看護師長や勤務表の担当者が、月の勤務表を作るときにいちばん手間がかかるのは、並べる作業そのものではありません。並べ終わったあとに「夜勤の時間は足りているか」「連続勤務が長すぎる人はいないか」「この日の遅出は足りているか」を数え直すところです。
この記事では、勤務表を作る手順を先に示し、そのあとで夜勤回数と夜勤時間の数え方、連続勤務と日ごとの人数の見直し方をまとめます。数え方の根拠は、厚生労働省の通知と労働基準法の条文を実際に開いて確かめた範囲だけを書きました。出てくる病棟名や職員名はすべて見本で、実在の病院の話ではありません。
先に結論:勤務表で確かめるのはこの4つ
手順を細かく見る前に、出来上がった勤務表で何を見るかを先に出します。
| 確かめること | 見る単位 | 目安・根拠 |
|---|---|---|
| 夜勤の回数 | 職員ごと | 特定の人に偏っていないか。院内の取り決めと比べる |
| 夜勤の時間 | 病棟全体の平均 | 入院基本料の施設基準(月平均夜勤時間数72時間以下)。自院の届出区分で対象者が変わる |
| 連続勤務の日数 | 職員ごと | 労働基準法第35条の休日の与え方と、院内の取り決め |
| 日ごとの人数 | 日付ごと・勤務帯ごと | 夜勤の看護要員は常時2人以上(療養病棟などの例外あり) |
この4つは、どれも「並べ終わってから数える」種類の確認です。紙や表計算ソフトで手で数えると、勤務記号を1つ動かすたびに全部やり直しになります。exbk.jp の看護師の勤務表(無料・登録なしで使える)は、勤務記号を入れるたびに職員ごとの勤務日数・夜勤回数・夜勤時間・最長の連続勤務日数と、日ごとの勤務帯別の人数を数え直します。数える作業だけを機械に預けて、判断は人が行う、という分け方です。
こうした病棟の書類仕事を、外注せずに看護部の中で作れるようにするClaude Code 研修も行っています。対象は看護師・准看護師・看護補助者・医療事務など、看護記録や報告書、勤務表、物品管理にかかわる方です。
勤務表を作る手順
1. 勤務記号と勤務時間を先に決める
日、準、深、休、有、といった記号は病棟ごとに違います。先に、記号ごとの始業・終業時刻と、それが夜勤時間帯にあたるかどうかを表にしておきます。ここがあいまいなまま並べ始めると、あとで夜勤時間を数えるときに一つずつ調べ直すことになります。
2. 夜勤時間帯を決める
厚生労働省の通知では、夜勤を「各保険医療機関が定める午後10時から翌日の午前5時までの時間を含めた連続する16時間(以下「夜勤時間帯」という。)の間において、現に勤務すること」とし、その時間帯に実際に勤務した時間数を夜勤時間数と呼ぶと示しています。時間帯そのものは病院で決められますが、同じ通知に「夜勤時間帯以外の時間帯(以下「日勤帯」という。)が、夜勤時間帯と重なる時間が、当該日勤帯の2分の1以下とすること」という条件も書かれています。
3. 希望休と動かせない予定を先に置く
研修、委員会、健康診断のような日付が決まっている予定と、希望休を先に入れます。ここで埋まった枠は、以降の工程では動かしません。
4. 夜勤から埋める
夜勤は人数の制約が強く、組み替えが効きにくいところです。先に夜勤を置き、動かしやすい日勤であとから調整すると、やり直しが減ります。夜勤の翌日の扱い(明けを休みとするか)も、この段階で統一しておきます。
5. 日勤・遅出・早出を埋める
日ごとに必要な人数を満たすように埋めます。この段階で人数が足りない日が出たら、4で置いた夜勤より先に、日勤側で動かせる人を探します。
6. 数えて見直す
最後に、先に挙げた4つを数えます。ここで基準から外れたら、4か5に戻ります。戻る回数を減らしたいなら、5の途中でも一度数えておくほうが早いです。
夜勤の回数と時間の数え方
月平均夜勤時間数は、病棟全体の平均
「夜勤72時間」という言い方は病棟でよく聞きますが、ひとりずつが72時間以下という意味ではありません。厚生労働省の通知には、次のように書かれています。
月平均夜勤時間数は、同一の入院基本料を算定する病棟全体(同一の入院基本料を算定する複数の病棟(看護単位)を持つ病院にあっては、当該複数の病棟を合わせた全体)で届出前1か月又は4週間の夜勤時間帯に従事する看護職員の延夜勤時間数を夜勤時間帯に従事した実人員数で除して得た数とし、当該月当たりの平均夜勤時間数の直近1か月又は直近4週間の実績の平均値により、72 時間以下であること。
同じ箇所に「病棟(看護単位)ごとに月平均夜勤時間数が72時間以下である必要はないものであること」とも明記されています。つまり、割り算は病棟全体でひとつです。ただし療養病棟入院基本料を算定する病棟の看護職員については、この限りではないとも書かれています。
分母と分子に誰を入れるかで結果が変わる
この計算でつまずきやすいのは、割り算そのものではなく、誰を数に入れるかです。通知に書かれている留意点を整理すると、次のようになります。
| 対象 | 実人員数・延べ夜勤時間数への算入 |
|---|---|
| 夜勤専従者(専ら夜勤時間帯に従事する者) | 含まない |
| 急性期一般入院基本料、7対1、10対1の病棟 | 月当たりの夜勤時間数が16時間未満の者は含まない(短時間正職員制度の短時間正職員は12時間以上を含む) |
| 上記以外の病棟 | 月当たりの夜勤時間数が8時間未満の者は含まない |
| 病棟と外来などを兼務する職員 | 当該病棟で勤務した延べ時間を、その職員の月当たりの延べ夜勤時間で割った数を実人員数に算入 |
| 夜勤時間帯の申し送りに要した時間 | 申し送った看護職員の夜勤時間から除いて差し支えない(除くかどうかは原則として病棟全体で月単位に選択) |
ここに挙げた区分は、自院がどの入院基本料を届け出ているかで当てはまるものが変わります。実際の数え方は、自院の届出内容と施設基準で確かめてください。届出の区分が分からないまま数えると、分母に入れるべきでない人を入れて平均を低く見せてしまうことがあります。
「回数」と「時間」は別の指標
夜勤回数は、院内の取り決めや本人の負担を見るための数字です。月平均夜勤時間数の計算に出てくるのは時間のほうで、回数ではありません。2交代と3交代が混ざる病棟では、同じ8回でも時間が大きく違います。勤務表では両方を並べて見ておくのが安全です。
なお、通知には「週当たりの所定労働時間は、40 時間以内であること」という条件も、夜勤専従者について「夜勤による勤務負担が過重とならないよう十分配慮すること」という記述もあります。
労働基準法の側から見る休憩・休日・深夜
診療報酬の施設基準とは別に、労働基準法の条文も勤務表の形を決めます。e-Gov法令検索で条文を開いて確かめたものを挙げます。
| 条 | 条文の内容 |
|---|---|
| 第32条 | 休憩時間を除き、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならない |
| 第34条 | 労働時間が6時間を超える場合は少くとも45分、8時間を超える場合は少くとも1時間の休憩を労働時間の途中に与える |
| 第35条 | 毎週少くとも1回の休日。ただし4週間を通じ4日以上の休日を与える場合はこの限りでない |
| 第37条第4項 | 午後10時から午前5時までの間に労働させた場合、通常の労働時間の賃金の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払う |
16時間の夜勤を1回とする2交代では、第34条の「8時間を超える場合は少くとも1時間」の休憩を、勤務表の上でどう確保するかが問題になります。勤務記号を決める段階で、記号ごとの休憩時間も書き添えておくと、あとで説明しやすくなります。
連続勤務の日数については、労働基準法に直接の上限がありません。第35条が求めているのは休日の回数であって、間隔ではないからです。だからこそ、連続勤務の上限は院内で決め、勤務表の上で毎月確かめる必要があります。
連続勤務と日ごとの人数は、並べ終わってから見る
連続勤務は「最長」で見る
職員ごとに、休日をはさまずに続いた勤務日数の最長を出します。平均ではなく最長で見るのは、負担が集中しているのが1人でも組み直しの理由になるからです。夜勤明けを休みとして数えるかどうかは病棟で決まりが分かれるので、勤務記号の表に書いておきます。
日ごとの人数は勤務帯ごとに
日付ごとに、日勤・準夜・深夜それぞれ何人になるかを並べます。通知では夜勤について「看護要員は、常時2人以上であること」「一般病棟、結核病棟及び精神病棟においては、看護職員を2人以上配置していること」とされ、療養病棟では看護職員1人と看護補助者1人の計2人以上の配置でも差し支えないとされています。

exbk.jp の看護師の勤務表では、勤務記号を入れると右端に勤務日数・夜勤回数・夜勤時間・最長の連続勤務日数が並び、記号を1つ書き換えるたびに数え直します。職員ごとに夜勤専従の印を付けられるので、先の表で「含まない」とされた人を分けて見ることもできます。勤務記号は病棟に合わせて編集でき、CSVでの書き出しと印刷にも対応しています。上の画面は、架空の病棟の見本データを入れた状態です。
画面の数字は、入力した勤務記号をそのまま数えた結果です。施設基準を満たしているかどうかの判定はしません。届出区分ごとの対象者の範囲は自院で確かめたうえで、数える手間だけを減らす道具として使ってください。
患者の氏名や病状を入れる場面はありませんが、職員の氏名を入れるときは、院内の個人情報の取り扱いの決まりに沿って使ってください。看護記録や報告書で患者情報をどう扱うかの考え方は、看護サマリーの書き方とSOAPで書く看護記録でも触れています。
よくある失敗
勤務記号の定義が人によって違う。「明け」を休みに数える人と数えない人が同じ病棟にいると、連続勤務日数が合いません。記号の表を1枚作って掲示するのが先です。
夜勤時間帯を決めずに時間を数えている。16時間の枠を決めていないと、どの時間が夜勤時間数に入るのかが人によってずれます。
分母に入れてはいけない人を入れている。夜勤専従者を実人員数に含めると平均が下がります。数字が良すぎると感じたら、まず対象者の範囲を疑ってください。
表計算ソフトの数式が壊れたまま使われている。作った人が異動したあと、行を挿入して集計範囲がずれた表を見かけます。数える仕組みは、誰が見ても中身が分かる形にしておくほうが安全です。
希望休を最後に入れている。夜勤を先に組んでから希望休を差し込むと、置いたばかりの夜勤が動きます。
生成AIに勤務記号の一覧を作らせてみた
この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本データで勤務記号の一覧の下書きを作らせた結果を載せます。実在の病棟の記号ではありません。
| 記号 | 名称 | 時刻(見本) | 夜勤時間帯にかかるか | 休憩(見本) |
|---|---|---|---|---|
| 日 | 日勤 | 8:30〜17:00 | かからない | 60分 |
| 準 | 準夜勤 | 16:30〜翌1:00 | かかる | 60分 |
| 深 | 深夜勤 | 0:30〜9:00 | かかる | 60分 |
| 明 | 夜勤明け | ー | ー | ー |
| 休 | 公休 | ー | ー | ー |
| 有 | 年次有給休暇 | ー | ー | ー |
下書きとしてはこの程度まで出ます。ただし、実際の時刻・休憩・明けの扱いは病棟ごとに違うので、そのまま使える表ではありません。生成AIに任せられるのは枠組みまでで、中身を決めるのは病棟の人です。看護の現場で生成AIをどこまで使うかの線引きは、看護の現場でのAIの使い方にまとめています。
勤務表の書式を、病棟の人が自分で作る
この勤務表のアプリは という、日本語で指示すると動くものを作ってくれる道具で作りました。専門の言葉を覚えなくても、日本語での指示の出し方(の書き方)を身につければ、病棟の人が自分で作れます。
勤務記号の並び、休憩の扱い、連続勤務の数え方は、病棟によって違います。外に頼んで作ってもらうと、決まりが変わるたびに頼み直すことになります。Claude Code 研修は、看護サマリー、インシデントレポート、申し送り、勤務表といった書類のアプリを、職員が自分で作れるようになることを目指した内容です。全10時間(2時間×5回)をZoomのライブで行い、第1回で患者情報の利用ルールを決め、第2回から第4回で各種アプリを作り、第5回で自部署の業務で実践します。人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象になる場合がありますが、支給は労働局の審査によるため保証されるものではありません。計画届の提出期限があるので、日程は早めにご相談ください。
病棟全体の書類仕事の見直しについては病棟のDXをどこから始めるか、インシデントの扱いについてはインシデントレベルの考え方と医療安全研修の進め方も参考にしてください。
まとめ
- 勤務記号と夜勤時間帯を先に決め、夜勤から埋め、最後に数えて見直す。この順だと手戻りが減る
- 月平均夜勤時間数は、同じ入院基本料を算定する病棟全体の延べ夜勤時間数を、夜勤時間帯に従事した実人員数で割って求める。病棟ごとに72時間以下である必要はない
- 分母と分子に誰を入れるかは届出区分で変わる。夜勤専従者は含まない。自院の届出内容と施設基準で必ず確かめる
- 労働基準法が定めるのは休憩と休日の与え方で、連続勤務日数の上限は院内で決める必要がある
- 数える作業は機械に預けられる。判断は人が行う
勤務表の形は病棟の数だけあります。その形に合わせた道具を、病棟の人が自分の手で作れるようにする方法は、Claude Code 研修で扱っています。
