転院や退院の日が決まると、病棟の看護師は看護サマリーを書きます。受け取るのは、まだその患者に会ったことのない人です。この記事は、転院・退院・施設入所のときに渡すサマリーを、次の担当者に伝わるように書くための手引きです。

例文はすべて書き方の見本で、実在の病院や患者の話ではありません。病名や薬の選び方など医師が決める内容は扱わず、看護の観察と引き継ぎの書き方に絞ります。

先に結論:4つのまとまりを順に埋め、「何ができて、何に手助けが要るか」を書く

看護サマリーは、基本情報 → 病名・経過 → 日常生活 → 引き継ぎの順に埋めます。日常生活の欄には「自立」「一部介助」の一語で終わらせず、何ができて、何に手助けが要るかを場面が浮かぶ言葉で書きます。これで抜けと読み違いが減ります。

疑問答え
誰が読むか転院先の病棟の看護師、訪問看護師、施設の看護職員や介護職員、ケアマネジャー
何を書くか基本情報、病名・経過、日常生活、引き継ぎの4つのまとまり
病名と薬は医師の記録・処方の記録から書き写す。言い換えない
経過は入院したときの様子、入院中に変わったこと、今も続いていることの3つに分ける
よいサマリーの目安読んだ人が、明日からのケアを迷わず始められるか

この4つのまとまりの順に入力できるのが、exbk.jp の看護サマリーのアプリです。無料・登録なしで、見本のデータのまま項目の並びを試せます。

看護サマリーは、患者に会う前の人が読む

読み手は、サマリーを読んで受け入れの準備をし、最初の数日のケアを組み立てます。ベッドの位置、夜間の見回りの回数、食事の形、トイレへの誘導の仕方。どれも、サマリーに書かれたことがそのまま出発点になります。

入院中の出来事を全部並べる書類ではありません。入院中に分かったことのうち、次の場所でも続くこと、次の場所で気をつけてほしいことを選んで渡します。

病棟の看護サマリーの書式を、看護師が自分でアプリにできるようになりませんか?
看護・医療の現場向け Claude Code 研修
研修の内容を見る

書く項目と順番:4つのまとまり

病院ごとに書式は違いますが、中身はおおむね次の4つに分けられます。書式が決まっていない場合や、今の書式を見直したい場合は、この並びを目安にしてください。

まとまり主な項目書き方のポイント
基本情報種類(転院・退院・施設入所)、作成日、病棟、記載者、氏名・年齢・性別、入院日、送り先、先方の担当と連絡先送り先の担当者の名前と連絡先まで書くと、問い合わせがすぐ届く
病名・経過病名、既往歴、アレルギー・禁忌、使用中の薬、入院中の経過病名と薬は医師の記録・処方の記録から書き写す。経過は看護の視点で
日常生活食事、排泄、移動・移乗、清潔・入浴、更衣、睡眠、意思疎通「自立/一部介助」だけで終わらせず、どの場面でどんな手助けが要るかまで
引き継ぎ続けてほしい看護・ケア、家族の状況と意向、持参物などの連絡事項次の担当者が最初の週にすることが分かるように

読み手はまず「誰が、どこから、いつ来るのか」を確かめ、次に「どんな病気で、何に気をつけるのか」を知り、そのうえで「毎日のケアをどう組むか」を考えます。この順は、読み手の疑問の順に合わせたものです。

基本情報:抜けやすい3つの欄

埋めるだけの欄に見えて、抜けが起きやすいところです。

送り先は、病院名だけでなく、地域連携室やサービス提供責任者など窓口の担当者と電話番号まで書きます。疑問を持ったときにすぐ聞ける先があれば、読み手は推測でケアを始めずにすみます。

記載者には、書いた看護師の名前と病棟を入れます。問い合わせを受けたとき、誰が答えればよいかが病棟の中でも分かります。

入院日と作成日があると、入院してからの期間が分かり、読み手は経過の欄を読む前におおよその状況をつかめます。

送り先:【見本】みどり野リハビリテーション病院 地域連携室
担当:見本さん(架空) 電話:(見本のため省略)

病名・既往・薬:まとめ直さず「書き写す」

病名、既往歴、使用中の薬は、医師の記録や処方の記録から書き写す欄です。看護師がまとめ直したり、言い換えたりする欄ではありません。

読み手は、サマリーの病名や薬を、元の記録と同じものとして受け取ります。言い換えると、そこに食い違いが生まれます。写し間違いを防ぐには、の画面から写したあと、もう一度元の画面と見比べるのが確実です。

アレルギー・禁忌の欄は空欄にしません。記録がないなら「記録なし」と書きます。空欄だと、読み手は「確かめていないのか、何もないのか」を区別できません。

よくない例書き直した例直したところ
(アレルギー欄が空欄)記録なし確かめた結果を書いた
薬は処方どおり(処方の記録から、薬の名前と飲み方を書き写す)読み手が元の記録を見なくても分かるようにした

入院中の経過:看護の視点で3つに分ける

経過の欄は、いちばん書き方に迷うところです。出来事を日付順に並べると長くなり、読み手が知りたいことが埋もれます。次の3つに分けて書きます。

書くこと中身見本の書き方
入院したときの様子入院当初、どんな状態で過ごしていたか入院当初はベッド上で過ごす時間が長かった
入院中に変わったことできるようになったこと、手助けが増えたこと9月に入り、リハビリの時間に合わせて車いすで過ごせるようになった
今も続いていること・行っているケア送り先でも続く様子と、病棟で行ってきたこと夜間にトイレに行こうとして起き上がることがあり、ナースコールで呼んでもらうよう繰り返し伝えている

3つを続けて1つの文章にすると、次のとおりです。

入院当初はベッド上で過ごす時間が長かったが、9月に入りリハビリの時間に合わせて車いすで過ごせるようになった。夜間にトイレに行こうとして起き上がることがあり、ナースコールで呼んでもらうよう繰り返し伝えている。

経過の欄には、医師が決めることを書きません。薬や処置がどう働いたかという評価は、医師の記録に任せます。書くのは、看護師が見たこと、行ったケア、患者の様子の変化です。

よくある失敗:「不穏」「安定」で終わらせる

「不穏」「理解力低下」は、見たことそのものではなく、見たことから考えた結果です。読み手が知りたいのは、そう考えた理由のほうです。

よくない例書き直した例直したところ
夜間不穏あり。夜間、2〜3時ごろに起き上がり「家に帰る」と話すことがある。声をかけてトイレへ案内すると、その後は眠れていることが多い。時間帯、本人の言葉、行った対応とその後を書いた
理解力低下あり。説明は一度に一つずつ伝えると理解される。複数のことを続けて伝えると、最初のことを忘れていることがある。伝わる伝え方と、伝わりにくい場面を書いた
状態安定。入院後半の2週間、日中は車いすで過ごし、食事は毎回半分以上を食べている。何を見て「安定」と考えたかを書いた

事実を先に書き、考えたことを添えるときは「〜と思われる」と分けて書きます。

日常生活の欄:「何ができて、何に手助けが要るか」

読み手が翌日からいちばん使うのが、この欄です。「自立」「一部介助」「全介助」の一語では、手助けの中身を決められません。

同じ「一部介助」でも、立ち上がりだけ支えるのか、ズボンの上げ下げを手伝うのかで、要る人手と時間が違います。どの動作ができて、どの動作に、どんな手助けが要るかまで書きます。項目ごとの書き直しの見本を並べます。

食事

よくない例書き直した例直したところ
食事自立。配膳後、自分で食べられる。食べこぼしが少しあるため、エプロンを使っている。できることと、使っている物を書いた
摂取量ムラあり。朝は半分ほど、昼と夕は8割ほど食べることが多い。どの食事で、どのくらいかを書いた

食事の形(きざみ、とろみなど)は、病院の指示として記録されている内容を書き写します。看護師の判断で変えた形として書かないようにします。

排泄

よくない例書き直した例直したところ
排泄一部介助。日中は車いすでトイレへ誘導し、ズボンの上げ下げを手伝う。夜間はパッドを使い、声かけで対応している。日中と夜間を分け、手伝う動作を書いた

移動・移乗

よくない例書き直した例直したところ
移乗見守り。ベッドから車いすへの移乗は見守りと軽い介助。立ち上がるときに腰を支えると安定する。どこを支えるとよいかまで書いた
転倒注意。夜間、一人で起き上がろうとすることがある。ベッドの高さを低くし、ナースコールを手の届く位置に置いている。注意の中身と、病棟で行ってきた工夫を書いた

清潔・更衣・睡眠

項目見本の書き方
清潔・入浴週2回シャワー浴、介助。背中と足は職員が洗う。
更衣上衣は自分で着られる。下衣は介助。
睡眠「眠れている」と話す。夜間は2〜3時ごろに一度目を覚ますことがある。

意思疎通

読み手が最初に患者と話すときの助けになる欄です。

よくない例書き直した例直したところ
難聴あり。会話は問題なし。耳が少し遠いので、正面からゆっくり話すと伝わる。伝わる話し方を書いた
疎通可。自分の希望を言葉で伝えられる。痛いときは我慢して言わないことがあるため、こちらから尋ねている。気をつけてほしい点を書いた

引き継ぎの欄:最初の週にしてほしいこと

引き継ぎは、サマリーの結論にあたる欄です。ここだけを読む人もいるつもりで、具体的に書きます。

項目書くこと見本の書き方
継続してほしい看護・ケア病棟で続けてきて、送り先でも続けてほしいこと夜間のトイレの声かけ。移乗時の見守り。
家族の状況・意向面会の頻度、キーパーソン、家族の希望長女が週2回面会。自宅への退院を希望している。
その他の連絡事項持参物、送り先に確かめてほしいこと眼鏡・入れ歯を持参します。

家族の意向は、看護師がそう思ったことではなく、家族が話したこととして書きます。本人と家族で希望が違うときは、両方をそれぞれの言葉で書きます。

本人:「家に帰りたい」と話している。
家族(長女):自宅への退院を希望しているが、夜間の介護に不安があると話している。

送り先ごとに、厚くする欄を変える

項目は同じでも、読み手によって特に読まれる欄が違います。送り先が決まったら、次の表で厚く書く欄を確かめてください。

送り先特に読まれる欄書き足すとよいこと
転院先の病院入院中の経過、続けてほしい看護病棟で行ってきたケアの手順と、その結果の様子
訪問看護・自宅日常生活、家族の状況と意向家族が行っていることと、家族に伝えた内容。自宅で使う物品
施設日常生活、睡眠、意思疎通夜間の様子、手助けの量、本人が落ち着く声のかけ方

訪問看護に渡すなら、病棟で看護師が行っていたことのうち、自宅では誰が行うのかを書き分けます。読み手が、訪問の最初の回ですることを決めやすくなります。

見本:夜間のパッド交換は、入院中は看護師が行っていた。退院前に長女へ交換の手順を伝え、一緒に2回行った。

渡す前に見直す6つの問い

  1. 送り先の担当者と連絡先は書いたか
  2. 病名・既往・薬は、元の記録から書き写し、見比べたか
  3. アレルギー・禁忌の欄は空欄になっていないか
  4. 「不穏」「安定」「一部介助」のような言葉を、見たことと手助けの中身に置き換えたか
  5. 医師が決めることではなく、看護の観察とケアを書いたか
  6. 最初の週にしてほしいことが、引き継ぎの欄に書いてあるか

患者の情報を、AIや外部のサービスに入れない

文章を整えるために、生成AIのチャットや翻訳サービス、文章の校正サービスを使いたくなることがあります。けれども、看護サマリーに書く内容は、患者の氏名や病歴を含む個人情報です。

では、病歴を含む個人情報を「要配慮個人情報」と定めています(第2条第3項)。本人に対する差別や偏見などの不利益が生じないよう、取扱いに特に配慮が要る情報という位置づけです。また第27条では、定められた場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないとしています。

現場で守りたいことは、次のとおりです。

  • 患者の氏名、病名、経過などを、病院で使うことを認められていないAIや外部のサービスに入れない
  • 名前を消したつもりでも、年齢・病棟・日付・経過の組み合わせで人が特定できることがある
  • 使ってよい道具と手順は、所属する病院の情報の取扱いの決まりに従う。分からないときは、情報の担当部署に確かめる

書き方の練習には、この記事のような架空の見本を使ってください。

書式のテンプレートと、印刷して渡せるアプリ

紙でも表計算ソフトでも、4つのまとまりの順に項目を並べておけば、同じ流れで書けます。

看護サマリーの入力画面。基本情報・病名・経過・日常生活・引き継ぎの項目が並ぶ(表示は見本データ)
看護サマリーの入力画面。基本情報・病名・経過・日常生活・引き継ぎの項目が並ぶ(表示は見本データ)

exbk.jp の看護サマリーのアプリ(無料・登録なしで使える)も、この並びで作ってあります。種類(転院・退院・施設入所)を選び、基本情報、病名・経過、日常生活、引き継ぎの順に入力すると、A4の書式で印刷できます。病名や薬の欄には「医師の記録から書き写してください」と表示されます。

登録せずに使う間、入力した内容はその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。患者の情報を入れる前には、病院の情報の取扱いの決まりで使ってよいかを必ず確かめてください。最初は、表示されている見本のデータで項目の並びを試せます。

このアプリは (文章で指示するとアプリを作ってくれるAIの道具)で作りました。どの項目を並べるか、どんな言葉なら次の担当者に伝わるかは、病棟の看護師がいちばんよく知っています。病院の決まりに沿った書式を看護師が自分でアプリにできるように、exbk.jp では看護・医療向けの Claude Code 研修を行っています。

病棟の書類の書き方は、ほかの記事にもまとめています。インシデントの報告はインシデントの影響度レベルの見方、病棟の書類仕事の見直しは病棟の医療DXの進め方を参考にしてください。

まとめ

  • 看護サマリーは、患者に会う前の人が、明日からのケアを組み立てるために読む
  • 基本情報 → 病名・経過 → 日常生活 → 引き継ぎの順に埋める。病名と薬は医師の記録から書き写す
  • 「不穏」「一部介助」で終わらせず、見たことと手助けの中身を場面の言葉で書く
  • 送り先が病院か、訪問看護か、施設かで、厚く書く欄を変える
  • 患者の情報は、病院で認められていないAIや外部のサービスに入れない

毎日の書類の手間を減らしたいと考えている病棟は、Claude Code 研修の中身ものぞいてみてください。