賃貸仲介の宅建士と事務の方に向けて、建物の貸借の重要事項説明で説明する事項と、そのために事前に調べる資料を一覧にしました。

結論を先に書くと、建物の貸借で説明する事項は、宅地建物取引業法第35条第1項の各号と、施行規則第16条の4の3に分かれて書かれています。片方だけを見ると抜けます。条文を建物の貸借に絞って拾い直すと、説明の手続きを含めて27の確認点になりました。

この記事の表は、e-Gov法令検索で法・施行令・施行規則の条文を開き、「建物の貸借」に当たるかを一つずつ読んで作りました。物件の例はすべて見本で、実在の物件の話ではありません。最終的に何を説明するかは、担当の宅建士が契約内容と最新の条文で判断してください。

先に結論:条文は3か所、確認点は27

建物の貸借の重要事項説明で見る条文は、主に次の3か所です。

どこに書いてあるか建物の貸借で見る部分確認点の数
宅地建物取引業法 第35条第1項第1号、第2号、第4号、第5号、第6号、第6号の2イ、第7号、第8号、第9号、第11号10(第6号は規則の2項目に分かれる)
同法施行規則 第16条の4の3第1号〜第5号(第3号の2を含む)、第7号〜第12号12
同法 第35条第1項・第4項・第5項・第8項説明と書面の手続き4

第6号(区分所有建物)は施行規則第16条の2の第3号と第8号の2項目になるので、事項としては23、手続きの4点を足して27です。

売買の重説に慣れている人ほど注意したいのは、施行規則第16条の4の3のほうです。条文の頭に、建物の貸借の契約では「第一号から第五号まで及び第七号から第十二号まで」と書かれています。ハザードマップ上の所在地、石綿、設備、契約期間、敷金の精算、管理の委託先は、ここから来ます。

この27の確認点を、exbk.jp の重要事項説明の準備チェック(無料・登録なしで使える)に並べてあります。契約ごとに、事項ごとの状況(未着手・調査中・確認済み・該当しない)と、確認に使った資料、メモを残せます。

条文を読むのは宅建士の仕事です。一方で、準備表を物件ごとに表計算ソフトで作り直しているなら、その表を社員が自分でアプリにする方法は、不動産会社向けの Claude Code 研修で扱っています。

物件と権利・法令について説明する事項

まず、物件そのものと権利、法令上の制限です。

説明する事項条文準備で調べる資料
登記された権利の種類・内容と、登記名義人(表題部の所有者)法 第35条第1項第1号登記事項証明書
法令に基づく制限の概要法 第35条第1項第2号、施行令 第3条第3項市町村の都市計画の情報など
飲用水・電気・ガスの供給と、排水の施設の整備状況法 第35条第1項第4号現地の確認、設備の資料、オーナーへの聞き取り
工事完了時の形状・構造(未完成の建物のとき)法 第35条第1項第5号、規則 第16条図面、仕様書
建物状況調査の実施の有無と結果の概要(既存の建物のとき)法 第35条第1項第6号の2イ、規則 第16条の2の2調査の報告書、オーナーへの聞き取り

法令上の制限は、建物の貸借では3つの法律だけ

第2号の制限は、施行令第3条で契約の種類ごとに範囲が決まっています。建物の貸借は第3項で、次の3つの規定に基づく制限に限られます。

  • 新住宅市街地開発法 第32条第1項
  • 新都市基盤整備法 第51条第1項
  • 流通業務市街地の整備に関する法律 第38条第1項

売買の重説のように、用途地域や建ぺい率を並べる欄ではありません。多くの物件では該当しないことになりますが、該当しないと判断した根拠(どの情報を見たか)は残しておくと、あとで聞かれたときに困りません。

建物状況調査は「期間内のもの」

第6号の2イは、既存の建物について、建物状況調査をしているかどうかと、その結果の概要です。対象になる調査は、施行規則第16条の2の2で、実施から1年以内(鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年以内)のものに限られます。

同じ第6号の2のロ(設計図書や点検記録の保存の状況)は、施行規則第16条の2の3で「売買又は交換の契約に係る住宅」の書類と定められているため、建物の貸借の一覧には入れていません。

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区分所有建物(分譲マンションの一室など)の事項

分譲マンションの一室を貸す場合は、第35条第1項第6号の事項が加わります。施行規則第16条の2は、建物の貸借では「第三号及び第八号」だけを求めています。

説明する事項条文準備で調べる資料
専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め(案を含む)規則 第16条の2第3号管理規約、使用細則
一棟の建物と敷地の管理を委託されている者の氏名(法人は商号・名称)と住所規則 第16条の2第8号管理会社からの資料

ペットの飼育や楽器の演奏、事務所としての使用などを管理規約で制限しているかは、ここで説明します。管理規約はオーナーが手元に持っていないこともあるので、早めに管理会社へ依頼しておくと安心です。

修繕積立金や管理費の額(第16条の2の第6号・第7号)は、建物の貸借では求められていません。売買の重説の区分所有の欄をそのまま流用すると、説明しなくてよい事項まで並ぶことになります。

災害と建物の調査についての事項

施行規則第16条の4の3の前半は、災害の区域と建物の調査の記録です。ここは市町村や都道府県の地図を見る作業が中心になります。

説明する事項条文準備で調べる資料
造成宅地防災区域内にあるか規則 第16条の4の3第1号都道府県などの区域の指定の情報
土砂災害警戒区域内にあるか規則 第16条の4の3第2号都道府県の土砂災害警戒区域の地図
津波災害警戒区域内にあるか規則 第16条の4の3第3号都道府県の津波災害警戒区域の情報
水害ハザードマップでの物件の所在地規則 第16条の4の3第3号の2市町村の水害ハザードマップ
石綿の使用の有無の調査結果が記録されているときは、その内容規則 第16条の4の3第4号オーナーへの確認、調査の記録
耐震診断を受けているときは、その内容規則 第16条の4の3第5号耐震診断の結果の報告書

水害ハザードマップは「図面があれば所在地を示す」

第3号の2は、水防法施行規則第11条第1号により市町村長が提供する図面に物件の位置が表示されているとき、その図面での所在地を説明するものです。条文が求めているのは、図面のどこに物件があるかです。

市町村によっては図面が1枚とは限りません。どの図面を見たかを「確認に使った資料」に書いておくと、説明の場で迷いません。

石綿と耐震診断は「記録や診断があるとき」

第4号の石綿は、調査の結果が記録されているときに、その内容を説明します。調査をしていなければ、調査をすること自体は求められていません。とはいえ、記録があるかどうかはオーナーに聞かないとわからないので、聞いた日と答えを残します。

第5号の耐震診断は、昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した建物は除かれます。対象の建物でも、指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関、地方公共団体のいずれかが行った耐震診断を受けているときに、その内容を説明します。線を引く日は「工事に着手した日」です。登記事項証明書の新築年月日だけでは判断しきれないことがあります。

契約の条件についての事項

最後が、お金と契約の中身です。ここは法の第7号〜第11号と、施行規則第16条の4の3の後半が混ざっています。

説明する事項条文準備で調べる資料
借賃以外に授受される金銭(敷金・礼金など)の額と目的法 第35条第1項第7号募集条件、契約書の案
契約の解除に関する事項法 第35条第1項第8号契約書の案
損害賠償額の予定または違約金に関する事項法 第35条第1項第9号契約書の案
支払金・預り金の保全措置の有無と概要法 第35条第1項第11号、規則 第16条の3受け取る金銭の額と名目
台所・浴室・便所その他の設備の整備状況規則 第16条の4の3第7号設備表、現地の確認
契約期間と、契約の更新に関する事項規則 第16条の4の3第8号契約書の案
定期建物賃貸借・終身建物賃貸借のときは、その旨規則 第16条の4の3第9号契約書の案
用途その他の利用の制限に関する事項規則 第16条の4の3第10号契約書の案、使用細則
敷金など、契約終了時に精算する金銭の精算に関する事項規則 第16条の4の3第11号契約書の案
管理を委託されている者の氏名と住所(区分所有建物を除く)規則 第16条の4の3第12号管理委託契約書

支払金・預り金は50万円未満なら対象外

第11号の支払金・預り金は、施行規則第16条の3で、借賃や権利金、敷金などの名目を問わず、業者が受け取る金銭と定められています。ただし、受け取る額が50万円未満のものや報酬などは除かれます。賃貸の仲介で業者が敷金や前家賃を預かる流れがあるなら、合計の額を確かめておきます。

定期建物賃貸借は「その旨」を説明する

第9号は、借地借家法第38条第1項の定期建物賃貸借や、高齢者の居住の安定確保に関する法律第52条第1項の終身建物賃貸借に当たるとき、その旨を説明するものです。普通の賃貸借か定期建物賃貸借かは、更新の有無に直結するので、契約書の案の表題と条項の両方で確かめます。

手付金や代金の貸借のあっせんは、建物の貸借では当たらない

第10号(手付金等の保全措置)は第41条・第41条の2の措置を指し、第12号は代金または交換差金の貸借のあっせんです。どちらも売買の代金に関わる事項なので、この一覧には入れていません。第13号(契約不適合責任の保証保険などの措置)は、条文の文面だけでは建物の貸借で必要かを確かめきれなかったため、一覧に入れていません。気になる場合は、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で確かめてください。

説明と書面の手続き

事項のほかに、説明のしかたにも決まりがあります。

手続き条文
契約が成立するまでに、宅地建物取引士が書面を交付して説明する法 第35条第1項
説明のときに、宅地建物取引士証を相手方に示す法 第35条第4項
交付する書面に、宅地建物取引士が記名する法 第35条第5項
書面を電子で渡すときは、相手方の承諾を得る法 第35条第8項、施行令 第3条の3

電子で渡す場合、施行令第3条の3で、あらかじめ提供に使う方法の種類と内容を示したうえで、書面または電子の方法で承諾を得ることになっています。承諾のあとで、相手方から電子では受け取らないと申し出があったときは、電子での提供はできません。施行規則第16条の4の8では、相手方が出力して書面にできることや、改変されていないかを確かめられる措置などが基準に挙がっています。

借りる人が宅地建物取引業者のときは、第35条第6項により、書面の交付は必要ですが、宅建士による説明は読み替えで外れます。記名は第7項で必要です。

オンラインで説明する方法(いわゆるIT重説)の細かい運用は、この記事では一次資料で確かめきれなかったので触れていません。行う場合は国土交通省の案内で最新の手順を確かめてください。

準備でよくある抜け

条文を並べてみると、抜けやすいのは次のような所でした。

抜けやすい所理由防ぎ方
施行規則第16条の4の3の事項法の条文だけを見て準備すると出てこない一覧を法と規則の両方から作っておく
水害ハザードマップの種類市町村によって図面が複数ある見た地図の名前を資料欄に書く
石綿の調査記録の有無オーナーに聞かないとわからない聞いた日と答えをメモに残す
管理規約の利用制限管理会社から取り寄せるのに日数がかかる申込みの段階で依頼する
「該当しない」の根拠該当しないと判断した理由が残っていない何を見て該当しないとしたかを書く

最後の「該当しない」の根拠は、説明のあとで一番困る所です。区域外だった、未完成ではない、区分所有ではない、といった判断にも、見た資料があります。

資料欄を必須にする、説明日の3日前に未着手が残っていたら色を変える、といった事務所ごとの決まりは、準備表をアプリにしてしまえば仕組みで守れます。社員がその形を自分で作れるようになるのが、不動産向けの Claude Code 研修のねらいです。

準備の進め方:説明日から逆算する

準備は、取り寄せに時間がかかるものから始めると間に合います。見本の進め方を置いておきます。

見本(架空の物件):説明日の1週間前
登記事項証明書を取得する。管理会社に管理規約と使用細則を依頼する。オーナーに石綿の調査記録と耐震診断の有無、設備の状況を聞く。
見本(架空の物件):説明日の3日前
市町村の水害ハザードマップ、都道府県の土砂災害警戒区域と津波災害警戒区域の地図を見る。契約書の案から、契約期間、更新、解除、違約金、敷金の精算を写す。
見本(架空の物件):説明日の前日
未着手と調査中の事項が残っていないか、該当しないとした事項に根拠が書いてあるかを見直す。

アプリでは、この進み具合を数字で見られます。見本データでは、27のうち13が確認済みまたは該当しない、12が未着手、2が調査中で、説明日まで3日と表示されています。

重要事項説明の準備チェックの画面。見本データの架空の賃貸物件で、確認済み・該当しないが27のうち13、未着手12、調査中2、説明日まで3日と表示され、その下に物件と権利・法令の事項が並んでいる
重要事項説明の準備チェックの画面。見本データの架空の賃貸物件で、確認済み・該当しないが27のうち13、未着手12、調査中2、説明日まで3日と表示され、その下に物件と権利・法令の事項が並んでいる

重要事項説明の準備チェックは、ログインしないで使うと、入力した内容はその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。入居者やオーナーの個人情報を入れる前に、事務所の決まりを確かめてください。「済んでいない事項だけ」の表示と印刷もできるので、宅建士への引き継ぎの紙としても使えます。

生成AIに重説の項目を出させるときの注意

重説の項目出しを生成AIに頼むこともできますが、そのままでは足りませんでした。見本データで10の書類仕事を に下書きさせた不動産会社のAI活用の記事では、重要事項説明の項目出しに、法令と照らすと抜けがありました。

AIの答えは、それらしく見えても条文と合っているとは限りません(と呼ばれます)。項目の一覧は条文から作り、AIには資料の依頼文やオーナーへの質問文の下書きを頼むくらいが安全です。入居者やオーナーの氏名は、の観点からも外部のAIに入れないでください。

内見のときに確かめる点は、内見チェックリストの記事にまとめています。設備の状況(第7号)の下調べを内見と同時に済ませると、準備の手間が一度で済みます。

準備表を、自分の事務所の形にする

この記事の準備表は、調べる作業の順(物件と権利、区分所有、災害と調査、契約の条件、手続き)に並べ替えています。条文の号の順のままだと、同じ契約書の案を何度も開くことになるからです。事務所によっては、オーナーに聞くこと、役所で調べること、契約書から写すことで分けたほうが動きやすいかもしれません。

exbk.jp の不動産アプリは、どれも で作りました。項目の並び方や、どの資料を誰が取り寄せるかは、現場の人がいちばんよく知っています。社員が自分の業務に合った準備表や台帳を作れるようになる研修を、不動産会社向けの Claude Code 研修として行っています。物件台帳、反響・追客、契約更新、入金確認などを題材に、講師とつないで実際に作りながら進める形です。

まとめ

  • 建物の貸借の重説で説明する事項は、法第35条第1項と施行規則第16条の4の3に分かれている。手続きを含めて27の確認点になる
  • 私道の負担(第3号)は建物の貸借では対象外。法令上の制限(第2号)は施行令第3条第3項の3つの規定に限られる
  • 水害ハザードマップ上の所在地、石綿の記録、設備、契約期間と更新、敷金の精算、管理の委託先は施行規則から来る
  • 取り寄せに日数がかかる管理規約とオーナーへの確認から先に始め、「該当しない」にも根拠の資料を残す
  • 何を説明するかの最終判断は、宅建士が最新の条文と契約内容で行う

準備表を毎回作り直している事務所なら、その表を社員が自分でアプリにするところから始めてみてください。進め方は不動産会社向けの Claude Code 研修のページで紹介しています。