障害福祉サービス事業所の管理者と支援員に向けて、身体拘束の適正化で押さえる決まりを整理しました。原則は禁止、やむを得ず行ったときは記録、そして委員会・指針・研修の3つが義務です。

この記事では、運営基準の条文と厚生労働省の資料で確かめられたことだけを書きます。確かめられなかった数字は、そう書いて飛ばしました。

身体拘束の記録アプリの画面。見本データを表示しています
身体拘束の記録アプリの画面。見本データを表示しています

先に結論:義務は「記録」と「委員会・指針・研修」の4つ

指定障害福祉サービスの運営基準(平成18年厚生労働省令第171号)の第35条の2が、身体拘束等の禁止を定めた条文です。ここに4つの義務が書かれています。

何をするか条文の言葉頻度・期限
原則やらない緊急やむを得ない場合を除き「身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為」を行ってはならない常に
行ったら記録する「その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければならない」その都度
委員会を開く「身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会」を定期的に開催し、結果を従業者に周知徹底する条文は「定期的に」。厚生労働省の資料では最低年1回以上
指針をつくる「身体拘束等の適正化のための指針を整備すること」整備して置いておく
研修をする従業者に対し「身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること」条文は「定期的に」。厚生労働省の資料では年1回以上と新規採用時

委員会の開催、指針の整備、研修の実施は、ひとまとめに「適正化を図るための措置」として第3項に並んでいます。条文は「テレビ電話装置等を活用して行うことができる」とも書いているので、委員会をオンラインで開いてもかまいません。

記録のほうは、exbk.jp の身体拘束の記録というアプリにそのまま項目を並べてあります。無料で、登録なしで使えます。画面を開いて、自分の事業所の様式と見比べてみてください。

「緊急やむを得ない場合」の3つの要件

条文は「利用者又は他の利用者の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」としか書いていません。その中身は、厚生労働省の障害福祉課が出している資料「身体的拘束等の適正化の推進」に示されています。3つをすべて満たすこと、という書き方です。

要件資料の説明
切迫性利用者本人または他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
非代替性身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと
一時性身体拘束その他の行動制限が一時的であること

同じ資料には、要件と手続きを踏めば免罪符になるわけではない、という一文があります。手続きは自分たちの支援力を見直すための時間だ、とも書かれています。ここは読んでおく値打ちがあります。

やむを得ず行うときの手続きとして、資料は4つを挙げています。

  1. 組織による決定と個別支援計画への記載
  2. 本人・家族への十分な説明
  3. 行政への相談、報告
  4. 必要な事項の記録

つまり、記録用紙だけ埋めても足りません。誰が決めたのか、家族に何をどう説明したのか、計画にどう位置づけたのか。ここまでそろって手続きです。個別支援計画への書き方は個別支援計画の書き方でも触れています。

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記録に残す項目

条文が求める4項目に、手続きの記録を足すと、様式に並べる欄はこうなります。

欄書くこと例(見本)
日時・場所開始と終了の時刻、場所9月10日 14:20〜14:50、多目的室
態様何を、どのように行ったか職員2名で両肩を支え、床に座った姿勢を保った
時間実際に続いた時間30分
そのときの心身の状況見た様子、聞いた言葉、体温や脈などの数値大声を出し、机の上の物を投げていた。終了時「もう大丈夫」と話された
緊急やむを得ない理由3つの要件にあてはめた中身切迫性:ガラスに向かって物を投げ、近くに他の利用者2名がいた/非代替性:声かけと場所の移動を試みたが続いた/一時性:落ち着くまでの30分と決めた
組織としての決定誰が判断し、誰に報告したかサービス管理責任者が判断、管理者に当日報告
本人・家族への説明説明した相手、日時、伝えたこと、反応9月10日18時、母に電話で経過を説明
解除までの経過途中の確認、解除の判断10分ごとに呼吸と表情を確認。投げる動作がやみ、解除
記録者名前—

上の例はすべて見本です。実在の事業所や利用者のことではありません。

理由の欄が埋まらないときは、いったん手を止めるほうがいいと思います。3つの要件のどれかが言葉にできないのなら、その行為は要件を満たしていなかった可能性があります。逆に、要件を書けるなら、委員会に報告する材料もそろいます。

記録の書きぶりそのものに迷うときは、支援記録の書き方にある事実と気づきを分ける考え方が、そのまま使えます。

アプリで書くとどうなるか

身体拘束の記録アプリは、この欄の並びで作ってあります。態様と時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由という条文の項目に加えて、3つの要件の検討、家族への説明、解除までの経過の欄があります。

ログインしていないあいだ、入力したデータはその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。事務所のパソコンと支援の場のタブレットで同じデータを見たいときは、無料のアカウントを作れば同期できます。端末のデータを消す前には、バックアップの書き出しを忘れないでください。を扱う書類なので、どの端末に残すかは事業所の決まりを先に決めてから使うのが安全です。

こうした様式は、事業所ごとに少しずつ違います。自分の事業所の欄に合わせて作り直したい、という声のほうが多いはずです。日本語で指示してアプリを直せるようになる障害福祉向けの Claude Code 研修は、そこを扱っています。

委員会・指針・研修の回し方

委員会

条文は「定期的に開催する」としか書いていません。頻度の目安は、厚生労働省の資料に「少なくとも年1回は望ましい」とあります。あわせて、虐待防止委員会と関係する職種などが相互に関係が深いと認めることもできるため、虐待防止委員会と一体的に設置・運営しても差し支えない、とされています。

同じ資料に載っている体制整備のチェック項目のうち、委員会に関するものはこうです。

  • 事業所の規模に応じて、事業所単位ではなく法人単位で設置してもよい
  • 構成員の責務と役割分担が明確になっている
  • 幅広い職種で構成している
  • 医師や看護職員などの第三者・専門家を活用するよう努めている
  • 報告のための様式を整備している
  • 報告された事例を集計・分析し、適正性と適正化策を検討している
  • 検討結果を職員に周知徹底している
  • 適正化策を講じたあと、その効果を検証している

小さな事業所向けの工夫も示されています。既存の会議やケースカンファレンスに合わせて開く、オンライン会議を使って第三者が参加しやすくする、といったやり方です。

指針

指針に盛り込む項目も、同じ資料のチェックリストに7つ並んでいます。

項目
ア 事業所における身体拘束等の適正化に関する基本的な考え方
イ 身体拘束適正化委員会その他事業所内の組織に関する事項
ウ 身体拘束等の適正化の研修に関する基本方針
エ 事業所内で発生した身体拘束等の報告方法等の方策に関する基本方針
オ 身体拘束等発生時の対応に関する基本方針
カ 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
キ その他身体拘束等の適正化の推進のために必要な基本方針

資料は、指針も記録の様式も、白紙から作るのではなく公表されている雛形をたたき台にすることを勧めています。ゼロから考えるより、項目を写してから自分の事業所の言葉に直すほうが早い、という趣旨です。

研修

定期的な研修は年1回以上、新規採用時には必ず実施することが重要、と資料に書かれています。実施内容の記録を残すことも、チェック項目に入っています。

参加できなかった職員には、録画の視聴を促す、参加した人が伝達研修をする、といった方法が挙げられています。行政や基幹相談支援センターの研修、近くの大きな法人の合同研修を使う手もあります。

身体拘束の適正化は、虐待防止の取り組みと重なります。虐待防止の取り組みの中で身体拘束等の適正化を取り扱う場合は、適正化に取り組んでいるものとみなす、という扱いもあります。虐待防止研修のほうは障害福祉の虐待防止研修にまとめたので、あわせて設計してください。

よくある失敗

現場の書類で起きやすい取りこぼしを、条文と資料に照らして挙げます。

よくある形何が足りないかどう直すか
「興奮のため制止」とだけ書いてある態様・時間・理由が特定できない何を、何分、どんな判断で行ったかを分けて書く
理由の欄が「危険だったため」3つの要件のうち非代替性と一時性が書かれていない先に試した方法と、いつまでと決めたかを書く
記録は残したが委員会に出していない集計・分析と周知徹底が抜ける報告様式を決め、委員会の議題に固定する
指針は作ったが誰も見ていない閲覧に関する基本方針が動いていない掲示や配布の方法を指針に書き、実際に置く
研修をやったが記録がない実施内容の記録が残らない日時・内容・出席者の一覧を1枚にして保管する

運営基準の①から④を満たしていない場合は、基本報酬が減算される取扱いがあります。減算の単位数や適用年度は年度ごとの報酬改定で変わるため、この記事では書きません。自事業所の所管の自治体と、最新の報酬告示で確かめてください。

記録の保存期間

指定障害福祉サービスの運営基準では、サービスの提供に関する諸記録を整備し、サービスを提供した日から5年間保存しなければならないと定めています。身体拘束等の記録も、記録の整備の条文で保存の対象として名前が挙がっています。

自治体が条例で別の期間を定めている場合もあります。様式を決めるときに、所管の自治体の取扱いを確かめておいてください。

様式を自分たちで作り直すために

身体拘束の記録は、書く回数は多くありません。だからこそ、書く場面になってから様式を探す、という状態になりがちです。ふだん開いている画面の中に欄があって、要件の検討まで一緒に残せるほうが、あとで委員会に出すときに楽になります。

exbk.jp の障害福祉アプリは で作りました。を配って終わりにせず、事業所の様式に合わせて職員が自分で直せるほうが続きます。その進め方を扱うのが障害福祉の現場向け Claude Code 研修です。生活支援員、職業指導員、サービス管理責任者、事務の方を対象に、Zoom のライブで全10時間(2時間×5回)。第1回で個人情報の扱いの決まりを先に決めてから、支援記録や個別支援計画などのアプリを作り、最後に自分の事業所の業務で試します。プログラミングの経験は要りません。

生成AIを障害福祉の業務にどこまで使うかは、障害福祉の現場でのAIの使いどころにまとめています。

まとめ

  1. 運営基準第35条の2は、緊急やむを得ない場合を除いて身体拘束等を禁じている。やむを得ず行ったときは、態様及び時間、そのときの利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録する。
  2. 緊急やむを得ない場合は、切迫性・非代替性・一時性の3つをすべて満たす場合。手続きは、組織による決定と個別支援計画への記載、本人・家族への説明、行政への相談・報告、記録の4つ。
  3. 委員会の定期開催と周知、指針の整備、研修の定期実施が義務。頻度は条文では「定期的に」で、厚生労働省の資料が委員会は最低年1回以上、研修は年1回以上と新規採用時と示している。
  4. 指針に盛り込む項目は7つ。雛形をたたき台にしてよい。
  5. 記録は、サービスを提供した日から5年間保存する。自治体の条例も確かめる。

記録の様式が決まったら、身体拘束の記録アプリの画面と並べて、足りない欄がないか見てください。自分たちの様式に作り替えるところまでを職員が手を動かして身につける場として、障害福祉向けの Claude Code 研修を用意しています。