掘って出た土をどこへ持っていくか。現場では昔から当たり前にやってきた仕事ですが、この数年で書類の決まりがはっきり変わりました。
この記事は、残土の処分先をさがして手配する現場担当の方に向けて、建設発生土が廃棄物とどう違うのか、受入先をどう確かめるのか、何をいつまで残すのかを、官公庁の資料で確かめられた範囲だけで整理します。
先に結論:残土は産業廃棄物ではないが、確認と5年保存が要る
最初に全体像を出します。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 廃棄物処理法上の扱い | 土砂は廃棄物から除かれている。産業廃棄物ではない |
| マニフェスト | 対象外。代わりに土砂受領書で搬出先を確かめる |
| 根拠になる法律 | 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法) |
| 計画を作る工事 | 搬出する土砂が500m³以上 |
| 保存 | 計画と実施状況の記録、受領書の写しを工事完成後5年間 |
| 搬出前 | 搬出先が盛土規制法の許可地かどうかなどを確認し、現場に掲示 |
| 搬出後 | 受領書で確認。令和6年6月1日からは最終搬出先まで |
紙の上の手続きはこのとおりですが、現場で実際に増える仕事は「いつ・何を・何台・どこへ出したか」を1行ずつ残すことです。exbk.jp の残土・産廃の搬出記録(無料・登録なしで使える)は、その1行を入れると種類別と運搬先別の月合計まで出すようにしてあります。

残土と産業廃棄物の線引き
土砂は廃棄物から除かれている
環境省の建設廃棄物処理指針は、用語の定義のところで土砂の扱いをはっきり書いています。
「廃棄物」とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいう。ただし、土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの、港湾、河川等のしゅんせつに伴なって生ずる土砂その他これに類するものは廃棄物処理法の対象となる廃棄物から除外されている。
だから残土の搬出に産業廃棄物のマニフェストは要りません。処理業の許可を受けた業者に委託する、という話にもなりません。産業廃棄物のほうの手続きは産業廃棄物のマニフェストの記事にまとめてあるので、コンクリート塊や混合廃棄物と一緒に出す現場はそちらもあわせて見てください。
泥状のものは建設汚泥になる
やっかいなのは、土と汚泥の境目です。同じ指針は、掘削工事に伴って出たもののうち、含水率が高く粒子が微細な泥状のものを無機性汚泥、つまり建設汚泥として扱うとしています。汚泥は産業廃棄物なので、こちらはマニフェストの対象です。
泥状かどうかの目安も書かれています。
泥状の状態とは、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、また、その上を人が歩けない状態をいい、この状態を土の強度を示す指標でいえば、コーン指数がおおむね200kN/㎡以下又は一軸圧縮強度がおおむね50kN/㎡以下である。
粒径74マイクロメートルを超える粒子をおおむね95%以上含む掘削物については、ずり分離などをして泥状でなく流動性を示さなくなり、生活環境の保全上支障がないものは土砂として扱うことができる、とされています。逆に、積み込んだときは泥状でなくても運搬中の練り返しで泥状になるものは汚泥として扱う必要がある、とも書かれています。
現場で判断に迷ったら、勝手に土砂として出さず、発注者や所管の自治体に相談してください。ここを間違えると、産業廃棄物を無許可で運んだ話になります。
廃棄物が混じった土
木くずやガラが混じった土は、分別して、混じっていたものを廃棄物として処理します。国土交通省の資料でも、建設工事から発生する土を「廃棄物」「廃棄物を分別した土」「廃棄物混じり土」に分けて図示しています。分別した後の土は、他工事での利用や残土処理場へ、という流れです。
建設発生土を管理する法律は資源有効利用促進法
指定副産物という位置づけ
残土は廃棄物ではない。ではどの法律で管理するのか。答えは資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)です。この法律の第11章が指定副産物で、第60条は、主務大臣が指定副産物にかかる再生資源の利用を促進するため、主務省令で判断の基準となるべき事項を定める、としています。第61条で指導と助言、第62条で勧告と命令ができる、という組み立てです。
つまり「捨てるものの処理」ではなく「使える資源を使い切らせる」という筋の法律で、そこに搬出先を明らかにさせる仕組みが後から足されました。
2021年の土石流のあとに強化された
国土交通省の資料は、令和3年7月に静岡県熱海市で起きた土石流を挙げて、不法盛土を防ぐために計画制度を強化したと説明しています。実際の改正は二段構えでした。
| 施行 | 主な内容 |
|---|---|
| 令和5年1月1日 | 計画の作成対象を搬出土砂1,000m³以上から500m³以上へ拡大。保存を1年から5年へ延長。発注者への説明と現場掲示を義務化 |
| 令和5年5月26日 | 搬出先の盛土規制法の許可等の事前確認、搬出後の土砂受領書等の確認、土壌汚染対策法の手続確認を義務化。ストックヤード運営事業者の登録制度を創設 |
| 令和6年6月1日 | 最終搬出先までの確認を義務化 |
勧告と命令の対象になる事業者の範囲も、年間施工金額50億円以上から25億円以上へ下げられました。
計画を作る工事の規模
搬出側の指定副産物省令で計画の対象になるのは、建設発生土が500m³以上、コンクリート塊とアスファルト・コンクリート塊が合計200t以上、それに建設発生木材です。搬入側の再生資源省令では、土砂500m³以上、砕石500t以上、加熱アスファルト混合物200t以上が対象です。500m³は、1台2.5m³で数えるなら200台分。道路の改良工事なら珍しい量ではありません。
元請がやることは、計画を作って速やかに発注者へ提出して説明する、現場の見やすい場所に掲示する(デジタルサイネージやインターネットでの公表は努力義務)、変更があれば作り直して報告する、完成後は実施状況を記録し、請求があれば発注者へ報告する、そして計画と実施状況を工事完成後5年間保存する、です。
この手の「決まった様式に、決まった項目を埋めて残す」仕事は、自社の様式に合わせた入力画面があるだけでずいぶん楽になります。社員が自分でその画面を作れるようになる建設業向けの Claude Code 研修では、作業日報や写真台帳と同じように、こうした管理表をアプリにする回を置いています。
受入先の確かめ方
搬出の前:許可地かどうかを確かめる
元請は事前に、その搬出先が盛土規制法の許可を受けた場所かどうかなどを確かめ、結果を確認結果票にまとめて、再生資源利用促進計画の添付資料として現場に掲示します。
盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の第12条第1項は、こう定めています。
宅地造成等工事規制区域内において行われる宅地造成等に関する工事については、工事主は、当該工事に着手する前に、主務省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
国土交通省が公開している確認結果票の様式では、確認結果の区分として、盛土許可等、公共施設用地等、規制未指定といった欄が並び、許可番号や管理機関名を書くようになっています。採石法の認可や、都道府県の条例に基づく許可も書き込める形です。
あわせて、工事現場の側の土壌汚染対策法の手続状況も発注者に確かめ、同じように掲示します。
搬出の後:受領書をもらう
運んだあとは、搬出先に受領書の交付を求めて、実際にそこへ入ったことを確かめます。受領書の写しは5年間保存します。
令和6年6月1日からは、搬出先からさらに別の場所へ運ばれた場合に、最終搬出先まで確認した書面を作って5年間保存することも求められています。ただし、次の搬出先へ出した場合は、そこから先の確認は不要とされています。
- 国または地方公共団体が管理する場所
- 他の工事で利用する場合の、その建設工事の現場等
- ストックヤードのうち、国土交通大臣の登録を受けた場所
3つ目の登録ストックヤードは、このときに新しく作られた制度です。登録した事業者は、年間の搬出入先を報告することになっています。受入先をさがす段階で登録の有無を聞いておくと、後の書類が一段減ります。
契約の段階で決まってしまうこと
搬出先は、現場が始まってからさがすものとは限りません。公共工事標準請負契約約款は令和4年に改正され、工事現場から建設発生土を搬出する予定がある場合は「建設発生土の搬出先については仕様書に定めるとおり」と記入し、仕様書に搬出先の名称と所在地を定める、という注記が入りました。民間建設工事標準請負契約約款(甲)にも同じ趣旨の注記があります。
処分費の見積りも、省令の中で元請と下請が契約に際して運搬費その他の処理経費を適切に見積もるよう努める、と書かれました。現場で受入先が変わって費用が増えた、という話を後から持ち出さずに済むよう、契約の前に押さえておくところです。
現場で残すもの一覧
ここまでの決まりを、現場側の作業に置き換えるとこうなります。
| 時期 | 残すもの | 保存 |
|---|---|---|
| 着工前 | 再生資源利用促進計画(500m³以上) | 完成後5年 |
| 着工前 | 搬出先の確認結果票(盛土規制法の許可等、土壌汚染対策法の手続) | 計画の添付資料として掲示・保存 |
| 工事中 | 現場掲示(計画と確認結果票) | 掲示 |
| 搬出のたび | 日付・種類・車両・台数・運搬先の記録 | 実施状況の記録のもと |
| 搬出の後 | 土砂受領書の写し | 5年 |
| 令和6年6月以降 | 最終搬出先まで確認した書面 | 5年 |
| 完成後 | 実施状況の記録、発注者からの請求があれば報告 | 5年 |
このうち、いちばん抜けやすいのは真ん中の「搬出のたび」です。計画も受領書も紙で綴じれば終わりますが、台数だけは毎日発生して、誰かが数えて控えないと後から作れません。
搬出の記録を1行ずつ残す
記録する項目
残土・産廃の搬出記録のアプリでは、1回の搬出を1行で入れます。日付、種類(残土、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材、建設汚泥、金属くず、廃プラスチック類、混合廃棄物、その他)、車両、台数、1台あたりの量、単位(m³・t・台)、運搬先、マニフェスト番号とメモ。数量は台数×1台あたりの量で出ます。
月を選ぶと、種類別と運搬先別の合計が出ます。運搬先別の合計は、計画に書いた搬出先ごとの量と突き合わせるときにそのまま使えます。表示月をCSV(表計算ソフトで開けるファイル)で書き出せるので、報告の様式へ写すのも手作業より早いはずです。画面の使い方は搬出管理表のアプリの紹介に詳しく書きました。
アプリはあくまで現場の集計用です。計画の作成、確認結果票、受領書の保存は、この記録とは別に行ってください。マニフェスト番号の欄があるので勘違いしやすいところですが、番号を控えるだけの欄です。
始める前に現場で決める2つ
ひとつは1台あたりの換算値です。4tダンプを何m³で数えるか。これを現場で決めておかないと、月末の合計が人によって変わります。
もうひとつは運搬先の書き方です。「〇〇町 残土仮置き場」と「〇〇町仮置き場」のように書き分けると、集計では別の運搬先として2行に割れます。計画に書いた名称と同じ書き方に統一しておくと、突き合わせが楽です。
AIに月次の報告メモを下書きさせてみた
この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本データを渡して、発注者向けの月次の報告メモを下書きさせました。渡したのは「残土 9月合計 137.5m³、うち〇〇町仮置き場 100m³、△△工事へ流用 37.5m³、受領書8枚受領」という架空の数字だけです。返ってきたのがこれです。
9月の建設発生土の搬出は合計137.5m³でした。内訳は〇〇町仮置き場へ100m³、△△工事への流用が37.5m³です。搬出先からの受領書は8枚を受領し、写しを保管しています。搬出先の変更はありません。
数字を並べ替えて文にするところまでは任せられます。一方で、受領書が本当に8枚そろっているか、その8枚が台数と合っているかは、AIには確かめようがありません。AIは、手元にない事実をもっともらしく補って書くこと()があります。数を合わせる作業は人の側に残ります。
だから順番としては、台数を記録して合計を機械で出し、その合計を文にするところだけAIに渡す、という切り分けが現実的です。 のような道具をどこに置くかの考え方は、建設業のAI活用で11の書類について試した結果とあわせて書いています。
よくある失敗
残土だからマニフェストが要ると思い込む
要りません。ただし建設汚泥は産業廃棄物なので必要です。同じ現場から出るのに扱いが違うので、種類の欄を最初に正しく選ぶことが、そのまま後の書類の分かれ道になります。
500m³をぎりぎり下回るつもりで数えていない
計画の対象は搬出する土砂の量で決まります。途中で数量が増えたときに「そういえば計画を作っていない」となりがちです。台数の記録を毎日つけていれば、月の途中で500m³に近づいたことに気づけます。
受領書をもらい忘れる
運転手が置いてきた、現場に戻る頃には誰も覚えていない、という抜け方をします。搬出の記録のメモ欄に受領書の受け取りを書いておくと、月末に照らし合わせられます。
搬出先の名前が書類ごとに違う
計画、確認結果票、受領書、集計表で名称がばらばらだと、5年後に見返したときに同じ場所かどうか分かりません。契約時に仕様書で定めた名称に全部そろえるのが無難です。
自社の様式に合わせるなら
残土の管理表は、会社ごと、元請ごとに列が違います。搬出先の登録番号の欄が要る会社もあれば、日ごとの累計を出したい会社もあります。建設業の現場アプリ一覧にあるものをそのまま使ってもいいですし、足りなければ自分たちで作る手もあります。
EX BANK の現場アプリは で作りました。日本語で「この列を足して」と伝えると画面が変わる、という作り方です。建設業向けの Claude Code 研修は、現場監督や工務、事務の方が2時間×5回でこの作り方を身につける内容で、最終回は自社の業務でアプリを作る演習です。DXという言葉から先に入らず、目の前の表1枚から始める考え方は建設DXの始め方にまとめました。
まとめ
- 建設発生土は土砂として廃棄物処理法の対象から除かれており、産業廃棄物ではない。マニフェストは要らない
- 掘削で出た泥状のものは建設汚泥として産業廃棄物に当たる。ダンプに山積みできず人が歩けない状態が目安
- 管理の根拠は資源有効利用促進法。搬出土砂500m³以上の工事は再生資源利用促進計画を作り、発注者へ説明し、現場に掲示し、5年間保存する
- 搬出先は事前に盛土規制法の許可等を確かめて掲示し、搬出後は受領書で確かめる。令和6年6月1日からは最終搬出先まで
- 現場で毎日増えるのは台数の記録だけ。ここを1行ずつ残せば、計画との突き合わせも報告も後から作れる
搬出の記録は残土・産廃の搬出記録のアプリで今日から始められます。自社の様式に合わせたものが欲しくなったら、社員が自分でアプリを作れるようになる建設業向けの Claude Code 研修をのぞいてみてください。
