この記事は、介護事業所の生活相談員やケアマネジャー、現場の職員に向けて、フェイスシートに何をどう書き、どう更新していくかをまとめたものです。

フェイスシートは「初めてその利用者に関わる人が、1枚読めば全体像をつかめる」ように書く書類です。国の統一様式はないので、項目は厚生労働省の課題分析標準項目を目安に事業所で決め、変わる項目は更新日と一緒に管理します。

記入例はすべて架空の見本です。実在の事業所や利用者の話ではありません。

先に結論:フェイスシートは「1枚で全体像」、更新は日付で管理する

疑問答え
何のための書類?利用者の基本情報を1枚にまとめ、職員や他職種が同じ情報を見られるようにする
国の様式はある?この記事で確かめた厚生労働省の通知には「フェイスシート」という様式は出てこない。事業所ごとに作る
項目の目安は?課題分析標準項目の「基本情報に関する項目」(9項目)
書き方のコツは?事実と本人の言葉を分ける。あいまいな言葉を使わない
更新漏れを防ぐには?認定の有効期間など変わる項目に「更新日」を付け、期限が近いものを一覧で見る

紙や表計算ソフトで作っている事業所では、認定の有効期間の終了日が近づいても、誰かが気づくまで分からないことがあります。exbk.jp の利用者台帳のアプリ(無料・登録なしで使える)は、基本情報、要介護度、認定の有効期間、家族の連絡先、注意事項を1画面にまとめ、終了まで60日以下で黄色、終了後は赤の札で知らせます。

こうした台帳や書式は、事業所の決まりに合わせて職員が自分で作ることもできます。介護事業所向けの Claude Code 研修では、現場の書類をアプリにする方法を、介護職員や生活相談員、ケアマネジャー、事務の方が学びます。

フェイスシートとは何か

フェイスシートは、利用者の「顔」にあたる情報をまとめた書類です。氏名や生年月日、住所、家族の連絡先、要介護度、主治医、病歴、生活歴、本人や家族の希望などを、1〜2枚に収めます。

使われる場面は、たとえば次のとおりです。

  • 新しく利用を始めるとき、担当する職員全員が同じ情報を持つ
  • 急に体調が変わったとき、家族や主治医の連絡先をすぐ探す
  • 入院や他の事業所への紹介のとき、基本情報をまとめて伝える
  • 担当者が替わったとき、引き継ぎのもとにする

介護記録が「その日に何があったか」を残す書類なら、フェイスシートは「この人はどんな人か」を残す書類です。記録の書き方は介護記録の書き方にまとめています。

国の統一様式はあるのか

この記事を書くにあたり、厚生労働省の「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年老企第29号)と、その一部改正の通知(令和5年10月16日、介護保険最新情報Vol.1178)を開いて確かめました。どちらにも「フェイスシート」という名前の様式は出てきません。

老企第29号が示しているのは、ケアプラン(介護サービス計画書)の様式と、アセスメントで押さえる「課題分析標準項目」です。ケアプランの様式についても、通知には、示した様式以外の様式の使用を「拘束する趣旨のものではない」という旨が書かれています。

つまり、フェイスシートの形は事業所ごとに決めてよい、ということです。ただし自由な分、項目に抜けが出やすくなります。そこで目安になるのが、次に紹介する課題分析標準項目です。

なお、ここで確かめたのは上の2つの通知です。自治体や法人が独自の様式を定めている場合もあるので、所管の自治体や法人の決まりも確かめてください。

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フェイスシートに書く項目

国の課題分析標準項目の「基本情報」9項目

課題分析標準項目は23の項目からなり、1〜9番が「基本情報に関する項目」、10〜23番が「課題分析(アセスメント)に関する項目」です。令和5年の改正後の「基本情報に関する項目」は、次の9つです。

番号標準項目名主な内容(通知の例を要約)
1基本情報(受付、利用者等基本情報)受付日時・受付方法、氏名・性別・生年月日・住所・電話番号、家族等の基本情報、計画作成が初回かどうか
2これまでの生活と現在の状況現在の生活状況、これまでの生活歴
3利用者の社会保障制度の利用情報介護保険・医療保険の被保険者情報、年金の受給状況、生活保護や障害者手帳の有無
4現在利用している支援や社会資源の状況介護保険サービス、医療保険サービス、障害福祉サービス、自治体のサービス、それ以外の生活支援
5日常生活自立度(障害)障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定と、判定を確かめた書類、認定年月日
6日常生活自立度(認知症)認知症高齢者の日常生活自立度の判定と、判定を確かめた書類、認定年月日
7主訴・意向本人の主訴や意向、家族等の主訴や意向
8認定情報要介護状態区分、審査会の意見、区分支給限度額など
9今回のアセスメントの理由初回、認定の更新、区分変更、退院・退所、転居など

フェイスシートにこの9項目がそろっていれば、ケアマネジャーのアセスメントとも話がかみ合います。10番以降の健康状態やADLは、別のアセスメントシートに分けて書く形もあります。

現場で足しておきたい項目

標準項目はケアプランを作るための一覧なので、毎日の介護で使う情報は足りないことがあります。事業所でよく足されるのは、次のような項目です。

項目書く内容の例足す理由
主治医・かかりつけ薬局医療機関名、電話番号体調が変わったときにすぐ連絡するため
緊急連絡先の順番第1連絡先、第2連絡先、連絡がつきやすい時間帯夜間や休日に誰へ電話するか迷わないため
認定の有効期間開始日と終了日更新の申請の準備を忘れないため
アレルギー・禁忌食べ物、薬、そのほか食事や服薬の事故を防ぐため
食形態常食、きざみ食、とろみの有無など配膳のまちがいを防ぐため
介助・対応の注意移動の方法、声かけで気をつけること初めての職員でも同じ対応ができるため
更新日・記入者いつ、誰が書き換えたかどの情報がいつのものか分かるため

項目を増やしすぎると、書くのも読むのも大変になります。「初めて関わる職員が、最初の1日で困らないか」を基準に、残す項目を選ぶとまとまります。

記入例:架空の見本で書いてみる

ここからは、架空の利用者「見本 ウメさん」を例に記入例を示します。名前も数値もすべて見本です。

基本情報と認定情報

項目記入例(見本)
氏名・ふりがな見本 ウメ(みほん うめ)
生年月日・性別1938年4月12日・女性
保険者【見本】さくら市
要介護度要介護3
認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱb(判定を確かめた書類:主治医意見書)
認定の有効期間2029年5月1日〜2029年10月31日
主治医【見本】さくら内科
緊急連絡先第1:長女(見本 春子さん)、平日18時以降がつながりやすい

自立度には、どの書類で確かめたかも書いておきます。令和5年の改正後の標準項目でも、判定を確かめた書類(認定調査票、主治医意見書)を記載する内容の例に挙げています。

生活歴と本人の意向

生活歴や意向の欄は、書く人によって差が出やすいところです。よくない例と書き直した例を並べます。

よくない例書き直した例(見本)直したところ
家庭的な方。結婚後は専業主婦として家族5人の食事を作ってきた。「台所に立つのが好きだった」と話される。性格の決めつけをやめ、事実と本人の言葉にした
帰宅願望あり。早朝と夕方に「家に帰らないと」と話されることが多い。隣に座って話を聞き、お茶に誘うと落ち着かれる。いつ、何と言い、どうすると落ち着くかを書いた
家族は協力的。長女が週1回(土曜)面会。受診の付き添いは長女が対応。「協力的」を、誰が何をしているかに置き換えた
本人希望:特になし。「足が弱ったから、転ばないようにしたい」と話される。聞き取った言葉をそのまま残した

本人の言葉は、言い換えずに「」でそのまま残します。「帰宅願望」「協力的」のような言葉は、書いた人の解釈です。読んだ人が同じ場面を思い浮かべられるよう、見たことと聞いたことに置き換えます。言葉の選び方は介護記録の例文集も参考になります。

注意事項

項目記入例(見本)
食形態きざみ食
アレルギーなし(2029年5月、長女に確認)
移動車いす。立ち上がりは職員が腰を支える
対応の注意9月16日に居室で転倒(右前腕打撲)。夜間は居室の照明を小さくつけておく

「なし」と書くときは、誰にいつ確かめたかを添えます。確かめずに空欄のままなのか、確かめた結果「なし」なのかは、読む人には区別がつかないからです。転倒があった場合は、事故報告書と同じ事実をここにも短く残します。事故報告書の書き方は介護の事故報告書の書き方で紹介しています。

よくある失敗

作ったきりで更新されない

よくある困りごとは、利用開始のときに作ったまま、中身が古くなることです。要介護度が変わった、主治医が替わった、家族の電話番号が変わった。こうした変化が反映されていないと、いざというときに役に立ちません。

同じ情報があちこちにある

氏名や要介護度を、フェイスシート、記録、事故報告書、送迎表のそれぞれに手で書いていると、1か所を直しても、ほかが古いまま残ります。どれが正しいのか分からなくなるのが、いちばん困る状態です。

あいまいな言葉と、確認していない「なし」

「特記事項なし」「アレルギーなし」は、確かめた結果なのか、聞いていないだけなのかが分かりません。確かめた日と相手を書くだけで、情報の重みが変わります。

更新漏れを防ぐ台帳のつくり方

変わる項目と変わらない項目を分ける

項目には、ほとんど変わらないものと、よく変わるものがあります。

区分項目の例管理のしかた
ほとんど変わらない氏名、生年月日、生活歴作成時に丁寧に書く
時々変わる住所、家族の連絡先、主治医変わったら書き換え、更新日を残す
期限がある認定の有効期間終了日を入れ、近づいたら知らせる仕組みにする
よく変わる食形態、服薬、対応の注意担当者会議やカンファレンスのたびに見直す

期限がある項目は、人の記憶に頼らず、一覧で「あと何日か」を見られるようにするのが確実です。

見直しのきっかけを決めておく

次のような出来事があったら、フェイスシートを開く、と事業所で決めておきます。

  1. 要介護認定の更新・区分変更の結果が届いたとき
  2. 入院・退院したとき
  3. 家族の連絡先や主治医が変わったとき
  4. 転倒などの事故があったとき
  5. 担当者会議のあと

台帳を1つにして、ほかの書類はそこから引く

情報のもとを1か所にまとめ、記録や報告書はそこから名前や要介護度を引いてくる形にすると、書き換えが1回で済みます。表計算ソフトでも、利用者の一覧のシートを1枚作り、ほかのシートはそこを参照するようにすれば近い形になります。

exbk.jp の利用者台帳のアプリは、この考え方で作っています。

利用者台帳の画面。基本情報(氏名、ふりがな、生年月日、性別、サービス提供開始日、保険者、主治医)、介護保険(要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度、認定の有効期間)、利用・送迎、家族の連絡先、注意事項の欄が並ぶ。認定の有効期間の終了日の下に「終了まであと43日」の黄色い札が付いている。表示しているのは架空の見本データ
利用者台帳の画面。基本情報(氏名、ふりがな、生年月日、性別、サービス提供開始日、保険者、主治医)、介護保険(要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度、認定の有効期間)、利用・送迎、家族の連絡先、注意事項の欄が並ぶ。認定の有効期間の終了日の下に「終了まであと43日」の黄色い札が付いている。表示しているのは架空の見本データ

画面は、アプリに最初から入っている見本データ(架空の事業所「【サンプル】さくらの里」)を表示したものです。認定の有効期間の終了日を入れると、終了まで60日以下で黄色の札、終了日を過ぎると赤の札が付きます。台帳に登録した利用者は、同じサイトの介護記録や事故報告書、ヒヤリハット報告、申し送りノートで名前の候補に出ます。無料で、登録なしで使えます。

ログインしていない間、入力したデータはその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。共用のパソコンで使う場合は、使い終わったらバックアップを書き出してからデータを消してください。

このアプリは で作りました。どの項目を台帳に置き、何日前から知らせるかは、事業所の運用によって変わります。自分の事業所の決まりどおりの台帳を職員が自分で作れるようになりたい場合は、介護事業所向けの Claude Code 研修で、記録や報告書、送迎表などをアプリにする方法と、個人情報の取扱いルールの決め方を学べます。

個人情報の扱いで気をつけること

フェイスシートには、氏名、生年月日、住所、病歴、家族の電話番号など、とくに慎重に扱うべき情報がまとまっています。

  • 生成AIや外部のサービスに入れない:清書や要約を頼みたくなっても、実際の利用者の情報は入力しません。AIに頼むなら、架空の見本データで書式の案や言い回しの例を作らせるところまでにします。AIはもっともらしい誤り()を書くこともあるので、出てきた文面は必ず人が確かめます。
  • 紙は置き場所を決める:机の上に出しっぱなしにせず、使ったら決まった場所に戻します。
  • データは保存先を確かめる:どの端末、どのサービスに保存されるかを確かめてから使います。
  • 書き出したファイルにも注意する:バックアップや印刷したものにも同じ情報が入っています。

AIを現場でどう使い、何を入れてはいけないかは、介護のAI活用で詳しく書いています。

保存期間の考え方

国の運営基準(指定居宅サービス等の基準)は、サービスの提供に関する記録を整備し、「その完結の日から二年間保存しなければならない」と定めています。フェイスシートをどの記録として扱うか、自治体が別の期間を定めていないかは、所管の自治体の取扱いで確かめてください。

まとめ

  • フェイスシートは、初めて関わる人が1枚で利用者の全体像をつかむための書類
  • 「フェイスシート」という国の統一様式は、確かめた厚生労働省の通知には出てこない。項目は課題分析標準項目の「基本情報」9項目を目安にする
  • 生活歴や意向は、解釈の言葉ではなく、事実と本人の言葉で書く。「なし」には確かめた日と相手を添える
  • 認定の有効期間など変わる項目は、更新日と一緒に管理し、期限が近いものを一覧で見る
  • 実際の利用者の情報は、生成AIや外部のサービスに入れない

転倒の記録や事故の防ぎ方は、ヒヤリハットの事例もあわせて読んでみてください。

事業所の台帳やフェイスシートの書式を、現場の職員が自分でアプリにできるようになると、書き換えの手間も、更新漏れも減らせます。その方法は介護事業所向けの Claude Code 研修で紹介しています。