病棟の看護師や医療安全の担当の方に向けて、転倒転落アセスメントシートを「つけて終わり」にしない使い方をまとめました。

結論から書くと、項目と配点は病院で決めた様式のものを使い、評価は入院時だけでなく状態が変わるたびにつけ直し、合計点を日付順に並べて残します。点数は危険度を決める答えではありません。チームで話し合うきっかけです。

この記事では特定の評価スケールの項目や配点は紹介しません。記事内の項目や点数は、すべて説明のための見本です。

先に結論:シートは項目・タイミング・推移の3点で決まる

転倒転落アセスメントシートで迷うところは、だいたい次の3つです。

疑問答え決めるのは
どの項目を使うか病院で定めた様式、または使ってよいと認められた様式の項目医療安全の担当・委員会
いつ評価するか入院時、転棟時、状態や薬が変わったとき、転倒のあと病棟の手順
点数をどう使うか日付ごとの合計点を並べ、変化があればチームで話し合う区分や対策は院内の手順

表の右の列に「看護師個人」が入っていない点が大事です。シートは個人の勘を補うための道具で、判断の基準そのものは病院が持っています。

評価項目を登録して、患者ごとにチェックし、合計点と推移を残すところまでは、exbk.jp の転倒転落アセスメント(無料・登録なしで使える)で試せます。項目は病院で決めたものを入れて使う作りです。

病棟のチェック表のように、毎日使う用紙を自分たちでアプリにする方法は、看護師や医療事務の方向けの Claude Code 研修で扱っています。

転倒転落アセスメントシートとは

転倒転落アセスメントシートは、患者ごとに、転びやすさやベッドからの落ちやすさにつながる事柄をチェックし、点数を足して記録する用紙です。病院によって「転倒転落スコアシート」「転倒・転落リスク評価表」などと呼び名が違います。

チェックする事柄は、たとえば次のような分類で並んでいることが多いです。

分類の例どんなことを見るか(見本)
これまで入院前や入院中に転んだことがあるか
動くとき杖や車いすを使っているか、立ち上がりに見守りが要るか
排泄夜間にトイレへ行くことが多いか
薬眠りや血圧に関わる薬が始まったか
環境入院や転棟して間もないか、点滴やチューブにつながっているか

中身は様式によって違います。表の右の列はあくまで見本で、実際の項目の言い回しと配点は、病院で使っている様式に従ってください。

なぜ病院ごとに様式を決めているのか

医療法施行規則の第1条の11では、病院などの管理者に、医療に係る安全管理のための指針の整備や、医療安全管理委員会の設置、職員研修などの体制を確保するよう定めています。転倒転落の予防も、この安全管理の取り組みの中で扱われることが多く、どの評価表を使い、点数をどう扱うかは、院内の指針や手順として決めるのが筋です。

裏を返すと、病棟ごと、看護師ごとに項目を足したり配点を変えたりすると、同じ12点でも意味がそろわなくなります。見直したい項目があれば、自分たちで書き換えずに、医療安全の担当に相談して様式ごと改める流れにします。

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評価項目の考え方

項目の選び方は様式に任せるとして、現場で困るのは「この患者さんに、この項目はチェックするのか」という迷いです。ここでは、つけ方をそろえるための考え方を3つ挙げます。

事実でつける

「ふらつきがありそう」ではなく、見たこと・聞いたことでチェックします。たとえば「立ち上がりに見守りが要る」なら、実際に立ち上がる場面を見たか、前の勤務の記録に書かれているかで決めます。

迷ったときは、チェックした理由をメモ欄に一行書いておくと、次に評価する人が同じ基準でつけられます。

見本:9/18 早朝、ナースコールを押さずにトイレへ向かう姿あり。「ナースコールを押さずに動く」にチェック。

迷う項目は病棟でそろえる

同じ患者でも、評価する看護師によって点数がずれることがあります。ずれやすいのは、「夜間にトイレへ行くことが多い」のような、どこからを「多い」とするかが人によって違う項目です。

こうした項目は、病棟の勉強会やカンファレンスで「うちの病棟ではこう数える」と決め、様式の余白や手順書に書き足してもらうのが近道です。様式を変える必要があれば、医療安全の担当を通します。

点数のない気づきも残す

様式の項目に当てはまらないけれど気になること、たとえば「ベッドの高さを自分で変えてしまう」「靴のかかとを踏んで歩いている」などは、点数にはなりません。それでも、メモ欄や看護記録に書いておけば、話し合いの材料になります。

合計点が低いからといって、こうした気づきを書かずに済ませると、シートの点数だけが一人歩きします。

評価するタイミング

入院時に一度つけて、そのまま退院まで見直さない。いちばんよくある形で、いちばんもったいない使い方です。転びやすさは、入院中にかなり変わります。

タイミング見直す理由(考え方)
入院したとき基準になる最初の点数を残す
転棟・転室したとき部屋の配置やトイレまでの距離が変わる
手術や検査のあと安静や麻酔のあとで動き方が変わる
薬が始まった・変わったとき眠気やふらつきにつながる薬がある
状態が変わったとき熱、せん妄、排泄の回数などの変化
転倒・転落が起きたとき起きた事実を反映し、見直しの材料にする
決まった間隔で病棟の手順で決めた日数ごと

何日ごとに見直すか、どの変化を「状態が変わった」とみなすかは、病棟の手順に従ってください。

転倒のあとの評価は、報告とセットで

転倒や転落が起きたら、インシデントの報告とあわせてアセスメントをつけ直します。インシデントの影響の大きさの区分(レベル)については、インシデントのレベル分けの記事にまとめています。

転倒のあとの評価で見たいのは、合計点そのものより、前回の評価から何が変わっていたかです。前回はチェックがなかった項目に、今回チェックが入っているなら、そこに気づくのが遅れた理由を話し合えます。

記録と推移の残し方

紙のシートでよく起きるのは、評価のたびに新しい用紙に書き、前回の用紙はファイルの奥に綴じられる、という形です。これだと、点数がどう動いてきたかを見るには、用紙を何枚もめくる必要があります。

推移を見やすく残すには、患者ごとに「評価日と合計点」を横に並べる一覧を作ります。

患者(見本)9/109/149/18変化のあった項目
見本A5点5点9点9/18に「ナースコールを押さずに動く」「夜間にトイレが多い」
見本B7点4点4点9/14に「点滴につながっている」が外れた

※ すべて説明用の見本データです。

この形にしておくと、カンファレンスで「見本Aさんは9/18に4点上がった。どの項目が増えたか」から話を始められます。合計点だけでなく、変わった項目を一緒に残すのがポイントです。

記録の項目

紙でも表計算ソフトでも、次の項目があれば推移を追えます。

項目記入の見本
評価日2029/09/18
患者・病室院内の決まりに沿った表記
評価者名前
チェックした項目様式の項目のうち、当てはまったもの
合計点様式の配点で足した値
メモチェックの理由、点数にならない気づき
評価のきっかけ入院、転棟、転倒後、定期 など

アプリで記録すると、こう見える

転倒転落アセスメントは、この項目の並びで作ってあります。病院で定めた評価項目と点数を登録し、患者ごとにチェックすると合計点が出て、評価日ごとの合計点の推移を一覧で見られます。

転倒転落アセスメントのアプリ画面。見本の病棟の患者について、登録した8項目のうち6項目にチェックし、合計点とメモを記録している(見本データ)
転倒転落アセスメントのアプリ画面。見本の病棟の患者について、登録した8項目のうち6項目にチェックし、合計点とメモを記録している(見本データ)

画面の患者名や項目は、すべて架空の見本データです。アプリは合計点を出すだけで、危険度の区分や対策は表示しません。区分や対策は、院内の様式と手順に従ってください。ログインしていない状態では、入力した内容はその端末のブラウザの中だけに保存され、サーバーには送られません。

点数は話し合いのきっかけにする

アセスメントシートでいちばん避けたいのは、点数で考えるのをやめてしまうことです。「10点以上だから対策あり」「5点だから大丈夫」と、点数だけで区切ってしまうと、項目に表れない気づきが抜け落ちます。

何点をどの区分にし、どんな対策を検討するかは、院内の様式と手順で決まっています。この記事では、その判断には立ち入りません。そのうえで、点数をカンファレンスで使うときの問いの例を挙げておきます。

どの項目が前回から変わったか
項目にはないが、担当として気になっていることはあるか
手順で決まっている対応のうち、まだ話し合っていないものはあるか

点数は、この問いを出すための入り口です。答えを出すのはチームと院内の手順です。

よくある失敗

よくある失敗何が困るか直し方
入院時に一度つけて見直さない状態が変わっても点数が古いまま見直すタイミングを病棟の手順に書く
病棟ごとに項目を足す・配点を変える同じ点数でも意味がそろわない見直しは医療安全の担当を通す
合計点だけを書き写すどの項目が変わったか追えないチェックした項目とメモも残す
点数だけで対策の要否を決める項目にない気づきが抜ける点数を話し合いの入り口にする
転倒のあとに評価し直さない起きた事実が次の評価に残らないインシデント報告とセットでつける

患者情報をAIや外部に入れないこと

看護記録や報告書の下書きに、 のような生成AIを使う話も出てきています。ただ、転倒転落アセスメントには、患者の名前や病室、病状、服薬が入ります。

患者が特定できる情報を、院内で使うことが認められていないAIや外部のサービスに入力してはいけません。医療機関での個人情報の扱いは、個人情報保護委員会が「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を公表しています。院内の規程とあわせて確かめてください。

AIに手伝ってもらうとしても、使えるのは個人が分からない見本データで、メモ欄の文章の型を考えるところまでです。実際の記録は、や院内で定められた様式に書きます。

先ほどの exbk.jp のアプリも、ログインしない使い方では入力した内容が端末の中にだけ残ります。院内で使う場合は、どの端末に何を入れてよいかを、病院の決まりで確かめてから使ってください。

看護の仕事でAIをどこまで使えるかは、看護のAI活用の記事で扱っています。病棟の書類仕事の見直し全体については、病棟のDXの記事も参考になります。

病棟のチェック表を、自分たちでアプリにする

転倒転落アセスメントのアプリは、 で作りました。日本語で指示を出して、画面や計算の仕組みを作ってもらう道具です。

どの項目をどう並べると評価しやすいか、推移をどう見せるとカンファレンスで使いやすいかは、毎日シートをつけている病棟の人がいちばんよく知っています。exbk.jp の Claude Code 研修(医療・看護)は、看護サマリーやインシデントレポート、申し送り、勤務表のような病棟の書類仕事を題材に、受講する人が自分の業務のアプリを作る研修です。2時間を5回、 で講師とつないで、その場で作りながら進めます。パソコンで文書作成やメールができれば受講できます。

まとめ

  • 転倒転落アセスメントシートの項目と配点は、病院で定めた様式のものを使う。病棟で勝手に書き換えない
  • チェックは見たこと・聞いたことでつけ、迷う項目は病棟で数え方をそろえる
  • 入院時だけでなく、転棟、手術や検査のあと、薬や状態の変化、転倒のあとに評価し直す
  • 合計点は日付順に並べ、変わった項目とメモも一緒に残す
  • 点数は話し合いのきっかけ。危険度の区分や対策は院内の手順で決め、患者情報はAIや外部に入れない

毎日つけるチェック表を、病棟の人が自分の手で使いやすい形に変えられるようになると、書類仕事の悩みは院内で解決できるようになります。その第一歩として、医療・看護向けの Claude Code 研修をのぞいてみてください。