賃貸管理会社や大家の担当者で、「更新の案内をいつ出せばいいのか」「定期借家の再契約は何をするのか」を整理したい人に向けた記事です。
結論から書くと、更新の手続きは契約の終わる日から逆算して組み立てます。法律が期限を決めているのは「更新しない」「期間満了で終わる」と伝える通知のほうで、更新の案内そのものを何か月前に出すかは、各社が契約書と運用で決めます。
この記事では、借地借家法の条文(e-Gov法令検索で原文を確認したもの)に沿って、普通借家と定期借家の手続きの流れ、書類、よくある失敗を表でまとめます。個別の契約の判断は、契約書と弁護士などの専門家に確かめてください。
先に結論:法律の期限と、自社で決める期限を分ける
更新手続きで押さえる期限は、次の2種類です。
| 期限の種類 | 決めているもの | 中身 |
|---|---|---|
| 更新しない旨などの通知(普通借家) | 借地借家法 第26条第1項 | 期間満了の1年前から6か月前までに通知しないと、同じ条件で更新したものとみなされる |
| 期間満了で終わる旨の通知(定期借家・期間1年以上) | 借地借家法 第38条第6項 | 1年前から6か月前までに通知しないと、終了を借主に対抗できない |
| 更新の案内を出す日 | 各社の運用・契約書 | 法律の定めはない。「満了の何か月前」を自社で決める |
| 更新料 | 契約 | 借地借家法の条文に定めはない |
つまり担当者の仕事は、契約ごとに「終わる日」と「6か月前の日」を押さえ、そこから自社の案内日を置くことです。契約が数十件を超えると、表計算で日付を並べるだけでも見落としが出ます。
exbk.jp の契約更新の管理(無料・登録なしで使える)は、契約の終わる日と「案内は何か月前」を入れると、案内を出す日を計算して急ぐ順に並べる画面です。定期建物賃貸借では、法律の通知期間も表示します。
この画面は、社員が で自分の業務のアプリを作る研修の題材にもなっています。管理業務を自分たちの手で仕組みにしたい会社は、不動産会社向けの Claude Code 研修の中身もあわせて見てみてください。
普通借家と定期借家で、手続きはどう違うか
最初に確かめるのは、その契約が普通建物賃貸借(普通借家)か、定期建物賃貸借(定期借家)かです。同じ「更新の時期」でも、やることが変わります。
| 項目 | 普通借家(期間の定めあり) | 定期借家 |
|---|---|---|
| 契約の更新 | あり | なし(第38条第1項) |
| 続けて住む場合 | 更新(合意更新) | 新しく契約を結ぶ再契約 |
| 何もしなかった場合 | 同じ条件で更新したものとみなされる(第26条第1項) | 通知が要る契約で通知がないと、終了を借主に対抗できない(第38条第6項) |
| 1年前〜6か月前にすること | 更新しない、または条件を変えないと更新しない場合の通知 | 期間満了で終わる旨の通知(期間1年以上の場合) |
| 貸主から終わらせる条件 | 正当の事由が必要(第28条) | 期間満了で終了(通知などの要件を満たす場合) |
普通借家:通知がなければ「法定更新」になる
第26条第1項は、期間の定めがある建物の賃貸借で、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に、相手に「更新をしない旨の通知」または「条件を変更しなければ更新をしない旨の通知」をしなかったとき、従前の契約と同じ条件で契約を更新したものとみなす、と定めています。これが一般に法定更新と呼ばれるものです。
同じ項のただし書きで、このとき更新後の期間は「定めがないもの」とされます。2年契約を続けるつもりでも、手続きが漏れると期間の定めのない契約になる、という点は担当者が知っておきたいところです。
また第26条第2項では、通知をしていても、期間が満了したあと借主が使い続けていて、貸主が遅滞なく異議を述べなかったときも同じ扱いになります。
貸主から更新を断るときは「正当の事由」が要る
第28条は、貸主からの更新拒絶の通知や解約の申入れについて、貸主と借主が建物を使う必要性のほか、従前の経過、建物の利用状況や現況、立退料などの申出を考えて、正当の事由があると認められる場合でなければできない、としています。
期間内に通知を出せば終わらせられる、という話ではありません。貸主側から更新しない方向で動く案件は、早い段階で専門家に相談する前提で日程を組みます。
定期借家:更新はなく、終了の通知と再契約
第38条第1項により、定期建物賃貸借は公正証書などの書面で契約するときに限り、契約の更新がないことを定められます。第2項で、内容を記録した電磁的記録(電子データ)による契約も書面による契約とみなされます。
期間が1年以上の定期借家では、第38条第6項により、貸主は期間満了の1年前から6か月前まで(通知期間)に、期間満了で賃貸借が終わる旨を借主へ通知しなければ、終了を借主に対抗できません。通知期間を過ぎてから通知した場合は、通知の日から6か月を経過したあとは対抗できる、と同じ項のただし書きにあります。
続けて住んでもらう場合は、更新ではなく新しい契約(再契約)です。再契約でも定期借家にするなら、次の節の事前説明を含めて、契約の手続きを最初からやり直します。
更新手続きの流れ:終わる日から逆算した段取り
ここからは普通借家の合意更新を例に、終わる日から逆算した段取りを表にします。「何か月前」の欄は法律の期限(1年前〜6か月前)と、見本として置いた自社運用の目安を分けて書いています。自社の運用の月数は契約書と社内ルールに合わせて決めてください。
| 時期 | すること | 根拠・メモ |
|---|---|---|
| 満了の1年前 | 通知期間に入る。更新しない意向がある案件を洗い出す | 第26条第1項の期間の始まり |
| 満了の6か月前まで | 更新しない、条件を変えないと更新しない場合の通知を出し終える | 第26条第1項の期間の終わり |
| 満了の3か月前(見本の運用) | 借主へ更新の案内を送る。更新後の条件、更新料の有無、必要書類を知らせる | 月数は各社の運用 |
| 満了の2か月前(見本の運用) | 借主の意向(更新・解約)を回収する。解約なら退去の段取りへ | 解約の申入れの期間は契約書で確認 |
| 満了の1か月前(見本の運用) | 更新契約書(合意書)を取り交わす。保証会社・火災保険の更新も確認 | 契約書と各社の約款 |
| 満了日以降 | 台帳の終わる日を次の期間に書き換え、次回の案内日を入れ直す | 書き換え漏れが次の法定更新につながる |
案内の前に、台帳で確かめる5項目
案内を出す前に、物件台帳や契約書で次の点をそろえておくと、借主からの問い合わせで手が止まりません。
- 契約の種類(普通借家か定期借家か)
- 始まる日と終わる日
- 更新料や更新事務手数料の定めが契約書にあるか
- 保証会社の契約と、火災保険の満了日
- 前回の更新で条件を変えたかどうか
特に1と2は、前の担当者が台帳を作ったときの入力ミスがそのまま残りやすい項目です。契約書の原本と照らして、年1回は見直しておくと安心です。
更新で交わす書類の例
書類の名前や中身は会社によって違います。よく使われるものを並べると、次のとおりです。
| 書類 | 誰から誰へ | 中身 |
|---|---|---|
| 更新のご案内 | 管理会社・貸主から借主へ | 満了日、更新後の期間と条件、更新料の有無、返送の期限 |
| 更新意向の確認書 | 借主から管理会社へ | 更新するか、解約するか |
| 更新契約書(合意書) | 貸主と借主で取り交わす | 更新後の期間、賃料などの条件 |
| 保証会社・火災保険の更新書類 | 各社の手続きによる | 保証の継続、保険期間の延長 |
定期借家の再契約では、これに加えて第38条第3項の書面(次の節)が必要です。
定期借家の再契約で、抜けやすい手続き
定期借家では、契約を結ぶ前に貸主が借主へ説明する手続きがあります。
第38条第3項は、定期建物賃貸借をしようとするとき、貸主はあらかじめ借主に対し、契約の更新がなく期間の満了で終わることを、その旨を書いた書面を交付して説明しなければならない、と定めています。第4項では、借主の承諾を得て、書面の代わりに電磁的方法(メールなど)で提供することもできます。
この説明がなかったときの扱いは第5項にあり、契約の更新がないこととする定めは無効とされます。再契約の手続きで「前回と同じだから」と説明の書面を省くと、定期借家として扱えなくなるおそれがあります。
| 定期借家で確かめること | 条文 |
|---|---|
| 公正証書などの書面(または電磁的記録)で契約しているか | 第38条第1項・第2項 |
| 契約前に、更新がない旨の書面を交付して説明したか | 第38条第3項・第4項 |
| 期間1年以上なら、1年前〜6か月前に終了の通知を出したか | 第38条第6項 |
重要事項説明と定期借家の事前説明の違いは、賃貸の重要事項説明の準備でも整理しています。
アプリで、案内を出す日を一覧にする
表で逆算の考え方をつかんだら、次は契約ごとの日付を並べる作業です。exbk.jp の契約更新の管理では、契約の種類・始まる日・終わる日・「案内は何か月前」・賃料・状況を1行ずつ入れていきます。

*画面の数値や物件名はアプリに最初から入っている見本データで、実在の物件ではありません。*
画面の上には「案内を出す時期・通知期間中」「30日以内に案内」「期間を過ぎた」「90日以内に終わる契約」の件数が出て、「急ぐ順に並べる」で近いものから並べ替えられます。計算の決まりは画面の下に書いてあり、案内を出す日は、終わる日から「案内は何か月前」の月数をさかのぼった日です。月数は各社の運用や契約書に合わせて入れる前提になっています。
画面の説明どおりなら、1年前〜6か月前は第26条第1項の通知期間の目安として扱われ、定期建物賃貸借で期間が1年以上の契約には第38条第6項の通知期間も出ます。期間が1年未満の契約には表示されません。日付は月単位でさかのぼった目安なので、実際の期限の数え方は契約書と条文で確かめてください。
データの置き場所も確認しておきましょう。画面の説明によると、ログインしていない間は、入力したデータはその端末のブラウザの中だけに保存され、サーバーには送られません。入居者の名前を入れて試す前に、社内の個人情報の取扱ルールに沿っているかを確かめてください。
更新手続きで、よくある失敗
条文と段取りを見てきたうえで、実務で起きやすい失敗を並べます。
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 6か月前を過ぎてから「更新しない」と伝える | 第26条第1項の期間を過ぎ、同じ条件で更新したものとみなされる | 1年前の時点で意向を洗い出す |
| 更新後の終わる日を台帳に書き換えない | 次回の案内が出ず、法定更新になる | 更新の合意と同時に台帳を直す |
| 定期借家の終了通知を出し忘れる | 期間1年以上なら、終了を借主に対抗できない(第38条第6項) | 定期借家だけを別に並べて確かめる |
| 再契約で事前説明の書面を省く | 更新しない旨の定めが無効になる(第38条第5項) | 再契約も新規契約と同じ手順で進める |
| 期間満了後の使用継続を放置する | 遅滞なく異議を述べないと更新とみなされる(第26条第2項) | 満了日の翌週に使用状況を確かめる |
どれも、日付を人の記憶に頼ると起きる失敗です。担当者が異動しても引き継げるように、案内日と通知期間は台帳かアプリに書いて残しておきます。
始める前に決めておくこと
アプリや表に入れる前に、社内で次の3点を決めておくと、担当者ごとのばらつきが減ります。
- 案内を出す月数:満了の何か月前に案内を出すか。物件の種類で変えるなら、その基準も
- 更新料と手数料の扱い:契約書にどう書いてあるかを一覧にして、案内文に何を書くかをそろえる
- 定期借家の担当:終了通知と再契約を誰が見るか。普通借家と同じ流れに混ぜない
この3つが決まっていれば、あとは契約ごとに日付を入れるだけです。
自社の業務に合わせたアプリを、社員が作る
見本のアプリで流れがつかめたら、「自社の台帳の項目に合わせたい」「保証会社の満了日も並べたい」といった要望が出てくるはずです。こうした手直しを外注せずに、担当者が自分で に指示して形にしていくのが、不動産会社向けの Claude Code 研修です。
研修のページによると、対象は物件台帳・追客・契約更新・入金確認の業務を担当している賃貸管理・売買仲介の営業担当や事務員です。2時間×5回を Zoom のライブで行い、第3回で契約更新管理と家賃入金確認のアプリを作ります。第1回で入居者・オーナー情報の取扱ルールを決めるところから始まる構成です。助成金の対象になる研修かどうかも、研修のページに説明があります。
不動産の仕事のどこにAIを使えるかは、不動産会社のAI活用で業務ごとにまとめています。入居前の確認は内見チェックリストも参考にしてください。
まとめ
- 更新手続きは、契約の終わる日から逆算して組み立てる
- 普通借家は、1年前から6か月前までに更新しない旨などを通知しないと、同じ条件で更新したものとみなされる(借地借家法第26条第1項)。貸主からの更新拒絶には正当の事由が要る(第28条)
- 定期借家は更新がない。期間1年以上なら、1年前から6か月前までに終了の通知を出す(第38条第6項)。再契約でも事前説明の書面が要る(第38条第3項・第5項)
- 更新の案内を何か月前に出すか、更新料をどうするかは、法律ではなく契約書と自社の運用で決める
- 個別の契約の判断は、契約書と専門家に確かめる
更新の案内日を並べる作業は、契約更新の管理で見本を触りながら試せます。台帳や更新の管理を自社の形でアプリにしたいときは、不動産会社向けの Claude Code 研修で、担当者自身が作れるようになる道があります。
