回数と中身は通知で決まっている:年2回程度と、3つの記録項目
条文に回数はありません。回数と記録の中身を示しているのは、厚生労働省医政局長の通知「病院等における医療の安全を確保するための措置について」(令和8年3月31日 医政発0331第72号)です。この通知は、平成19年から使われてきた通知(平成19年3月30日 医政発0330010号)の内容を、令和8年の省令改正を踏まえて示し直したものです。
通知の文言
研修について、通知は次のように書いています(要所の抜き出し)。
> 当該病院等の具体的な事例等を取り上げ、職種横断的に行うものであることが望ましい
> 年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること
> 研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること
読み取れることを整理します。
| 通知の言葉 | 現場での意味 |
|---|---|
| 具体的な事例等を取り上げ | 一般論の講義だけでなく、自院で起きた事例を扱うのが望ましい |
| 職種横断的に | 看護師だけでなく、医師、薬剤師、事務なども一緒に |
| 年2回程度定期的に | 年2回を目安に、あらかじめ時期を決めて開く |
| 必要に応じて開催 | 重大な事例のあとなど、年2回とは別に開くことがある |
| 開催又は受講日時、出席者、研修項目 | 記録の最低限の3項目 |
「望ましい」と「こと」で書き分けられている点にも注意してください。事例を扱うことや職種横断は「望ましい」、年2回程度の開催と記録は「こと」です。
自院の事例を研修で扱うとき
自院の事例を取り上げるなら、インシデントの報告を月別・種類別・影響度別に集計しておくと、どの事例を題材にするか選びやすくなります。影響度の区分と集計のしかたは
インシデントの影響度レベルとはに、転倒・転落の事例を扱う場合のアセスメントの見直しは
転倒転落アセスメントシートの使い方にまとめました。
病院・有床診療所・無床診療所で何が違うか
通知には、入院施設のない診療所向けの但し書きがあります。
> 患者を入所させるための施設を有しない診療所及び妊産婦等を入所させるための施設を有しない助産所については、当該病院等以外での研修を受講することでも代用できるものとし、年2回程度の受講のほか、必要に応じて受講することとすること
確かめた範囲で表にすると、次のとおりです。
| 区分 | 研修の義務 | 院外研修での代用 | 医療安全管理委員会 | 医療安全管理者 |
|---|---|---|---|---|
| 病院 | あり(年2回程度) | 通知に代用の記載なし | 設置する | 配置する |
| 入院施設のある診療所 | あり(年2回程度) | 通知に代用の記載なし | 設置する | 配置する |
| 入院施設のない診療所 | あり | 院外の研修の受講で代用できる(年2回程度の受講) | 条文の対象外 | 条文の対象外 |
無床の診療所で院外研修を使う場合、記録するのは「受講日時」です。誰が、いつ、どの研修を受けたかを、受講証や資料とあわせて残しておきます。
また通知には、事故報告の方策について、従業者が管理者1名しかいない場合は委員会の開催や管理者への報告などを実施しなくても差し支えない、という記載があります。研修についての同じような例外は、確かめた範囲では見当たりませんでした。
特定機能病院には、ほかにも上乗せの決まりがあります。この記事では扱っていないので、該当する病院は条文と通知の該当箇所を確かめてください。
院内感染対策の研修も年2回程度:医療安全の研修とは別の項目
院内感染対策の研修は、第1条の11第2項第1号ハの「従業者に対する院内感染対策のための研修の実施」です。医療安全の職員研修(第1項第3号)とは別の項目として並んでいます。
厚生労働省の「院内感染法令」の資料では、平成19年の通知の内容として、次のように整理されています。
- 当該病院等に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われること
- 病院全体に共通する院内感染に関する内容について年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること
- 研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること
回数も記録の項目も、医療安全の研修と同じです。条文には、ほかにも医薬品の安全使用のための研修(第2項第2号イ)と、医療機器の安全使用のための研修(第2項第3号イ)が並んでいます。この2つの回数は今回の資料では確かめていないので、ここでは書きません。
医療安全と感染対策を同じ日に続けて開く場合も、記録は研修ごとに分けて残すのが無難です。1枚の出席簿に両方を書くと、「感染対策の研修の出席者は誰か」と聞かれたときに答えにくくなります。
未受講者を出さない記録の残し方
年2回開いても、夜勤や休み、途中入職で受けられない人は必ず出ます。未受講者を出さないために、記録の側でできることは3つです。
1. 名簿を先に作る
出席者を書く前に、その年度の職員名簿を作っておきます。出席簿に名前を書いてもらう方式だと、「来なかった人」は記録に残りません。名簿があって初めて、名簿から出席者を引き算して未受講者が出せます。
2. 研修ごとに「全員受講か」を決める
医療安全や感染対策の定例の研修は全員受講、新人向けの研修や部署限定の研修は対象者のみ、というように、研修ごとに対象を決めておきます。全員受講の研修だけを未受講の確認の対象にすれば、「受けなくてよい人」が未受講者の一覧に混ざりません。
3. 欠席者の受け方を記録に書く
欠席者を後日どう受けさせるかは、院内で決めることです。動画の視聴や
(パソコンやスマートフォンで受ける教材)、資料を読んで確認テストに答える方法などがあります。どの方法を受講と認めるかを決め、受けた日を記録に書き足します。部署内で先輩が教える
(仕事をしながらの指導)で済ませた場合も、日付と内容を同じように残しておきます。
記録の項目は、通知の3項目に、あとで説明しやすくなる項目を足した形がおすすめです。
| 項目 | 記入の見本(架空) | 通知の3項目か |
|---|---|---|
| 実施日・時刻 | 2029年9月14日 17:30〜18:15 | ○(開催日時) |
| 分類 | 医療安全/感染対策 など | |
| 研修名・研修項目 | 手指衛生の実技 | ○(研修項目) |
| 時間 | 45分 | |
| 講師 | 感染管理担当 | |
| 場所・方法 | 4階カンファレンス室/動画 | |
| 全員受講か | 全員受講 | |
| 出席者 | 名簿からチェック | ○(出席者) |
| 欠席者のフォロー | 動画で受講し、受講日を追記 | |
表の値は見本で、実在の病院の記録ではありません。
研修の記録アプリで、年度の未受講者を一覧にする
exbk.jp の
研修の記録は、ここまでの残し方をそのまま画面にしたアプリです。無料で、登録なしで使えます。
研修の記録アプリの画面。職員名簿12人、実施日・分類・研修名・時間・講師・場所の入力欄、全員受講のチェック、受講者の選択、年度の未受講の表が並ぶ(架空の病棟の見本データ)
画面は架空の病棟の見本データで、患者も職員もすべて架空です。この執筆のために本番の画面を開いて確かめた内容は、次のとおりです。
- 最初に職員名簿を作り、受講者はこの名簿から選ぶ
- 研修ごとに、実施日、分類、研修名、時間(分)、講師、場所・方法、内容・メモを入れる
- 「全員受講にする」にチェックを入れた研修は、年度の未受講の確認の対象になる
- 年度(4月始まり)を選ぶと、全員受講の研修ごとに、受けていない人が一覧になる
- 研修の実施記録は印刷でき、受講表はCSV(表計算ソフトで開ける形式)で書き出せる
見本の画面では、12人のうち8人が受講した感染対策の研修に、「欠席者は動画で受講し、受講者に追加する」というメモが入っています。欠席者が後日受けたら受講者にチェックを足せば、年度の一覧から消えます。
ログインしないで入れたデータは、その端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。別の端末で使うときや、ブラウザのデータを消す前は、バックアップを書き出してください。院内のパソコンで使ってよいかは、病院の情報管理の決まりに従ってください。
始める前に決めておくこと
記録の書式より先に、院内で決めておくと迷わないことがあります。
| 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|
| 全員受講の研修はどれか | 未受講者の一覧に、対象外の人が混ざる |
| 年度の区切り(4月始まりか) | 年2回の数え方が部署ごとにずれる |
| 欠席者の受け方と、受講と認める条件 | 動画を見ただけの人を受講に数えてよいか、毎回もめる |
| 途中入職・退職の扱い | 入職前の研修まで未受講に数えてしまう |
| 記録を誰が、いつまでに入れるか | 出席簿が担当者の机に残ったまま、年度末にまとめて入力になる |
どれも条文や通知には書かれていないので、院内の決まりで決めます。医療安全管理委員会のある病院なら、委員会で決めて指針の「研修に関する基本方針」に書いておくと、担当が替わっても続きます。通知でも、指針に書く事項の1つとして「従業者に対する医療に係る安全管理のための研修に関する基本方針」が挙げられています。
よくある失敗
-
出席簿が紙の束のまま:年度末に未受講者を数えようとして、名簿との突き合わせに半日かかる
-
医療安全と感染対策を1枚の出席簿にまとめる:どちらの研修の出席かが分からなくなる
-
研修項目が「医療安全研修」だけ:何を扱ったかが残らず、翌年のテーマが重なる
-
欠席者のフォローを口約束で済ませる:受けたかどうかの記録が残らない
どれも、名簿を先に作り、研修ごとに項目を分けて書けば防げます。
書式を自分たちで作れるようになる研修
研修の記録は、病院ごとに分類の立て方も、欠席者の扱いも違います。既製の仕組みに合わせるより、自分たちの決まりに沿った書式を作れたほうが楽な場面は多いはずです。
この記事で紹介した研修の記録アプリは、
で作りました。
看護・医療向けの Claude Code 研修では、看護師や看護補助者、医療事務の方を対象に、患者情報を扱う現場での利用手順と部署の利用ルールを決めるところから始め、看護サマリーやインシデントレポート、勤務表、研修記録などのアプリを作り、最後に自部署の業務で実践します。看護の業務でAIをどう使うかは
看護でのAI活用にまとめています。
まとめ
- 医療安全の職員研修は、医療法施行規則第1条の11第1項第3号で、無床の診療所も含むすべての病院等に義務づけられている
- 回数は条文ではなく通知(令和8年3月31日 医政発0331第72号)で「年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催」
- 記録は「開催又は受講日時、出席者、研修項目」。無床の診療所は院外研修の受講で代えてよい
- 院内感染対策の研修も年2回程度・同じ3項目の記録。医療安全の研修とは別の項目なので、記録も分けて残す
- 未受講者を出さないには、名簿を先に作り、研修ごとに全員受講かを決め、年度ごとに欠けている人を一覧にする
院内の研修の記録を、病棟の決まりに沿ったアプリに自分たちで作り替えたい方は、
看護・医療向けの Claude Code 研修の中身をご覧ください。