毎日の記録で言い回しに迷ったときに引く例文集です。食事や入浴、排泄から、服薬、夜間、訴え、レクまで、16の場面を「よくない例」「書き直した例」「直したポイント」の表にしました。

例文の時刻・数値・言葉はすべて見本で、実在の事業所や利用者の記録ではありません。事実・気づき・対応の分け方や5W1Hの使い方といった基本は、介護記録の書き方の記事にまとめています。

先に結論:どの場面も直し方は4つ

16場面の表の「直したポイント」には、次の4つのどれかが出てきます。

直し方
時刻と量を数字で書く「食欲なし」→「12:10 昼食 主食2割、副食3割」
本人の言葉を「」で残す「入浴拒否」→「『今日は疲れたから入りたくない』と話された」
あいまいな言葉を、見たことに置き換える「不穏」→「廊下を3回往復し『家に帰らないと』と話された」
報告先と次に見ることを書く「様子見」→「14:15 看護師に報告。16時に再度検温する」

体調に関わる場面では、もうひとつ決まりがあります。原因や病名の判断は書かず、数値と本人の言葉、看護師への報告を書くことです。「脱水気味」「風邪だと思う」ではなく、「体温37.4℃」「『のどが渇いた』と話された」「14:20 看護師に報告」と書きます。判断は報告を受けた医療職が行います。

書いた記録にあいまいな言葉が残っていないかは、exbk.jp の介護記録のアプリでも確かめられます。「特変なし」「様子見」などが入っていると印がつきます。無料で、登録なしで使えます。

場面別の例文:生活の場面

1. 起床・朝の様子

よくない例書き直した例直したポイント
起床時、機嫌悪い。6:40、声をかけると「まだ眠い」と話され、布団をかぶられた。7:00に再度声をかけると起きられた。「機嫌悪い」を本人の言葉と動作に置き換え、声かけの時刻を書いた
朝、特変なし。6:50、自分で起き上がり、洗面所で顔を洗われた。表情は穏やかで、「よく眠れた」と話された。何を見て「変わりなし」としたかを書いた

2. 食事

よくない例書き直した例直したポイント
食事量少ない。12:10、昼食。主食3割、副食半分、汁物全量。「今日はあまりおなかがすかない」と話された。量を品目ごとの割合で書き、本人の言葉を残した
むせ込みあり。注意。12:25、みそ汁を飲んだ際に2回むせた。その後は咳き込みなく、最後まで食べられた。夕食でもむせの有無を見る。回数、その後の様子、次に見ることを書いた
自力摂取困難。全介助。8:00、朝食。スプーンを持たれたが口に運ぶ途中でこぼれたため、職員が介助した。主食8割、副食全量。どこができて、どこを手伝ったかを書いた

3. 水分

よくない例書き直した例直したポイント
水分摂取不良。10:00 お茶100ml、12:10 汁物150ml、15:00 お茶50ml。15時は「もういらない」と話され、残された。時刻ごとの量と、残した理由を書いた
脱水気味。14:00、唇が乾いている。午前の水分は合計200ml。体温37.2℃。14:10、看護師に報告した。判断を書かず、見た様子・数値・報告を書いた

4. 口腔ケア

よくない例書き直した例直したポイント
口腔ケア拒否。19:30、歯みがきに声をかけると「自分でやったからいい」と話された。歯ブラシは乾いたままだった。20:00にうがいだけ声をかけると応じられた。本人の言葉、確かめたこと、代わりに行ったことを書いた
義歯洗浄済み。20:00、上の義歯を外して洗浄し、ケースに保管した。歯ぐきに赤みや傷は見られなかった。行った手順と、口の中で見たことを書いた

5. 入浴

よくない例書き直した例直したポイント
入浴拒否。清拭にする。10:30、入浴に声をかけると「今日は疲れたから入りたくない」と話された。11:00に別の職員が声をかけたが同じ返事のため、清拭に変更した。本人の言葉、声かけの回数と誰がかけたか、変更後の対応を書いた
入浴、特に問題なし。10:30、一般浴。入浴前 体温36.5℃、血圧128/76。背中・臀部・足に赤みや傷なし。湯船で「気持ちいい」と話された。数値と、皮膚のどこを見たかを書いた

6. 排泄

よくない例書き直した例直したポイント
排便なし。最終排便は9月17日 7:40(普通便・中等量)。本日も排便なし。18日で2日目。夕方に看護師へ伝えた。最終排便の日時と、何日目かと報告を書いた
失禁あり、交換させた。21:00、パッドに排尿あり(パッドの半分程度)。「気がつかなかった」と話された。声をかけてパッドを交換した。量と本人の言葉を書き、「させた」を行った介助の言葉に直した
トイレ誘導するも出ず。14:00、トイレへ案内し便座に3分座られたが排尿なし。「出ない」と話された。15:00に再度声をかける。座った時間、本人の言葉、次の予定を書いた
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場面別の例文:動作と体の場面

7. 移乗

よくない例書き直した例直したポイント
移乗時ふらつきあり。13:00、ベッドから車いすへ移乗。立ち上がった際に膝が曲がり、職員が腰を支えて座っていただいた。「足に力が入らない」と話された。どの動作で、どうなり、職員が何をしたかを書いた
移乗介助。9:30、車いすからベッドへ移乗。手すりをつかんで自分で立ち上がり、向きを変えるところを職員1名が支えた。どこまで自分ででき、どこを何人で支えたかを書いた

8. 歩行・転びそうになった場面

よくない例書き直した例直したポイント
転倒しそうになる。15:20、廊下を歩行器で歩行中、つまずいて前かがみになった。近くの職員が肩を支え、転倒はなかった。「床が滑った気がする」と話された。場所、何をしていたか、職員の対応、本人の言葉を書いた
歩行不安定。見守り強化。10:00、居室からトイレまで(約10m)歩行器で歩行。途中で2回立ち止まり、「少し休みたい」と話された。次回から職員が横について歩く。距離、立ち止まった回数、次からの対応を具体的に書いた

転んでしまった場合は、記録とは別に事故報告の書式があることが多いので、事業所の決まりに従ってください。

9. 服薬

よくない例書き直した例直したポイント
服薬確認。8:10、朝食後の薬(1包)を手渡し、水で飲まれたのを確認した。口の中に残っていないことも見た。何を渡し、何を見て「飲んだ」と確かめたかを書いた
薬を落とした。12:40、昼食後の薬を飲む際、錠剤1錠が床に落ちた。落ちた錠剤は飲まずに保管し、12:45に看護師へ報告した。何錠落ちたか、落ちた薬をどうしたか、報告の時刻を書いた
服薬拒否。19:00、夕食後の薬を渡すと「これは苦いから飲みたくない」と話された。19:20に再度声をかけたが同じ返事。19:25、看護師に報告した。本人の言葉と理由、声かけの回数、報告を書いた

薬を飲まなかったとき、どう対応するかは看護師や医師が決めることです。記録には、起きたことと報告したことだけを書きます。

10. バイタル・体調の変化

よくない例書き直した例直したポイント
発熱あり。様子見。14:00、体温37.8℃、脈拍92回/分。「体がだるい」と話された。14:05、看護師に報告。指示により16時に再度検温する。数値、本人の言葉、報告の時刻、次に見ることを書いた
血圧高め。9:00、血圧162/94(右腕・座位)。5分後に測り直し158/90。頭痛の訴えなし。9:10、看護師に報告した。数値、測った条件、測り直しの結果、報告を書いた

「高め」「低め」は、その人のふだんの値を知らない人には伝わりません。数値を書けば、読む人が自分で比べられます。

11. 皮膚・体の気になるところ

よくない例書き直した例直したポイント
右腕にアザあり。10:40、更衣時に右前腕の外側に、青紫色の変色(約3cm×2cm)を見つけた。本人は「覚えていない」と話された。10:50、看護師に報告した。場所、色、大きさ、本人の言葉、報告を書いた
お尻が赤い。21:00、排泄介助時、仙骨のあたりに赤み(約2cm)あり。押しても白くならなかった。21:05、看護師に報告し、体の向きを変える時刻を記録する。場所、大きさ、確かめた方法、報告を書いた

場面別の例文:気持ちとやりとりの場面

12. 夜間

よくない例書き直した例直したポイント
夜間不穏。2:10、廊下に出て「トイレはどこ」と話された。トイレへ案内し排尿あり。2:25に居室へ戻り、2:40の巡視で入眠を確認した。「不穏」を、見た様子・言葉・対応に置き換えた
良眠。22時、0時、2時、4時の巡視で入眠を確認。4時にパッド交換、排尿中等量。何時に何を確かめたかを書いた
眠れない様子。1:00、ベッドに座って起きていた。「目がさえて眠れない」と話された。温かいお茶100mlを飲まれ、1:40の巡視で入眠を確認した。本人の言葉、行った対応、入眠を確かめた時刻を書いた

13. 痛みや不調の訴え

よくない例書き直した例直したポイント
腰痛の訴えあり。11:00、「朝から腰が痛い。立つときがつらい」と話された。立ち上がる際に腰に手を当て、顔をしかめていた。11:10、看護師に報告した。本人の言葉、いつから、どの動作でつらいか、報告を書いた
訴え多い。午前中に3回(9:30、10:15、11:00)、「息子はいつ来るの」と職員に尋ねられた。そのつど「今週の土曜日に来られます」と伝えると、うなずかれた。回数と時刻、言葉、職員の返し方と本人の反応を書いた

14. 帰りたい気持ち・落ち着かない様子

よくない例書き直した例直したポイント
帰宅願望強い。16:00、玄関の前に立ち「家に帰って夕飯を作らないと」と話された。職員が隣に座って家のことを尋ねると、10分ほど料理の話をされ、16:20に居間へ戻られた。本人の言葉、職員のかかわり方、どう落ち着いたかを書いた
暴言あり。16:30、おむつ交換の声をかけた際、「触るな、あっちへ行け」と大きな声で話された。5分後に別の職員が声をかけると交換に応じられた。実際の言葉を「」で書き、その前後の状況を書いた

「帰宅願望」「暴言」「不穏」は、職員同士では通じても、家族が読むと受け取り方が変わる言葉です。言葉と場面をそのまま書けば、次の勤務の人が同じかかわり方を試せます。

15. レクリエーション・活動

よくない例書き直した例直したポイント
レク参加。楽しそうだった。14:00〜14:40、風船バレーに参加。座ったまま両手で10回以上打ち返し、「若いころはバレー部だった」と笑顔で話された。何に、どれくらい参加し、どんな言葉や表情だったかを書いた
レク不参加。14:00、書道レクに声をかけると「字が下手だから見るだけにする」と話された。席に座って、ほかの人の作品を見ていた。本人の言葉と、参加しなかった間に何をしていたかを書いた

レクの記録は、その人の好きなことや昔の話が出やすい場面です。本人の言葉を残しておくと、会話のきっかけやケアプランの見直しの材料になります。

16. 面会・家族とのやりとり

よくない例書き直した例直したポイント
家族面会あり。15:00〜15:40、長女が面会。一緒にお茶を飲み、写真を見ながら話された。帰られたあと「娘が来てくれてうれしかった」と話された。誰が、何分、何をしたか、面会後の本人の言葉を書いた
家族より要望あり。15:40、長女より「最近あまり食べていないと聞いたので、好きなプリンを持ってきた。食べさせてほしい」と話があった。預かり、看護師と相談員に伝えた。家族の言葉、預かったもの、伝えた相手を書いた

例文を書き写すときによくある失敗

表の「書き直した例」は長く感じるかもしれません。ただ、増えたのはほとんどが時刻と数字と本人の言葉で、飾りの言葉は増えていません。

書き写すときにつまずきやすいのは、次の4つです。

  • 例文の数値をそのまま残してしまう。「3割」「37.8℃」は見本なので、その日に見た値に置き換えます
  • 気づきを事実の文に混ぜる。考えたことには「〜と思われる」をつけ、別の文にします
  • 医療的な判断を書く。「〇〇の疑い」「〇〇だと思う」とは書かず、数値と様子と報告を書きます
  • 事業所の決まりより例文を優先する。敬語の使い方や略語の扱いは、事業所の書式に合わせます

よくない例に出てくる言葉は、たいてい悪気なく使われています。この言葉を読んだ家族や看護師に同じ場面が浮かぶかと一度読み返すだけで、多くは自分で直せます。

よくない言葉と、置き換える中身の早見表

16場面の「よくない例」に出てきた言葉を、何に置き換えるかでまとめました。

よくない言葉何に置き換えるか
特変なし・問題なし何を見て変わりなしとしたか(量、数値、表情、皮膚)
様子見・注意次にいつ、何を見るか。誰に報告したか
拒否本人の言葉、声かけの回数、代わりに行ったこと
不穏・落ち着かない見た動作、本人の言葉、職員の対応
暴言・わがまま実際の言葉を「」で、その前後の状況
帰宅願望本人の言葉と、職員のかかわり方
食欲なし・少ない品目ごとの割合、本人の言葉
高め・低め・発熱数値、測った条件、報告
ふらつき・不安定どの動作で、どうなり、誰が支えたか
させた行った介助の言葉(案内した、交換した、介助した)
楽しそう・機嫌が悪い表情、動作、本人の言葉

アプリで書くと、あいまいな言葉に目安が出る

exbk.jp の介護記録のアプリ(無料・登録なしで使える)は、この記事の例文と同じ考え方で作った です。1件の記録を「見たこと・聞いたこと(事実)」「気づき・判断」「対応・その後」の3つの欄に分けて書き、体温・血圧・脈拍も同じ画面に入れられます。日ごとに印刷もできます。

介護記録のアプリの画面。左に1日の記録の一覧、右に記録を書く欄があり、「特変なし」などの記録に「言葉の点検」の印がついている(見本データ)
介護記録のアプリの画面。左に1日の記録の一覧、右に記録を書く欄があり、「特変なし」などの記録に「言葉の点検」の印がついている(見本データ)

この記事を書く途中で、本番の画面を開いて表示を確かめました。見本データに入っている「特変なし。」の記録には「言葉の点検 1」、「入浴を拒否されたため、様子見とした。」の記録には「言葉の点検 2」の印がついていました。この記事の「よくない例」にあたる書き方に、書き直しの目安が出る作りです。

ただし、点検は言葉が含まれているかどうかで目安を出す仕組みで、文の意味までは読みません。印がついたら、書いた人が読み返して判断してください。画面の利用者や記録は、すべて見本データです。

記録の書式を、現場でアプリにする

どの言葉を点検の対象にするか、どの場面でどう書くと伝わるかは、事業所ごとに少しずつ違います。それをいちばんよく知っているのは、毎日記録を書いている職員です。

介護記録のアプリは で作りました。事業所の記録の決まりや、ケアプランの見直しに使いたい項目を、職員が自分でアプリの形にできるように、介護の現場向けの Claude Code 研修を行っています。記録のほかにも、介護の現場向けのアプリを介護アプリの一覧にまとめています。

まとめ

  • 16場面のどれも、直し方は「時刻と量を数字で」「本人の言葉を『』で」「あいまいな言葉を見たことに」「報告先と次に見ることを」の4つ
  • 体調の変化は、原因や病名を書かず、数値と本人の言葉と看護師への報告を書く
  • 「特変なし」「拒否」「不穏」などは、早見表の中身に置き換える
  • 例文の数値は見本なので、その日に見た値に置き換え、事業所の決まりを優先する

例文を配るだけでなく、記録の書式そのものを現場で整えたいときは、Claude Code 研修の内容をご覧ください。