区分所有建物(分譲マンションの一室など)の事項
分譲マンションの一室を貸す場合は、第35条第1項第6号の事項が加わります。施行規則第16条の2は、建物の貸借では「第三号及び第八号」だけを求めています。
| 説明する事項 | 条文 | 準備で調べる資料 |
|---|---|---|
| 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め(案を含む) | 規則 第16条の2第3号 | 管理規約、使用細則 |
| 一棟の建物と敷地の管理を委託されている者の氏名(法人は商号・名称)と住所 | 規則 第16条の2第8号 | 管理会社からの資料 |
ペットの飼育や楽器の演奏、事務所としての使用などを管理規約で制限しているかは、ここで説明します。管理規約はオーナーが手元に持っていないこともあるので、早めに管理会社へ依頼しておくと安心です。
修繕積立金や管理費の額(第16条の2の第6号・第7号)は、建物の貸借では求められていません。売買の重説の区分所有の欄をそのまま流用すると、説明しなくてよい事項まで並ぶことになります。
災害と建物の調査についての事項
施行規則第16条の4の3の前半は、災害の区域と建物の調査の記録です。ここは市町村や都道府県の地図を見る作業が中心になります。
| 説明する事項 | 条文 | 準備で調べる資料 |
|---|---|---|
| 造成宅地防災区域内にあるか | 規則 第16条の4の3第1号 | 都道府県などの区域の指定の情報 |
| 土砂災害警戒区域内にあるか | 規則 第16条の4の3第2号 | 都道府県の土砂災害警戒区域の地図 |
| 津波災害警戒区域内にあるか | 規則 第16条の4の3第3号 | 都道府県の津波災害警戒区域の情報 |
| 水害ハザードマップでの物件の所在地 | 規則 第16条の4の3第3号の2 | 市町村の水害ハザードマップ |
| 石綿の使用の有無の調査結果が記録されているときは、その内容 | 規則 第16条の4の3第4号 | オーナーへの確認、調査の記録 |
| 耐震診断を受けているときは、その内容 | 規則 第16条の4の3第5号 | 耐震診断の結果の報告書 |
水害ハザードマップは「図面があれば所在地を示す」
第3号の2は、水防法施行規則第11条第1号により市町村長が提供する図面に物件の位置が表示されているとき、その図面での所在地を説明するものです。条文が求めているのは、図面のどこに物件があるかです。
市町村によっては図面が1枚とは限りません。どの図面を見たかを「確認に使った資料」に書いておくと、説明の場で迷いません。
石綿と耐震診断は「記録や診断があるとき」
第4号の石綿は、調査の結果が記録されているときに、その内容を説明します。調査をしていなければ、調査をすること自体は求められていません。とはいえ、記録があるかどうかはオーナーに聞かないとわからないので、聞いた日と答えを残します。
第5号の耐震診断は、昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した建物は除かれます。対象の建物でも、指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関、地方公共団体のいずれかが行った耐震診断を受けているときに、その内容を説明します。線を引く日は「工事に着手した日」です。登記事項証明書の新築年月日だけでは判断しきれないことがあります。
契約の条件についての事項
最後が、お金と契約の中身です。ここは法の第7号〜第11号と、施行規則第16条の4の3の後半が混ざっています。
| 説明する事項 | 条文 | 準備で調べる資料 |
|---|---|---|
| 借賃以外に授受される金銭(敷金・礼金など)の額と目的 | 法 第35条第1項第7号 | 募集条件、契約書の案 |
| 契約の解除に関する事項 | 法 第35条第1項第8号 | 契約書の案 |
| 損害賠償額の予定または違約金に関する事項 | 法 第35条第1項第9号 | 契約書の案 |
| 支払金・預り金の保全措置の有無と概要 | 法 第35条第1項第11号、規則 第16条の3 | 受け取る金銭の額と名目 |
| 台所・浴室・便所その他の設備の整備状況 | 規則 第16条の4の3第7号 | 設備表、現地の確認 |
| 契約期間と、契約の更新に関する事項 | 規則 第16条の4の3第8号 | 契約書の案 |
| 定期建物賃貸借・終身建物賃貸借のときは、その旨 | 規則 第16条の4の3第9号 | 契約書の案 |
| 用途その他の利用の制限に関する事項 | 規則 第16条の4の3第10号 | 契約書の案、使用細則 |
| 敷金など、契約終了時に精算する金銭の精算に関する事項 | 規則 第16条の4の3第11号 | 契約書の案 |
| 管理を委託されている者の氏名と住所(区分所有建物を除く) | 規則 第16条の4の3第12号 | 管理委託契約書 |
支払金・預り金は50万円未満なら対象外
第11号の支払金・預り金は、施行規則第16条の3で、借賃や権利金、敷金などの名目を問わず、業者が受け取る金銭と定められています。ただし、受け取る額が50万円未満のものや報酬などは除かれます。賃貸の仲介で業者が敷金や前家賃を預かる流れがあるなら、合計の額を確かめておきます。
定期建物賃貸借は「その旨」を説明する
第9号は、借地借家法第38条第1項の定期建物賃貸借や、高齢者の居住の安定確保に関する法律第52条第1項の終身建物賃貸借に当たるとき、その旨を説明するものです。普通の賃貸借か定期建物賃貸借かは、更新の有無に直結するので、契約書の案の表題と条項の両方で確かめます。
手付金や代金の貸借のあっせんは、建物の貸借では当たらない
第10号(手付金等の保全措置)は第41条・第41条の2の措置を指し、第12号は代金または交換差金の貸借のあっせんです。どちらも売買の代金に関わる事項なので、この一覧には入れていません。第13号(契約不適合責任の保証保険などの措置)は、条文の文面だけでは建物の貸借で必要かを確かめきれなかったため、一覧に入れていません。気になる場合は、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で確かめてください。
説明と書面の手続き
事項のほかに、説明のしかたにも決まりがあります。
| 手続き | 条文 |
|---|---|
| 契約が成立するまでに、宅地建物取引士が書面を交付して説明する | 法 第35条第1項 |
| 説明のときに、宅地建物取引士証を相手方に示す | 法 第35条第4項 |
| 交付する書面に、宅地建物取引士が記名する | 法 第35条第5項 |
| 書面を電子で渡すときは、相手方の承諾を得る | 法 第35条第8項、施行令 第3条の3 |
電子で渡す場合、施行令第3条の3で、あらかじめ提供に使う方法の種類と内容を示したうえで、書面または電子の方法で承諾を得ることになっています。承諾のあとで、相手方から電子では受け取らないと申し出があったときは、電子での提供はできません。施行規則第16条の4の8では、相手方が出力して書面にできることや、改変されていないかを確かめられる措置などが基準に挙がっています。
借りる人が宅地建物取引業者のときは、第35条第6項により、書面の交付は必要ですが、宅建士による説明は読み替えで外れます。記名は第7項で必要です。
オンラインで説明する方法(いわゆるIT重説)の細かい運用は、この記事では一次資料で確かめきれなかったので触れていません。行う場合は国土交通省の案内で最新の手順を確かめてください。
準備でよくある抜け
条文を並べてみると、抜けやすいのは次のような所でした。
| 抜けやすい所 | 理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 施行規則第16条の4の3の事項 | 法の条文だけを見て準備すると出てこない | 一覧を法と規則の両方から作っておく |
| 水害ハザードマップの種類 | 市町村によって図面が複数ある | 見た地図の名前を資料欄に書く |
| 石綿の調査記録の有無 | オーナーに聞かないとわからない | 聞いた日と答えをメモに残す |
| 管理規約の利用制限 | 管理会社から取り寄せるのに日数がかかる | 申込みの段階で依頼する |
| 「該当しない」の根拠 | 該当しないと判断した理由が残っていない | 何を見て該当しないとしたかを書く |
最後の「該当しない」の根拠は、説明のあとで一番困る所です。区域外だった、未完成ではない、区分所有ではない、といった判断にも、見た資料があります。
資料欄を必須にする、説明日の3日前に未着手が残っていたら色を変える、といった事務所ごとの決まりは、準備表をアプリにしてしまえば仕組みで守れます。社員がその形を自分で作れるようになるのが、
不動産向けの Claude Code 研修のねらいです。
準備の進め方:説明日から逆算する
準備は、取り寄せに時間がかかるものから始めると間に合います。見本の進め方を置いておきます。
> 見本(架空の物件):説明日の1週間前
> 登記事項証明書を取得する。管理会社に管理規約と使用細則を依頼する。オーナーに石綿の調査記録と耐震診断の有無、設備の状況を聞く。
> 見本(架空の物件):説明日の3日前
> 市町村の水害ハザードマップ、都道府県の土砂災害警戒区域と津波災害警戒区域の地図を見る。契約書の案から、契約期間、更新、解除、違約金、敷金の精算を写す。
> 見本(架空の物件):説明日の前日
> 未着手と調査中の事項が残っていないか、該当しないとした事項に根拠が書いてあるかを見直す。
アプリでは、この進み具合を数字で見られます。見本データでは、27のうち13が確認済みまたは該当しない、12が未着手、2が調査中で、説明日まで3日と表示されています。
重要事項説明の準備チェックの画面。見本データの架空の賃貸物件で、確認済み・該当しないが27のうち13、未着手12、調査中2、説明日まで3日と表示され、その下に物件と権利・法令の事項が並んでいる
重要事項説明の準備チェックは、ログインしないで使うと、入力した内容はその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。入居者やオーナーの個人情報を入れる前に、事務所の決まりを確かめてください。「済んでいない事項だけ」の表示と印刷もできるので、宅建士への引き継ぎの紙としても使えます。
生成AIに重説の項目を出させるときの注意
重説の項目出しを生成AIに頼むこともできますが、そのままでは足りませんでした。見本データで10の書類仕事を
に下書きさせた
不動産会社のAI活用の記事では、重要事項説明の項目出しに、法令と照らすと抜けがありました。
AIの答えは、それらしく見えても条文と合っているとは限りません(
と呼ばれます)。項目の一覧は条文から作り、AIには資料の依頼文やオーナーへの質問文の下書きを頼むくらいが安全です。入居者やオーナーの氏名は、
の観点からも外部のAIに入れないでください。
内見のときに確かめる点は、
内見チェックリストの記事にまとめています。設備の状況(第7号)の下調べを内見と同時に済ませると、準備の手間が一度で済みます。
準備表を、自分の事務所の形にする
この記事の準備表は、調べる作業の順(物件と権利、区分所有、災害と調査、契約の条件、手続き)に並べ替えています。条文の号の順のままだと、同じ契約書の案を何度も開くことになるからです。事務所によっては、オーナーに聞くこと、役所で調べること、契約書から写すことで分けたほうが動きやすいかもしれません。
exbk.jp の不動産アプリは、どれも
で作りました。項目の並び方や、どの資料を誰が取り寄せるかは、現場の人がいちばんよく知っています。社員が自分の業務に合った準備表や台帳を作れるようになる研修を、
不動産会社向けの Claude Code 研修として行っています。物件台帳、反響・追客、契約更新、入金確認などを題材に、講師とつないで実際に作りながら進める形です。
まとめ
- 建物の貸借の重説で説明する事項は、法第35条第1項と施行規則第16条の4の3に分かれている。手続きを含めて27の確認点になる
- 私道の負担(第3号)は建物の貸借では対象外。法令上の制限(第2号)は施行令第3条第3項の3つの規定に限られる
- 水害ハザードマップ上の所在地、石綿の記録、設備、契約期間と更新、敷金の精算、管理の委託先は施行規則から来る
- 取り寄せに日数がかかる管理規約とオーナーへの確認から先に始め、「該当しない」にも根拠の資料を残す
- 何を説明するかの最終判断は、宅建士が最新の条文と契約内容で行う
準備表を毎回作り直している事務所なら、その表を社員が自分でアプリにするところから始めてみてください。進め方は
不動産会社向けの Claude Code 研修のページで紹介しています。