AIに任せてよい項目:元の資料があって、型が決まっているもの
工事概要
工事名、工事場所、工期、請負代金額、発注者、工事内容を書く項目です。どれも契約書と設計図書に書いてあります。島根県のガイドは、工事内容は設計図書の工事数量総括表の写しとしてもよいとしています。
AIには、数量総括表の工種・種別・数量を貼り付けて「工事概要の表に並べて」と頼めば足ります。数字は必ず元の書類と突き合わせてください。表を並べ替えるときに、AIが桁や単位を取り違えることがあります。
安全・訓練の活動計画
安全教育と安全訓練を、いつ、何をテーマに行うかの計画です。月ごとの表の形が決まっているので、工期と主な工種を渡せば、AIが月ごとのテーマの案を並べます。
ただし、テーマは現場の危険に合わせて人が選び直します。法面の掘削がある現場で、AIが一般的な「熱中症予防」だけを並べていたら、それは下書きとして足りていません。
環境対策の定型文
大気汚染、水質汚濁、騒音・振動の対策を書く項目です。特記仕様書で指定された対策があれば、その文を渡して表に整えさせます。
目次と変更の一覧表
目次のページ番号の振り直し、変更施工計画書の「変更回、提出日、変更内容(該当ページ)」の一覧表は、AIに任せて困らない作業です。打合せ簿の文面の下書きにも使えます。
見本:架空の工事でAIに下書きを作らせた結果
この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本データで下書きを作らせた結果を載せます。工事は架空で、実在の工事・会社とは関係ありません。
渡した情報は次のとおりです。
> 見本の工事:【サンプル】町道サンプル線 道路改良工事。工期は9月から翌年2月。主な工種は掘削、側溝設置、路盤、舗装。片側交互通行の規制あり。
> 頼んだこと:「安全・訓練の活動計画」を、月ごとの表で下書きしてください。現場で決めることは空欄にしてください。
AIが返した下書き(抜粋)です。
| 月 | 安全教育のテーマ(案) | 安全訓練(案) | 実施日 | 講師 |
|---|---|---|---|---|
| 9月 | 新規入場者教育、熱中症予防、片側交互通行の誘導方法 | 熱中症発生時の連絡と応急の手順 | 空欄 | 空欄 |
| 10月 | 掘削時の法面の崩壊防止、重機との接触防止 | 重機の合図の確認 | 空欄 | 空欄 |
| 11月 | 側溝据付け時の吊り荷の下への立入禁止 | 吊り荷の合図と退避 | 空欄 | 空欄 |
| 12月 | 日没が早い時期の照明と保安施設の点検 | 夜間の規制帯の点検手順 | 空欄 | 空欄 |
| 1月 | 路面の凍結と転倒防止 | 凍結時の作業中止の判断の流れ | 空欄 | 空欄 |
| 2月 | 舗装時の高温の合材による火傷防止、交通開放前の点検 | 交通開放の手順の確認 | 空欄 | 空欄 |
月と工種の組み合わせは、下書きとしては悪くありません。実施日と講師を空欄で返したのも、頼んだとおりです。
一方で、そのまま出せない点もあります。
- 9月から工種が順に進む前提で並べていますが、実際の工程表とは合わせていません。
工程表の実際の工種の時期に合わせて、人が月を入れ替えます
- 「凍結時の作業中止の判断の流れ」は、誰が何を見て中止を決めるかが会社によって違います。AIはそこを書けません
- 表に出てくる危険は一般的なものです。この現場に特有の危険(近くの通学路、埋設物など)は、現場を見た人が足します
AIの下書きは、白紙から考えるより早く形になります。ただ、現場の事情を入れる手間は残ります。表のどの行にも、人が手を入れる箇所がありました。
人が必ず書く項目:現場を見ないと書けないもの
施工方法(仮設備計画を含む)
島根県のガイドでは、主要工種ごとの作業の流れ、使用機械、仮設備の構造と配置、材料の保管方法、運搬路、仮排水などを書くとしています。どれも、その現場の地形と周りの状況で決まります。
AIに書かせると、一般的な手順がそれらしく並びます。困るのは、現場と合わないのに読み流せてしまうことです。AIが事実と違う内容をもっともらしく書く現象は
と呼ばれ、施工方法のように正解が現場ごとに違う項目では、起きても気づきにくくなります。島根県のガイドも、施工計画書の内容と現場や管理手法が一致していないケースが見られると書いています。
現場組織表と緊急時の体制
現場組織表には、組織の編成、指揮命令系統、業務分担を書きます。島根県のガイドでは、現場代理人の夜間・休日の緊急連絡先も書くように示しています。
緊急時の体制には、事故発生時の連絡系統図や災害時の体制を書きます。同じガイドには、事故が起きたとき、警察署や労働基準監督署から施工計画書の妥当性を確かめられることがあるとも書かれています。連絡先の番号や順番をAIに作らせる理由はありません。
交通管理と段階確認
交通管理は、規制の方法、時間、保安施設の配置を、道路管理者や警察との協議の結果に合わせて書きます。協議の前にAIが書いた規制図は、ただの想像です。
段階確認の時期も、監督職員との打合せと工程で決まります。予定の管理には
段階確認・立会い予定のアプリが使えます。
AIに頼む前に、会社で決めておくこと
1.
社外のサービスに入れてよい情報:発注者名、工事場所、請負代金額、人の名前と連絡先を入れるかどうか。入れないなら、見本の名前で下書きを作り、あとで人が差し替える
2.
元にする共通仕様書:発注者ごとの版と項目を、社内で1つのフォルダにまとめておく
3.
最後に読む人:AIの下書きを、現場代理人か工務の誰が読んでから出すか
3つ目が決まっていないと、AIの文を誰も読まないまま提出日が来ます。
よくある失敗
-
AIの目次をそのまま使う:発注者によって16項目のことも19項目のこともあります。その工事の仕様書の順に合わせます
-
前の工事の施工計画書を渡して「今回用に直して」と頼む:工事名や数量は直っても、仮設備や規制の書き方が前の現場のまま残りやすくなります
-
数字を突き合わせない:請負代金額や数量を、AIの表から契約書へ戻って確かめないまま出してしまう
-
下書きのまま担当が決まらない:項目ごとに誰が現場の事情を足すかを決めておかないと、AIの一般論が残ります
誰がどの項目を仕上げたかを、画面で追う
AIに下書きを作らせると、項目ごとに「AIの下書きのまま」「人が直した」「記載済み」と進み具合がばらつきます。ここを口頭で確かめ合うと、提出の直前に抜けが見つかります。
施工計画書チェックの画面。見本データの架空工事「【サンプル】町道サンプル線 道路改良工事」で、19の記載事項のうち13が終わった状態。項目ごとに状態、担当、メモが並ぶ
画面は見本データの架空工事です。exbk.jp の
施工計画書チェック(無料・登録なしで使える)では、項目ごとに状態を「未着手」「作成中」「記載済み」などから選び、担当とメモを残せます。AIで下書きした項目は「作成中」にして、メモに「AI下書き、現場の危険を足す」と書いておくと、誰が何をすればよいかが画面に残ります。終わっていない項目だけを表示する絞り込みもあります。
ほかの書類でAIをどう使ったかは、
建設業のAI活用の記事にまとめています。現場の11の書類仕事を、下書きをそのまま使えたもの、候補として使えたもの、判断を人に残したものに分けました。
このアプリは
で作っています。発注者ごとに記載事項が変わる施工計画書は、既製の道具に合わせるより、自社で項目を直せるほうが扱いやすい書類です。現場監督や工務の担当者が、自分の書類をアプリにする方法を学ぶ
建設業向けの研修があります。全10時間(2時間×5回)のオンラインのライブ研修で、講師とつないで実際に作りながら進めます。
まとめ
- 施工計画書は、受注者が守って施工する約束の書類。AIに任せるのは下書きまで
- 工事概要、安全・訓練の活動計画、環境対策の定型文、目次と変更の一覧表は、元の資料を渡せばAIが下書きできる
- 施工方法、現場組織表と緊急時の体制、交通管理、段階確認の時期は、現場を見た人が書く
- 記載事項の数は発注者で違う(関東地方整備局の共通仕様書は16、島根県のガイドの表は19)。AIには、その工事の仕様書の項目を渡す
- AIで下書きした項目は、担当と状態を付けて、人が仕上げるまで追う
施工計画書のチェックや、自社の書式に合わせた書類の仕組みを、社員が自分で作れるようになりたいときは、
建設業向けの Claude Code 研修の内容をご覧ください。