に及ぼす影響がわかりにくい、あいまいな要素が入りやすい、概略日程の域を出ない |
| ネットワーク式 | 各作業間の相互関係が明確、部分的な変更が全体に及ぼす影響を数量的に把握できる、複雑な工事の総合管理に適する、重点管理ができる | 作成に手間がかかる、手法を理解するのに時間がかかる、組立がむずかしい、修正が比較的むずかしい |
読み替えると、バーチャートは「誰が見てもわかるが、1つの作業が遅れたときに工期がどれだけ延びるかは読み取れない」。ネットワークはその逆です。
ここで出てくるのがクリティカルパスです。手引きには「着工から完成に至るまでの様々な経路のうち、一番時間が長くかかる経路をいう」とあります。この経路の上にある作業が1日遅れれば、工期も1日延びます。逆に、この経路から外れた作業には余裕(フロート)があり、多少ずれても全体には響きません。
バーチャートだけでは、どの作業がその経路に乗っているかが見えません。だから小規模で工種が少ない工事はバーチャートで足り、工種が輻輳する工事では両方を持つ、という使い分けになります。国土交通省は直轄工事の取組として、受注者が現場着手前に設計図書を踏まえた工事工程表(クリティカルパスを含む)を作り、監督職員と共有する、という進め方を示しています。発注者と共有する工程表を求められる工事では、ネットワークで前後関係を押さえたうえで、日々の管理はバーチャートで回す、という組み方が現実的です。
手順1:作業を洗い出して、順番を決める
最初の作業が、いちばん出来を左右します。細かすぎても粗すぎても使えません。
粒度は「担当と資源が変わるところ」で切る
洗い出しの単位は、工種分類に基づく工事項目です。目安は、担当する業者が変わる、使う重機が変わる、材料の手配が変わる、このいずれかが起きるところで1本の作業にすることです。同じ業者が同じ機械で続けてやることを2本に割っても、管理の手間が増えるだけです。
見本として、町道の道路改良工事を6本に分けた例を示します。
準備工・測量/舗装撤去/L型側溝工/ブロック積擁壁工/舗装工/区画線・片付け
10本を超えると1枚に収まらなくなります。その場合は、全体工程表とは別に、重要な部分だけを取り出した部分工程表を作る方法があります。農林水産省の手引きでも、全体工程表のほかに部分工程表を作り重点管理をすることが、全体をスムーズに進める上で必要だとされています。
前後関係を言葉で書き出す
棒を引く前に、「Aが終わらないとBが始められない」という関係を、作業の一覧の横にメモしておきます。擁壁の背面を埋め戻さないと舗装に入れない、といった当たり前のことでも、書いておくと後で順番を組み替えるときに判断が早くなります。
手順2:日数の決め方
日数は、勘ではなく割り算で出します。基本の式はこれだけです。
数量 ÷ 1日あたりの出来高 = 作業日数(これに、稼働できない日の補正をかける)
東北地方整備局の工程計画管理基準(案)では、時間見積の様式として、数量、1日当たり仕事量、作業日数、稼働率による補正日数、稼働見積日数、という欄が並んでいます。同じ基準には、気象条件等による稼働率は明確にする、とも書かれています。
見本で計算してみます。土砂床掘100㎡、1日あたり14㎡なら、100 ÷ 14 = 7.1日。ここに天候で動けない日の割増をかけて日数を決めます。数字はすべて見本です。
| 欄 | 見本の記入 |
|---|---|
| 作業 | 土砂床掘 |
| 数量 | 100㎡ |
| 1日あたり仕事量 | 14㎡ |
| 作業日数 | 7.1日 |
| 稼働率による補正 | 冬期・降雨を見込んで割増 |
| 見積日数 | 切り上げて日で決める |
この計算の跡を残しておくと、後で工期の延長を協議するときに説明ができます。「なんとなく2週間」で組んだ工程表は、遅れた理由も説明できません。
手順3:工期に収まるよう並べる
日数が出たら、前後関係にしたがって並べ、工期の終わりに収まるかを見ます。はみ出したときにやることは2つです。
前後関係を変えられる作業を、同時に進む形に並べ替える。もうひとつは、人や機械を増やして日数を縮める。ただし、どちらも無制限にはできません。農林水産省の手引きは、全工期を通じて労務、資材、機械の必要性を均し、過度の集中や待ち時間が発生しないように工程を調整する、としています。3社が同じ週に集中する形に並べ替えて紙の上では収まっても、実際には入れません。
並べ終えたら、次の3つを確かめます。
- 同じ業者の作業が同じ期間に重なっていないか
- 月をまたぐ作業の途中に、検査や段階確認の日が入っていないか
- 年末年始や盆休み、その地域で動けない期間が棒の中に埋もれていないか
段階確認や検査の日取りの押さえ方は、建設DXの始め方でも触れています。
手順4:進み具合を書き込み、遅れを見つける
ここから先が工程管理の本番です。農林水産省の手引きは、工程表に基づいて工事を実施し、毎日、毎週、毎月定期的に工事進捗の実績を工程表に記入し、予定工程と実施工程とを比較の上、絶えずチェックする、という進め方を示しています。
見つけ方は色です。東北地方整備局の基準では、各月末ごとに完了したアクティビティを色鉛筆で着色して消し、各月で色を変えると定められています。紙で回すなら、いまでも十分に通用するやり方です。
問題は、どこからを「遅れ」と呼ぶかです。ひとつの目安が、農林水産省の手引きにある「計画に対し±10%程度」という表現です。計画と実績の間にこの程度の差が出た場合には、計画あるいは実施体制等に問題があることとなるため、計画を見直し、必要な処置をとる必要がある、と書かれています。

exbk.jp の工程表のアプリも、この考え方で作りました。経過日数から見た予定の進み具合より10ポイントを超えて遅れている作業に「予定より遅れ」と表示します。作業ごとに完了・施工中・未着手の状態が出て、CSVで書き出せて、A4横向きで印刷できます。画面上の工事名や工種は見本のデータなので、そのまま書き換えて試せます。ほかの現場アプリは建設業の現場アプリ一覧にまとめています。
「予定より遅れ」は、日付と進み具合の数字だけを見て出している目安です。材料待ちで止まっているのか、単に入力が追いついていないのかまでは判断できません。表示が出たら、担当者に確認してください。
発注者と共有するときに求められること
公共工事では、工程表は社内の道具ではなく、発注者とやりとりする書類になります。国土交通省の資料では、直轄工事の取組として次の流れが示されています。
- 受注者が、設計図書を踏まえた工事工程表(クリティカルパスを含む)を作成し、監督職員と共有する
- 工事工程に影響する事項は、その内容と対応者(発注者か受注者か)を明確にする
- 施工中にクリティカルパスに変更が生じた場合は受発注者間で共有し、受注者の責によらない工程の遅れが生じた場合は、適切に工期変更を実施する
受注者の責によらない場合として、受発注者間で協議した工事工程の条件に変更が生じた場合、著しい悪天候により作業不稼働日が多く発生した場合、工事中止により全体工程に影響が生じた場合などが挙げられています。
ここで効いてくるのが、手順2で残した日数の根拠と、手順4で毎週書き込んだ実績です。どちらも無ければ、遅れの理由を後から組み立てることになります。工事ごとの取り決めは契約書と特記仕様書が優先しますので、実際の運用は発注者の指示を確かめてください。
よくある失敗
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 作業を細かく割りすぎる | 更新が追いつかず、数週間で放置される | 担当と資源が変わるところで切る |
| 着工前に作って以降さわらない | 実績が入っていないので遅れに気づけない | 週1回、決まった曜日に実績を入れる |
| 日数の根拠を残していない | 工期の協議で説明できない | 数量と1日あたり出来高の割り算を残す |
| 休みや天候の停止日を見込まない | 月末で必ず足りなくなる | 稼働率の補正を日数に織り込む |
| 全部の作業を同じ重さで管理する | 本当に効く作業から目が離れる | 工期に効く経路の作業だけ重点管理する |
最後の1行が、バーチャートの弱点そのものです。棒が並ぶと、どれも同じ重さに見えます。どの作業が工期に直結しているかは、ネットワークで確かめるか、少なくとも頭の中で押さえておく必要があります。
AIに工程表の下書きを作らせるとどうなるか
この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本データで下書きを作らせました。渡したのは「町道の道路改良工事、工期は2029年9月1日から12月20日、土工と擁壁と舗装がある」という一文だけです。
返ってきたのは、9本の作業に分けた表でした。冒頭の3行はこうです。
準備工(仮設・現場事務所・測量)2029/9/1〜9/14、14日
土工(掘削・床掘)2029/9/10〜10/10、31日
擁壁工(基礎)2029/10/5〜10/20、16日
擁壁を基礎、躯体、埋戻しの3本に割り、次の作業を数日重ねて始める形になっていて、順番自体は通っていました。ただ、そのままは使えません。日数はすべて暦の日数で、土日も年末年始も止まらない前提です。1日あたりの出来高の根拠はありません。段階確認の日取りもなく、検査は最後の「完成検査」だけでした。現場の条件を何も渡していないので、当然の結果です。
使いどころは、白紙から作業名と分け方の案を出すところまでです。日数と休みの見込みは、自社の実績の数字に差し替える。AIに現場の書類の下書きを任せるときの線引きは、建設業でのAI活用と、施工計画書をAIで作るにも書きました。
この工程表のアプリも で作りました。 のような大きな仕組みを入れる前に、いま紙や表計算ソフトで回している書類を1つずつ軽くするほうが、現場は先に楽になります。建設業向けの Claude Code 研修では、作業日報やKY活動シート、工事写真台帳、出来形管理表といった書類を、日本語で指示してアプリにする進め方を扱っています。対象は、現場監督や工事担当、工務や積算、事務の方です。
まとめ
- バーチャート工程表は、作業の洗い出し、日数の算出、並べ替え、実績の記入の4手順で作る
- 日数は、数量 ÷ 1日あたり出来高に稼働率の補正をかけて出し、計算の跡を残す
- バーチャートは進捗が見やすい一方、作業の相互関係と変更の影響がわかりにくい。工期に効く前後関係はネットワークで押さえる
- 遅れの目安のひとつは、計画に対し±10%程度。差が開いたら計画を見直す
- 公共工事では、クリティカルパスを含む工程表を現場着手前に監督職員と共有し、影響事項の対応者を明確にする取組が示されている
工程表を毎週動かす手間は、書式が現場に合っているかどうかでかなり変わります。自社の様式に合った道具を社員の手で用意できるようにしたい方は、建設業向けの Claude Code 研修をご覧ください。現場で使う11種のアプリを作った流れは、施工管理アプリ11種を無料公開にまとめています。
