意味が決められている言葉
第18条第1項は、いくつかの言葉について意義を定め、その意義に即して使うよう求めています。こちらは、定義に当てはまるかどうかだけの話です。
| 言葉 | 条文で定められた意義 |
|---|---|
| 新築 | 建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの |
| 新発売 | 新たに造成された宅地、新築の住宅、一棟リノベーションマンションについて、一般消費者に対し初めて購入の申込みの勧誘を行うこと(数期に分けて販売する場合は期ごとの勧誘) |
| ダイニング・キッチン(DK) | 台所と食堂の機能が1室に併存している部屋で、居室(寝室)数に応じ、その用途に使うために必要な広さ・形状・機能を有するもの |
| リビング・ダイニング・キッチン(LDK) | 居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋で、同じく必要な広さ・形状・機能を有するもの |
完成から1年を過ぎた未入居の物件を「新築」と書けない点は、よく知られている割に取り違えが起きます。表記を「未入居」「築後1年(未入居)」に切り替える判断は、竣工日から1年後です。台帳の竣工日を見れば機械的に決まるので、
契約更新の管理と同じように、日付で切り替わる項目として持っておくと取り違えが減ります。
数え方が決められている表示
徒歩の分数は、感覚で書くと事故になります。施行規則第9条は次のように定めています。
> 徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること。
同じ条文には、起点と着点の決め方も書かれています。道路距離を出すときの物件側の起点は、物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点で、マンションとアパートでは建物の出入口です。着点は、その施設の出入口です。
| 項目 | 決まり |
|---|---|
| 徒歩 | 道路距離80mにつき1分。1分未満の端数は1分として算出 |
| 自動車 | 道路距離を明示して、走行に通常要する時間を表示。有料道路を含むときはその旨を明示 |
| 自転車 | 道路距離を明示して、走行に通常要する時間を表示 |
| 面積 | メートル法で表示。1平方メートル未満は切り捨てて表示できる |
| 畳数 | 畳1枚あたり1.62平方メートル以上の広さという意味で用いる |
道路距離650mなら、650÷80で8.125、端数を切り上げて徒歩9分です。直線距離で測った数字を使うと短く出るので、地図の計測は道なりで行います。
物件台帳の距離から分数を出す計算は、毎回電卓を叩くより仕組みに任せたほうが確実です。先ほどの
物件紹介文の下書きでは、道路距離から分数を計算し、「徒歩の分数は、道路距離80mを1分として計算し、1分未満は切り上げています」という注記を本文に入れた状態でひな形が出ます。
出してはいけない広告そのもの
言葉づかい以前に、掲載自体が禁じられている広告があります。
おとり広告
表示規約第21条は、次の3つを禁止しています。
> (1) 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
> (2) 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
> (3) 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示
実務で起きやすいのは3つ目です。成約した部屋の掲載を下げ忘れる、反響を集めるために条件のよい部屋を残しておく。どちらも「取引する意思がない物件の表示」に近づきます。成約や募集停止の連絡が入った日に掲載を下げる、という運用の決めごとのほうが、文章の推敲より効きます。
不当な二重価格表示
第20条は、実際に販売する価格に、それより高い価格を併記する表示について、事実に相違する表示や、実際のものより有利だと誤認されるおそれのある表示を禁止しています。
過去の販売価格を比較対照価格に使う場合の条件は、施行規則第12条にあります。要件の全てに適合し、かつ実際にその期間その価格で販売していたことを資料で客観的に明らかにできる場合を除いて、不当な二重価格表示に当たるという書き方です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 明示 | 過去の販売価格の公表日と、値下げした日を明示する |
| 比較対照価格 | 値下げの直前の価格で、値下げ前2か月以上にわたり実際に販売のため公表していた価格 |
| 期間 | 値下げの日から6か月以内に表示する |
| 同一性 | 公表日から二重価格表示を実施する日まで、物件の価値に同一性が認められる |
| 対象 | 土地(現況有姿分譲地を除く)または建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く) |
他社と比べる書き方にも決まりがあります。第22条は、実証されていない事項を挙げて比較する表示、重要でない事項を重要であるかのように強調する表示、競争事業者を誹謗し中傷する表示を禁止しています。
を出すなら、比べた根拠を手元に置いてからにしてください。
表示規約のほかに効いてくる法律
表示規約は業界団体の決まりですが、その背後に法律があります。
| 法律 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 宅地建物取引業法 | 第32条 | 誇大広告等の禁止。所在・規模・形質、現在や将来の利用の制限、環境や交通その他の利便、代金や賃借の対価の額や支払方法などについて、著しく事実に相違する表示、実際のものより著しく優良または有利と人を誤認させる表示をしてはならない |
| 宅地建物取引業法 | 第33条 | 広告の開始時期の制限。造成や建築の工事の完了前は、必要な許可や確認の処分があった後でなければ、その物件の広告をしてはならない |
| 宅地建物取引業法 | 第34条 | 取引態様の明示。自ら当事者か、代理か、媒介かの別を明示しなければならない |
| 景品表示法 | 第5条第1号 | 実際のものより著しく優良であると示す表示などの禁止(優良誤認) |
| 景品表示法 | 第5条第2号 | 実際のものより取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示の禁止(有利誤認) |
景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。違反があったときの行政の手当ては
などで、言葉の言い換えで済む話ではなくなります。
工事完了前の広告を止める第33条は、売買の新築案件で効いてきます。許可や確認の処分が出た日を台帳に持っておくと、営業担当が判断に迷いません。反響の受け方や重要事項説明の準備まで含めた流れは、
賃貸の重要事項説明の記事にまとめています。
紹介文を出す前の確認リスト
ここまでの条文を、そのまま順番に点検できる形にしました。社内で使うなら、この並びのまま表計算ソフトに写しても使えます。
| # | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 取引態様(売主・貸主・代理・媒介)を書いたか | 宅建業法 第34条、施行規則 第9条(1) |
| 2 | 所在地を、都道府県から町または字まで書いたか | 施行規則 第9条(2) |
| 3 | 最寄駅等の名称と、そこまでの徒歩所要時間を書いたか | 施行規則 第9条(3) |
| 4 | 徒歩の分数を、道路距離80mにつき1分・端数切り上げで出したか | 施行規則 第9条(9) |
| 5 | 面積をメートル法で書き、畳数は1.62平方メートル以上の意味で使ったか | 施行規則 第9条(13)(16) |
| 6 | 「新築」を、完成後1年未満かつ未入居の物件にだけ使ったか | 規約 第18条第1項(1) |
| 7 | 「最高」「格安」「完全」「日本一」「特選」「完売」の類を使っていないか。使うなら根拠の資料と事実の併記があるか | 規約 第18条第2項 |
| 8 | 成約済み・募集停止の部屋が残っていないか | 規約 第21条 |
| 9 | 値下げ前の価格を併記するなら、公表日・値下げ日・2か月・6か月の要件を満たすか | 施行規則 第12条 |
| 10 | 工事完了前の物件なら、許可や確認の処分が出ているか | 宅建業法 第33条 |
この10項目を、担当者の記憶に預けるか、書式に持たせるかで、事故の起きやすさが変わります。紙のチェックシートでも効果はあります。ただ、紹介文を書く画面の隣に置いたほうが、見る回数は増えます。
現場の点検表をアプリにする作業は、外注しなくても社内でできます。
不動産会社向けの Claude Code 研修は、物件台帳、反響追客、契約更新、入金確認、退去立会い、修繕履歴といった事務所の実務書類を題材に、日本語で指示してアプリを作るワークショップです。対象は賃貸管理・売買仲介の営業担当や事務員で、Zoomのライブで行います。
見本データで下書きを作らせた結果
この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本データを渡して紹介文の下書きを作らせました。渡したのは架空の賃貸物件の情報です。
> 物件名:【サンプル】サンプルハイツ/部屋:103号室/1K・25.5㎡/軽量鉄骨造 2階建・2012年3月築/賃料57,000円・管理費3,000円/最寄り:サンプル線 サンプル駅まで道路距離 約650m/特徴:南向きのバルコニー、2029年8月に居室の壁紙を張り替え、洗濯機置き場は室内
出てきた下書きの一部が、これです。
> 【サンプル】サンプルハイツ 103号室のご紹介です。サンプル線 サンプル駅 徒歩9分(道路距離 約650m)。軽量鉄骨造 2階建、2012年3月築の1K(25.5㎡)です。賃料 57,000円/管理費・共益費 3,000円。南向きのバルコニー、2029年8月に居室の壁紙を張り替え、洗濯機置き場は室内。
徒歩9分は、650÷80=8.125を切り上げた数字で、合っていました。渡していない情報を書き足すこともありません。ここまでは悪くない出来です。
一方で、条件を変えて「魅力的に書いて」と付け足すと、「駅近で人気のエリア」「厳選された設備」といった言い回しが混ざってきました。「厳選」は第18条第2項第5号に挙がっている言葉です。生成AIは広告の決まりを守る前提で書いているわけではないので、下書きを作る道具として使い、対象語の点検は別に通す。この順番が安全です。AIを日々の業務にどう組み込むかは、
不動産業でのAIの使いどころにまとめています。
なお、紹介文の下書きに入居者や申込者の氏名・連絡先を書き込む必要はありません。外部のサービスに文章を貼り付けるときは、個人が特定できる情報を外してから渡してください。
よくある失敗
現場で起きがちな失敗を、起きる理由ごとに並べます。
| 失敗 | 起きる理由 | 手当て |
|---|---|---|
| 成約済みの部屋が載ったまま | 成約の連絡先と掲載の担当が別 | 成約連絡の当日に掲載を下げる担当を1人決める |
| 徒歩分数が地図アプリの数字 | 直線距離や実測時間をそのまま転記 | 道路距離を出してから80mで割る |
| ポータルサイトと自社サイトで表記が違う | 元の台帳が2つある | 台帳を1つにし、紹介文は台帳から作る |
| 前任者の紹介文を使い回して対象語が残る | ひな形の出どころが古い | ひな形を年1回見直し、対象語の一覧と突き合わせる |
| 図面と紹介文で面積や築年が合わない | 転記が手作業 | 台帳の項目から自動で文にする |
どれも、文章力の問題ではありません。情報の出どころが複数あることと、確認の手順が人に紐づいていることが原因です。
内見時の確認リストと同じで、書式に持たせられる部分は書式に持たせたほうが、担当が変わっても同じ結果になります。
まとめ
- 不動産広告の言葉の決まりは、表示規約と、景品表示法第5条、宅地建物取引業法第32条から第34条で決まっています
- 「最高」「格安」「完全」「日本一」「特選」「完売」の類は、裏付ける資料を持っている場合を除いて使えません。第1号と第2号の言葉は、根拠となる事実の併記も必要です
- 「新築」は建築工事完了後1年未満かつ未入居、徒歩の分数は道路距離80mにつき1分で端数は切り上げ、と意味や数え方が決まっている表示があります
- 成約済みの部屋を残すことは、取引する意思がない物件の表示に近づきます。掲載を下げる手順を先に決めてください
- 紹介文の点検は、担当者の記憶ではなく書式に持たせると、人が変わっても同じ結果になります
紹介文の下書きと対象語の点検は、
物件紹介文の下書きで試せます。無料で、登録なしで使えます。このアプリは
で作りました。
自社の物件台帳や社内の決まりに沿った点検表は、それを毎日使っている人が作るのがいちばん早く直せます。
不動産会社向けの Claude Code 研修では、その作り方を実務の書類を題材に扱っています。