5S活動を任されて、最初に困るのが点検の紙です。どの項目を並べるか、何点を満点にするか、点数を誰がどう使うか。決めないまま先輩のシートを引き継ぐと、毎月の点検が「全部4点」で埋まっていきます。

この記事は、工場の5S推進を担当している方に向けて、チェックシートの項目の見本、5段階の採点の基準の決め方、点数の推移の読み方をまとめたものです。表に出てくる項目や点数はすべて書き方の見本で、実在の工場の数値ではありません。

先に結論:15項目・5段階・Sごとの達成度

続いている工場のシートは、たいてい次の形に落ち着きます。

決めること目安理由
項目数5つのSごとに3項目、合計15項目15分で回れる。項目が多いと点検の回数が落ちる
点数1〜5の5段階(満点75点)3段階だと差が出ず、10段階だと点検者で割れる
点数の意味各段階を文章で定義する点検者が替わっても点数が動かない
単位職場(エリア)ごと工場全体の平均は、弱点を隠す
頻度月1回対策を打って効果が出るまでの間隔に合う
見るもの合計点、Sごとの達成度、前回との差合計だけでは、どこを直すかが決まらない

シートを作る前に試すなら、exbk.jp の5Sチェックシート(無料・登録なしで使えます)が、この形のまま動きます。開くと見本の点検データが入っているので、項目の並びと採点の画面をそのまま見られます。

自分の工場の言葉に合わせた点検表を担当者自身が作れるようにする製造業向けの Claude Code 研修もありますが、まずは見本を触って、項目の粒の感じをつかむところからで十分です。

5Sチェックシートのアプリの画面。整理・整頓・清掃の項目を1〜5で採点し、右側にSごとの達成度が表示されている。表示されている工場名・点検者・点数はすべて見本データ。
5Sチェックシートのアプリの画面。整理・整頓・清掃の項目を1〜5で採点し、右側にSごとの達成度が表示されている。表示されている工場名・点検者・点数はすべて見本データ。

5つのSは何を指すのか

整理・整頓・清掃・清潔については、厚生労働省の転倒災害防止のページに意味が書かれています。転倒災害を防ぐ4S活動の説明として、次のように示されています。

整理:必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くこと
整頓:必要なものを、決められた場所に、決められた量だけ、いつでも使える状態に、容易に取り出せるようにしておくこと
清掃:ゴミ、ほこり、かす、くずを取り除き、油や溶剤など隅々まできれいに清掃し、仕事をやりやすく、問題点が分かるようにすること
清潔:職場や機械、用具などのゴミや汚れをきれいに取って清掃した状態を続けること

同じページには、4S活動で転倒の原因を取り除けば、作業性が上がり生産性の向上も期待される、という書き方もあります。5Sを安全活動として位置づけるときの、手元に置ける根拠になります。

5つ目の「しつけ」は、このページには出てきません。公的な資料で定義を確かめられなかったので、ここでは定義を断定しません。自分の事業所で「決めたことを守り続けている状態」といった言葉を先に決めて、そのうえで採点してください。定義が人によって違うまま点数だけ付けると、しつけの点はほとんど意味を持ちません。

工場の点検表や報告書を、現場の担当者が自分でアプリにできるようになりませんか。
製造の現場向け Claude Code 研修
研修の内容を見る

チェックシートの項目の見本

15項目の並べ方の見本です。自分の工場の言葉に置き換えて使ってください。

整理

項目見るところ
必要な物と不要な物が区別され、不要な物が置かれていない通路脇、機械の裏、階段下
通路や作業台の上に、私物や使っていない物が無い使っていない治具、空の箱
不良品・保留品が、表示をして決められた場所に置かれている良品と混ざっていないか

整頓

項目見るところ
物の置き場所と置く量が表示されている棚の表示、最大在庫の線
工具・治具を使ったあと、元の場所に戻している工具板の空き、探し物の有無
通路と置き場の区画線がはっきりしている線の消えかけ、線をはみ出した荷

清掃

項目見るところ
床・設備に切粉や油の汚れが無い機械の足元、搬送部
清掃の担当と頻度が決まっている分担表が現物と合っているか
清掃のときに、設備の漏れ・ゆるみも確かめている点検表への記入があるか

清掃の3つ目は、5Sと設備の点検がつながる項目です。清掃を「きれいにする作業」で終わらせず、異常を見つける時間として使えているかを見ます。日常点検の表の作り方は設備の日常点検表の作り方にまとめました。

清潔

項目見るところ
整理・整頓・清掃の状態が続いている前回の指摘が戻っていないか
照明や表示が汚れておらず、見やすい表示のかすれ、蛍光灯の汚れ
良い状態の基準(写真など)が掲示されている基準の写真が古くないか

しつけ

項目見るところ
決められた保護具を正しく着けているあごひも、保護めがね
決めた手順どおりに作業している作業標準書との差
気づいたことを報告・改善提案に出している今月の提案の件数

しつけの2つ目は、手元に作業標準書があって初めて点検できます。手順そのものが古いまま点数だけ下げても、現場は動きません。標準書の整え方は作業標準書の書き方に書きました。

5段階の点数を、言葉で決める

点数がそろわないシートは、項目が悪いのではなく、段階の定義がないことがほとんどです。次のように文章で決めると、点検者が替わっても点数の動きが小さくなります。

点状態の目安
5決めたとおりに保たれ、基準(写真や表示)も新しい
4守られているが、表示や基準の見直しが残っている
3決めてあるが、守れていない箇所がある
2決まりがあいまいで、人によってやり方が違う
1決まりがない、または危険な状態がある

この表をシートの上か裏に印刷しておくだけで、点検の会話が変わります。「これは3ですか、4ですか」ではなく、「決まりはあるけど守れていないから3ですね」と言えるようになるからです。

2点以下を付けたら、その場で対策と確認日を決めます。点検の最中に決めないと、あとで議事録を見ても誰の仕事か分からなくなります。

点数の読み方

合計点だけを追うと、弱点が平均に埋もれます。見るのは3つです。

  1. Sごとの達成度(その S の満点に対する割合)
  2. 前回からの差が大きい項目
  3. 3回続けて同じ点の項目

3つ目が、いちばん手が止まりやすいところです。3回続けて3点の項目は、点検が形だけになっているか、対策が現場の手に余るかのどちらかです。前者なら点検者を替え、後者なら対策の粒を小さくします。

exbk.jp の5Sチェックシートでは、職場と点検日を入れて1〜5を押すと、合計点とSごとの達成度が右側に出ます。点検の記録は職場ごとに残り、点数の推移をグラフで比べられます。講評と次回までの課題も同じ画面に書けて、そのまま印刷できます。登録しないで使っている間、入力したデータは端末のブラウザの中だけに保存され、サーバーには送られません。

清掃について法令で決まっていること

5Sの点検とは別に、事業者の義務として決まっていることがあります。労働安全衛生規則第619条では、次のように定められています。

日常行う清掃のほか、大掃除を、六月以内ごとに一回、定期に、統一的に行うこと。

点検の項目に「清掃ができているか」を入れていても、この大掃除の実施記録が残っていない工場は珍しくありません。5Sの記録とあわせて確かめておくと安全です。

通路まわりも、同じ規則に具体的な定めがあります。屋内に設ける通路について、用途に応じた幅とすること、通路面をつまずき・すべり・踏抜等の危険のない状態に保つこと、通路面から高さ1.8メートル以内に障害物を置かないことが挙げられています。機械の間などに設ける通路は、幅80センチメートル以上とされています。

整頓の項目で「区画線がはっきりしている」を見るとき、線が引いてあるかだけでなく、線の内側の幅がこの定めを満たしているかも見てください。点検のときに巻き尺を1本持っていくと、話が早く終わります。

よくある失敗

起きること原因直し方
全部4点で埋まる段階の定義がない。点数が人事評価に結びついている段階を文章で決める。点数を評価に直結させない
点検が月末に集中する点検日が決まっていない曜日で固定する(第2火曜など)
指摘が翌月に戻る対策の担当と期限が空欄2点以下はその場で担当と確認日を書く
職場間の点数が比べられない点検者が職場ごとに違う点検者を持ち回りにして、他部署の目を入れる
シートが年々長くなる項目を足すだけで減らさない毎回満点の項目は、半年ごとに入れ替える

最後の行は、実際によくある話です。指摘があるたびに項目を足していくと、3年で50項目のシートになり、点検が1時間仕事になります。そうなると点検の回数が落ちて、結局どの項目も見なくなります。項目は足すときに1つ抜く、と決めておくと長さが保てます。

始める前に決めておくこと

  • 点検の単位(ライン単位か、部屋単位か)
  • 点検者(持ち回りか、品質保証部の固定か)
  • 点検日(曜日で固定する)
  • 点数の使い道(改善の材料に限る、と先に宣言する)
  • 記録の保管場所(紙、共有フォルダ、アプリ)

点数の使い道は、最初に言葉にしておくほうがもめません。点数を職場同士の競争に使う工場もありますが、その場合は点検者を必ず外部の目にしないと、点数だけが上がります。の材料として使うのか、成績として使うのか。どちらなのかを、点検を始める前に全員に伝えてください。

の認証を取っている工場では、5Sの記録を内部監査で見せることもあります。誰がいつ点検し、何を指摘し、どう対応したかがたどれる形にしておくと、監査の前に慌てずにすみます。

紙のシートを、自分たちのアプリにする

5Sの点検表は、工場ごとに項目も段階の言い方も違います。市販のシステムに合わせようとすると、自分たちの言葉が消えてしまいがちです。

exbk.jp の製造業向けアプリは、そこを埋めるために で作ったものです。日本語で「5つのSごとに3項目、1〜5で採点して、職場ごとに推移を出して」と頼んで、画面を組み立てていきます。作業標準書、不具合報告書、QC工程表、設備の日常点検表なども同じやり方で作りました。ほかのアプリの一覧と作り方の話は製造業でのAIの使いどころにまとめています。

同じことを現場の担当者ができるようにする製造業向けの Claude Code 研修も行っています。Zoomでつなぐライブ形式で、題材は工場の書類だけです。図面や取引先の仕様、品質データをAIに入れてよいかの線引きを第1回で決めてから、書類のアプリづくりに入ります。雇用保険に加入している従業員の方は、リスキリングの助成金を使って受講できます。制度上、研修の内容と受講者の担当業務が合っているかが審査されるので、点検表や報告書の作成を担当している方が対象です。

AIに講評の下書きを作らせてみた

この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、アプリに入っている見本データを渡して、点検の講評の下書きを作らせました。渡したのは、加工エリアの合計52点(75点満点、69.3点)、Sごとの達成度が整理67%・整頓80%・清掃60%・清潔60%・しつけ80%、いちばん低い項目が「良い状態の基準(写真など)が掲示されている」の2点、という見本の数値だけです。返ってきた下書きは、こういうものでした。

今回の加工エリアは69.3点。整頓としつけは8割に届いた一方、清掃と清潔が6割で並んだ。清潔の3項目のうち「良い状態の基準(写真など)が掲示されている」が2点で、基準の写真が掲示されていない。次回までに、整頓が良い状態の棚の写真を1枚撮って掲示する。担当は加工エリアの班長、確認は次回の点検日。

数字を並べ直して、低い項目を1つ選び、対策の文にするところまではやってくれます。ただし、なぜ清掃が6割なのか、どの機械の足元が汚れているのかは、見本のデータに入っていないので書けません。現場を歩いた人が2行足す前提の下書きだと思ってください。

不具合の原因をたどる場面でも同じで、AIは文章の形を整えるのは得意でも、原因そのものは現場にしかありません。たどり方はなぜなぜ分析のやり方に書きました。

まとめ

  • 5つのSごとに3項目、合計15項目を1〜5で採点する形が、月1回を続けやすい大きさです
  • 点数がそろうかどうかは、項目より「各段階の意味を文章で決めたか」で決まります
  • 合計点ではなく、Sごとの達成度と、3回続けて同じ点の項目を見ます
  • 清掃については、労働安全衛生規則で大掃除を六月以内ごとに一回、定期に、統一的に行うことが求められています。通路の幅や障害物にも定めがあります
  • 2点以下は、その場で対策の担当と確認日まで書きます

点検表や報告書の様式は、工場ごとに違います。だからこそ、様式を決めている担当者が自分でアプリを作れると、書類仕事は一気に軽くなります。その進め方は製造業向けの Claude Code 研修で扱っています。