物件の紹介文を書いていて、「この書き方は大丈夫だったか」と手が止まることがあります。決まりを知らないから止まるわけでもありません。どの言葉がどの条文に引っかかるのかが、手元にまとまっていないだけです。

不動産広告の言葉の決まりは、業界団体の表示規約と、景品表示法、宅地建物取引業法の三つに分かれています。この記事では、条文で確かめた対象語を一覧にして、言い換えの見本と、紹介文を出す前の確認リストまでをまとめます。

例文はすべて書き方の見本です。実在の物件や会社の話ではありません。

先に結論:気をつける言葉は4つの型に分かれる

紹介文で引っかかりやすい言葉は、理由ごとに4つに分けられます。理由が違えば、直し方も違います。

型例根拠直し方
根拠の資料がないと使えない言葉「最高」「格安」「完全」「日本一」「特選」「完売」表示規約 第18条第2項資料と事実を併記できないなら削る
意味が決められている言葉「新築」「新発売」「DK」「LDK」表示規約 第18条第1項定義に当てはまるときだけ使う
数え方が決められている表示徒歩の分数、面積、畳数表示規約施行規則 第9条決められた計算で出し直す
出してはいけない広告そのものおとり広告、不当な二重価格表示表示規約 第21条・第20条掲載をやめる、根拠を整える

このうち、担当者が毎日いちばん迷うのは1つ目です。「日当たり良好」は書けるのに「日当たり最高」は引っかかる、という線引きが感覚では覚えにくいからです。

紹介文を書きながら点検したいときは、exbk.jp の物件紹介文の下書き(無料・登録なしで使えます)が使えます。物件台帳の部屋を選ぶとひな形ができ、書き足した文に広告で根拠なく使えない言葉が入っていると知らせます。

物件紹介文の下書きアプリの画面。見本データの賃貸物件から紹介文のひな形を作ったところ
物件紹介文の下書きアプリの画面。見本データの賃貸物件から紹介文のひな形を作ったところ

こうした点検の道具は、外から買わなくても社内で作れます。社員が自分の担当業務のアプリを作れるようになる不動産会社向けの Claude Code 研修では、物件台帳や契約更新の管理とあわせて、この種の書類仕事を題材にしています。

根拠の資料がないと使えない言葉

表示規約第18条第2項は、次のように定めています。

事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。この場合において、第1号及び第2号に定める用語については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用することができる。

条文は「資料がないなら使うな」と書いています。例として並んでいる言葉を、6つの号ごとに整理します。

号どんな言葉か条文に例として挙がっている語
第1号最上級を意味する言葉(根拠の資料と事実の併記が必要)「最高」「最高級」「極」「特級」
第2号著しく安いという印象を与える言葉「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」
第3号全く欠けるところがない、全く手落ちがないことを意味する言葉「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」
第4号競争事業者より優位に立つことを意味する言葉(根拠の資料が必要)「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」
第5号一定の基準で選別されたことを意味する言葉「特選」「厳選」
第6号著しく人気が高く売行きがよいという印象を与える言葉「完売」

条文には「これらの用語に類する用語」も含むと書かれているので、一覧に載っていない言い回しでも、同じ意味なら同じ扱いになります。「当社イチオシ」や「他にはない間取り」は一覧にありませんが、第4号や第5号と同じことを言っています。

言い換えの見本

言い換えは、印象の言葉を事実の言葉に置き換える作業です。以下は書き方の見本で、条文が示している言い換えではありません。

使いにくい書き方言い換えの見本(根拠になる事実で書く)直したところ
駅近で最高の立地サンプル駅まで徒歩9分(道路距離 約650m)評価を、数えられる事実にした
格安の家賃賃料 57,000円/管理費・共益費 3,000円高い安いの判断を読み手に渡した
完全リフォーム済み2029年8月に居室の壁紙を張り替え、給湯器を交換「完全」の範囲を、工事の内容で示した
当社だけの特選物件当社が媒介する物件です(取引態様:媒介)優位の主張を、取引の立場の表示にした
日当たり抜群南向きのバルコニー、前面は幅員6mの道路感じ方の言葉を、向きと周囲の状況にした
厳選された設備独立洗面台、追い焚き機能付き浴室、室内洗濯機置き場選別をうたわず、設備名を並べた

置き換えたあとの文は、書き手からすると物足りなく見えます。ただ、部屋を探している人が知りたいのは、条件に合うかどうかの材料のほうです。

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意味が決められている言葉

第18条第1項は、いくつかの言葉について意義を定め、その意義に即して使うよう求めています。こちらは、定義に当てはまるかどうかだけの話です。

言葉条文で定められた意義
新築建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの
新発売新たに造成された宅地、新築の住宅、一棟リノベーションマンションについて、一般消費者に対し初めて購入の申込みの勧誘を行うこと(数期に分けて販売する場合は期ごとの勧誘)
ダイニング・キッチン(DK)台所と食堂の機能が1室に併存している部屋で、居室(寝室)数に応じ、その用途に使うために必要な広さ・形状・機能を有するもの
リビング・ダイニング・キッチン(LDK)居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋で、同じく必要な広さ・形状・機能を有するもの

完成から1年を過ぎた未入居の物件を「新築」と書けない点は、よく知られている割に取り違えが起きます。表記を「未入居」「築後1年(未入居)」に切り替える判断は、竣工日から1年後です。台帳の竣工日を見れば機械的に決まるので、契約更新の管理と同じように、日付で切り替わる項目として持っておくと取り違えが減ります。

数え方が決められている表示

徒歩の分数は、感覚で書くと事故になります。施行規則第9条は次のように定めています。

徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること。

同じ条文には、起点と着点の決め方も書かれています。道路距離を出すときの物件側の起点は、物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点で、マンションとアパートでは建物の出入口です。着点は、その施設の出入口です。

項目決まり
徒歩道路距離80mにつき1分。1分未満の端数は1分として算出
自動車道路距離を明示して、走行に通常要する時間を表示。有料道路を含むときはその旨を明示
自転車道路距離を明示して、走行に通常要する時間を表示
面積メートル法で表示。1平方メートル未満は切り捨てて表示できる
畳数畳1枚あたり1.62平方メートル以上の広さという意味で用いる

道路距離650mなら、650÷80で8.125、端数を切り上げて徒歩9分です。直線距離で測った数字を使うと短く出るので、地図の計測は道なりで行います。

物件台帳の距離から分数を出す計算は、毎回電卓を叩くより仕組みに任せたほうが確実です。先ほどの物件紹介文の下書きでは、道路距離から分数を計算し、「徒歩の分数は、道路距離80mを1分として計算し、1分未満は切り上げています」という注記を本文に入れた状態でひな形が出ます。

出してはいけない広告そのもの

言葉づかい以前に、掲載自体が禁じられている広告があります。

おとり広告

表示規約第21条は、次の3つを禁止しています。

(1) 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
(2) 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
(3) 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示

実務で起きやすいのは3つ目です。成約した部屋の掲載を下げ忘れる、反響を集めるために条件のよい部屋を残しておく。どちらも「取引する意思がない物件の表示」に近づきます。成約や募集停止の連絡が入った日に掲載を下げる、という運用の決めごとのほうが、文章の推敲より効きます。

不当な二重価格表示

第20条は、実際に販売する価格に、それより高い価格を併記する表示について、事実に相違する表示や、実際のものより有利だと誤認されるおそれのある表示を禁止しています。

過去の販売価格を比較対照価格に使う場合の条件は、施行規則第12条にあります。要件の全てに適合し、かつ実際にその期間その価格で販売していたことを資料で客観的に明らかにできる場合を除いて、不当な二重価格表示に当たるという書き方です。

要件内容
明示過去の販売価格の公表日と、値下げした日を明示する
比較対照価格値下げの直前の価格で、値下げ前2か月以上にわたり実際に販売のため公表していた価格
期間値下げの日から6か月以内に表示する
同一性公表日から二重価格表示を実施する日まで、物件の価値に同一性が認められる
対象土地(現況有姿分譲地を除く)または建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く)

他社と比べる書き方にも決まりがあります。第22条は、実証されていない事項を挙げて比較する表示、重要でない事項を重要であるかのように強調する表示、競争事業者を誹謗し中傷する表示を禁止しています。を出すなら、比べた根拠を手元に置いてからにしてください。

表示規約のほかに効いてくる法律

表示規約は業界団体の決まりですが、その背後に法律があります。

法律条文内容
宅地建物取引業法第32条誇大広告等の禁止。所在・規模・形質、現在や将来の利用の制限、環境や交通その他の利便、代金や賃借の対価の額や支払方法などについて、著しく事実に相違する表示、実際のものより著しく優良または有利と人を誤認させる表示をしてはならない
宅地建物取引業法第33条広告の開始時期の制限。造成や建築の工事の完了前は、必要な許可や確認の処分があった後でなければ、その物件の広告をしてはならない
宅地建物取引業法第34条取引態様の明示。自ら当事者か、代理か、媒介かの別を明示しなければならない
景品表示法第5条第1号実際のものより著しく優良であると示す表示などの禁止(優良誤認)
景品表示法第5条第2号実際のものより取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示の禁止(有利誤認)

景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。違反があったときの行政の手当てはなどで、言葉の言い換えで済む話ではなくなります。

工事完了前の広告を止める第33条は、売買の新築案件で効いてきます。許可や確認の処分が出た日を台帳に持っておくと、営業担当が判断に迷いません。反響の受け方や重要事項説明の準備まで含めた流れは、賃貸の重要事項説明の記事にまとめています。

紹介文を出す前の確認リスト

ここまでの条文を、そのまま順番に点検できる形にしました。社内で使うなら、この並びのまま表計算ソフトに写しても使えます。

#確認すること根拠
1取引態様(売主・貸主・代理・媒介)を書いたか宅建業法 第34条、施行規則 第9条(1)
2所在地を、都道府県から町または字まで書いたか施行規則 第9条(2)
3最寄駅等の名称と、そこまでの徒歩所要時間を書いたか施行規則 第9条(3)
4徒歩の分数を、道路距離80mにつき1分・端数切り上げで出したか施行規則 第9条(9)
5面積をメートル法で書き、畳数は1.62平方メートル以上の意味で使ったか施行規則 第9条(13)(16)
6「新築」を、完成後1年未満かつ未入居の物件にだけ使ったか規約 第18条第1項(1)
7「最高」「格安」「完全」「日本一」「特選」「完売」の類を使っていないか。使うなら根拠の資料と事実の併記があるか規約 第18条第2項
8成約済み・募集停止の部屋が残っていないか規約 第21条
9値下げ前の価格を併記するなら、公表日・値下げ日・2か月・6か月の要件を満たすか施行規則 第12条
10工事完了前の物件なら、許可や確認の処分が出ているか宅建業法 第33条

この10項目を、担当者の記憶に預けるか、書式に持たせるかで、事故の起きやすさが変わります。紙のチェックシートでも効果はあります。ただ、紹介文を書く画面の隣に置いたほうが、見る回数は増えます。

現場の点検表をアプリにする作業は、外注しなくても社内でできます。不動産会社向けの Claude Code 研修は、物件台帳、反響追客、契約更新、入金確認、退去立会い、修繕履歴といった事務所の実務書類を題材に、日本語で指示してアプリを作るワークショップです。対象は賃貸管理・売買仲介の営業担当や事務員で、Zoomのライブで行います。

見本データで下書きを作らせた結果

この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本データを渡して紹介文の下書きを作らせました。渡したのは架空の賃貸物件の情報です。

物件名:【サンプル】サンプルハイツ/部屋:103号室/1K・25.5㎡/軽量鉄骨造 2階建・2012年3月築/賃料57,000円・管理費3,000円/最寄り:サンプル線 サンプル駅まで道路距離 約650m/特徴:南向きのバルコニー、2029年8月に居室の壁紙を張り替え、洗濯機置き場は室内

出てきた下書きの一部が、これです。

【サンプル】サンプルハイツ 103号室のご紹介です。サンプル線 サンプル駅 徒歩9分(道路距離 約650m)。軽量鉄骨造 2階建、2012年3月築の1K(25.5㎡)です。賃料 57,000円/管理費・共益費 3,000円。南向きのバルコニー、2029年8月に居室の壁紙を張り替え、洗濯機置き場は室内。

徒歩9分は、650÷80=8.125を切り上げた数字で、合っていました。渡していない情報を書き足すこともありません。ここまでは悪くない出来です。

一方で、条件を変えて「魅力的に書いて」と付け足すと、「駅近で人気のエリア」「厳選された設備」といった言い回しが混ざってきました。「厳選」は第18条第2項第5号に挙がっている言葉です。生成AIは広告の決まりを守る前提で書いているわけではないので、下書きを作る道具として使い、対象語の点検は別に通す。この順番が安全です。AIを日々の業務にどう組み込むかは、不動産業でのAIの使いどころにまとめています。

なお、紹介文の下書きに入居者や申込者の氏名・連絡先を書き込む必要はありません。外部のサービスに文章を貼り付けるときは、個人が特定できる情報を外してから渡してください。

よくある失敗

現場で起きがちな失敗を、起きる理由ごとに並べます。

失敗起きる理由手当て
成約済みの部屋が載ったまま成約の連絡先と掲載の担当が別成約連絡の当日に掲載を下げる担当を1人決める
徒歩分数が地図アプリの数字直線距離や実測時間をそのまま転記道路距離を出してから80mで割る
ポータルサイトと自社サイトで表記が違う元の台帳が2つある台帳を1つにし、紹介文は台帳から作る
前任者の紹介文を使い回して対象語が残るひな形の出どころが古いひな形を年1回見直し、対象語の一覧と突き合わせる
図面と紹介文で面積や築年が合わない転記が手作業台帳の項目から自動で文にする

どれも、文章力の問題ではありません。情報の出どころが複数あることと、確認の手順が人に紐づいていることが原因です。内見時の確認リストと同じで、書式に持たせられる部分は書式に持たせたほうが、担当が変わっても同じ結果になります。

まとめ

  • 不動産広告の言葉の決まりは、表示規約と、景品表示法第5条、宅地建物取引業法第32条から第34条で決まっています
  • 「最高」「格安」「完全」「日本一」「特選」「完売」の類は、裏付ける資料を持っている場合を除いて使えません。第1号と第2号の言葉は、根拠となる事実の併記も必要です
  • 「新築」は建築工事完了後1年未満かつ未入居、徒歩の分数は道路距離80mにつき1分で端数は切り上げ、と意味や数え方が決まっている表示があります
  • 成約済みの部屋を残すことは、取引する意思がない物件の表示に近づきます。掲載を下げる手順を先に決めてください
  • 紹介文の点検は、担当者の記憶ではなく書式に持たせると、人が変わっても同じ結果になります

紹介文の下書きと対象語の点検は、物件紹介文の下書きで試せます。無料で、登録なしで使えます。このアプリは で作りました。

自社の物件台帳や社内の決まりに沿った点検表は、それを毎日使っている人が作るのがいちばん早く直せます。不動産会社向けの Claude Code 研修では、その作り方を実務の書類を題材に扱っています。