障害福祉サービス事業所の管理者とサービス管理責任者(サビ管)に向けて、個別支援計画や支援記録などの書類で、生成AI(指示を文章で書くと文章を返してくれるAI)に何を頼めるか、どこまで任せてよいかをまとめました。

結論を先に書くと、AIに任せてよいのは「形を整える」ところまでです。本人の意向を決めること、目標の数字を決めること、同意をもらうことは人の仕事として残ります。この記事を書くのに使った生成AI()に、見本データで下書きを作らせた結果を、書類ごとに載せています。

先に結論:頼んでよいこと、人が書くこと

Claude に見本データで下書きを作らせた結果を、書類ごとに一行で並べます(工賃計算は下書きを作らせておらず、考え方だけです)。

書類AIの下書きで使えたところ人が書く・確かめること
支援記録走り書きを、事実・気づき・対応に分けた文章に整える走り書きにない様子の言葉が足されていないか
個別支援計画面接メモから、意向・方針・目標・支援内容の欄に振り分けた下書き本人の意向の言葉、目標の数字、達成時期
モニタリング記録1か月分の記録の要約と、目標ごとの進み具合の下書き「達成」「未達成」の判断、次の計画への反映
虐待防止の研修研修のあとの確認問題と、答えの解説の下書き事業所の実際の手順と合っているか
工賃計算(下書きは作らせていない。説明文の下書き程度にとどめる)計算そのもの(道具で行う)

どの書類でも、AIの出力は下書きです。計画については、障害福祉サービスの指定基準(国が定めた運営のルール)で、面接、会議、文書での同意、交付の手順が決まっています。AIが下書きを作っても、この手順は1つも省けません。

AIに頼む前に、書類の書式そのものを整えておくと、下書きを移す先がはっきりします。exbk.jp の障害福祉アプリ(無料・登録なしで使える)には、アセスメントシート、個別支援計画、モニタリング記録、支援記録、サービス提供記録、工賃計算、送迎記録、虐待防止の研修・委員会、身体拘束の記録、それらをまとめるダッシュボードの10種類があります。

書類の書式を事業所のやり方に合わせて、職員が自分でアプリにできるようになる障害福祉事業所向けの Claude Code 研修も行っています。AIに下書きを頼むより一歩進んで、毎日使う書式そのものを自分たちで作る研修です。

AIに入れてはいけない情報

下書きの結果の前に、いちばん大事な前提を書きます。利用者の個人情報は、外部のAIサービスに入れません。

個人情報保護委員会は2023年6月2日に、生成AIサービスの利用について注意を呼びかけています。事業者向けの注意点は2つです。

  • 個人情報を含む指示を入力するときは、その個人情報の利用目的を達成するのに必要な範囲かどうかを十分に確かめること
  • 本人の同意なく個人データを含む指示を入力し、それが応答を出す以外の目的(AIの学習など)で扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反するおそれがあること

障害福祉の書類には、氏名、障害の状況、家族のこと、服薬など、とくに慎重に扱うべき情報が並びます。この記事の下書きづくりでは、すべて架空の見本データを使いました。実際の業務で使うなら、次のように置き換えてから入力します。

元の情報置き換え方
氏名「Aさん」「利用者1」
生年月日・年齢必要なら「40代」程度に
住所・家族の名前・勤め先入れない
病名・手帳の等級下書きに必要なときだけ、特定につながらない範囲で

置き換えても、ほかの情報と組み合わせると人が特定できることがあります。どの情報まで入れてよいかは、事業所のルールとして管理者が決めておきます。

支援記録や個別支援計画の書式を、職員が自分でアプリにできるようになりませんか?
障害福祉の現場向け Claude Code 研修
研修の内容を見る

支援記録:走り書きを整えるのは得意

ここからが、この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、見本データで下書きを作らせた結果です。依頼文と下書きの要点をそのまま載せます。見本データは、アプリに入っている架空の就労継続支援B型事業所の見本(利用者「【サンプル】青木 さくら」、袋詰めの作業)をもとに、名前を「Aさん」に置き換えて使いました。

依頼文

次のメモを、支援記録の文章に整えてください。「見たこと・聞いたこと」「気づき」「対応・その後」の3つに分けてください。メモにないことは書かないでください。
メモ:10:40 袋詰め 120個で手止まる。「もう無理」。休憩カード出さず。声かけ→休憩室10分。戻って11:30まで80個。

出てきた下書き

見たこと・聞いたこと:10:40、袋詰めの作業中、120個で手が止まった。「もう無理」と話された。休憩カードは出されなかった。
気づき:疲れが出ていたが、自分から休憩を申し出ることは難しかったと思われる。
対応・その後:職員が声をかけ、休憩室で10分休憩した。作業に戻り、11:30までに80個を袋詰めした。

人が直すところ

形はほぼそのまま使えました。時刻も数も落ちていません。一方で、「疲れが出ていた」は、メモにない推測です。気づきの欄なので「〜と思われる」で書くのが妥当ですが、「疲れ」なのか、作業に飽きたのか、別の理由なのかは、その場にいた職員にしかわかりません。

「メモにないことは書かないでください」と依頼文に書いても、気づきの欄には推測が入りました。AIは、もっともらしい理由や様子を補って文章をなめらかにしようとします。 これは (事実でない内容を、それらしく作ってしまうこと)と同じ種類の問題で、記録では致命的です。

記録の書き方そのもの、つまり事実と気づきを分ける型や、サービス提供記録との違いは、サービス提供記録の書き方で詳しく書いています。

個別支援計画:下書きの形は作れる、意向は作らせない

いちばん確かめたかったのがここです。計画は、推測が混じったときの影響がいちばん大きい書類だからです。

指定基準で決まっている手順

先に、計画の作り方の決まりを確かめます。指定基準の第58条(療養介護の条文で、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援なども準用しています)では、サービス管理責任者が次の順で進めるとされています。

順番すること条文の要点
1アセスメント利用者に面接して行う。面接の趣旨を十分に説明し、理解を得る(第4項)
2原案を作る本人と家族の生活に対する意向、総合的な支援の方針、課題、目標と達成時期、留意事項を書く(第5項)
3会議担当者を集めて、意向を改めて確かめ、原案に意見を求める(第6項)
4説明と同意利用者または家族に説明し、「文書により利用者の同意を得なければならない」(第7項)
5交付利用者と指定特定相談支援事業者等に交付する(第8項)

AIが関われるのは、2の原案を作る前の下書きだけです。面接も、会議も、同意も、人が本人と向き合って行います。第3項では、意思を決めることが難しい利用者について、本人の意思や好みを丁寧に把握することも求めています。本人の意向を推測で埋めることは、この条文の考え方と逆向きです。

依頼文A:メモだけを渡す

就労継続支援B型の利用者Aさんの個別支援計画の下書きを作ってください。面接メモ:作業は袋詰め。疲れると手が止まる。休憩を言い出せない。本が好き。

出てきた下書き(抜粋)

本人の意向:自分のペースで作業を続け、工賃で好きな本を買えるようになりたい。
長期目標:1年後、週5日の通所を安定して続ける。
短期目標:疲れたときに自分から休憩を申し出る。袋詰めを1日300個できる。

見た目は立派な計画です。ところが、「工賃で本を買いたい」「週5日」「300個」は、どれも面接メモにありません。メモの「本が好き」から、AIが意向の言葉を作っています。このまま原案にすると、本人が言っていない意向が計画に載ります。

依頼文B:推測を書かないよう指定する

次の面接メモから、個別支援計画の下書きを作ってください。本人の意向の欄は、メモに「」で残した本人の言葉だけを使ってください。メモにない数字や期間は書かず、【要確認】と書いてください。

出てきた下書き(抜粋)

本人の意向:(メモに本人の言葉がないため)【要確認:面接で本人の言葉を聞く】
課題:疲れると作業の手が止まる。休憩を自分から言い出せない。
短期目標:疲れたときに、自分から休憩を伝えられる。達成時期【要確認】
支援内容:【要確認:休憩の伝え方(カード、合図など)を本人と決める】

依頼文Bの下書きのほうが、原案の下書きとしてずっと使えます。空欄が見えるので、次の面接で何を聞くべきかがはっきりします。同じメモでも、依頼文の書き方で、推測が混じる下書きにも、聞くべきことの一覧にもなります。

アプリの見本データでは、同じ利用者の計画がこのように入っています。本人の意向の欄には、面接で聞いた本人の言葉を書く想定です。

個別支援計画のアプリの画面。見本データとして架空の利用者の意向、方針、長期目標、短期目標と支援内容が入っている
個別支援計画のアプリの画面。見本データとして架空の利用者の意向、方針、長期目標、短期目標と支援内容が入っている

*exbk.jp の個別支援計画のアプリ。表示しているのはアプリに入っている見本データです。*

exbk.jp の個別支援計画のアプリ(無料・登録なしで使える)は、説明・同意・交付の日付と、次のモニタリングと見直しの時期も管理できます。ログインしていない間は、入力したデータはその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。AIの下書きを参考にしながら、確定した内容はこちらに書く、という分け方ができます。計画の項目ごとの書き方と目標の例文は、個別支援計画の書き方にまとめています。

モニタリング記録:要約は速い、判断は人

依頼文

Aさんの1か月分の支援記録の要約(見本)です。短期目標「疲れたときに自分から休憩を伝えられる」について、進み具合をまとめてください。達成・未達成は判断しないでください。
記録の要約:休憩カードを自分で出した日 4日。職員の声かけで休憩した日 9日。作業日数 18日。

出てきた下書き

作業日18日のうち、休憩カードを自分で出した日が4日、職員の声かけで休憩した日が9日あった。自分から休憩を伝えられた日は一部にとどまり、声かけによる休憩が多い。
次の面接で確かめること:カードを出せた日と出せなかった日の違い、本人がカードをどう感じているか。

数字の読み取りに誤りはありませんでした。依頼文にない「次の面接で確かめること」も下書きに入っていますが、中身は妥当です。

ただ、18日のうち残りの5日はどうだったのか(休憩が要らなかったのか、記録がないのか)は、要約からはわかりません。AIは渡された数字の範囲でしか書けないので、元の記録の抜けは人が見つけます。指定基準の第58条第10項は、モニタリングで定期的に利用者に面接し、結果を記録することも求めています。要約はその面接の準備に使うもので、面接の代わりにはなりません。

虐待防止の研修:確認問題づくりは任せやすい

研修の資料づくりは、個人情報を入れずに頼めるので、いちばん始めやすい使い方です。

依頼文

障害福祉サービス事業所の職員向けに、虐待防止研修のあとに使う確認問題を5問、〇×形式で作ってください。答えと短い解説もつけてください。

出てきた下書き(2問を抜粋)

問1 利用者が嫌がっているのに、職員が大声で注意を続けることは、心理的虐待にあたることがある。(答え:〇)
問2 虐待かどうか迷ったときは、事実がはっきりするまで誰にも相談せずに様子を見るのがよい。(答え:× 迷ったときこそ、ひとりで判断せず、事業所の決まりに沿って責任者に相談する)

問題の形はそのまま使えます。気をつけるのは解説の中身です。通報の窓口や、事業所の中で誰に最初に伝えるかは、事業所ごとに決まっています。AIは一般的な言い方しかできないので、解説を事業所の実際の手順に書き換えてから使います。

研修の実施日や委員会の記録は、虐待防止の研修・委員会のアプリで残せます。

工賃計算:AIに計算させない

工賃計算は、下書きを作らせていません。計算をAIに任せるのはおすすめしないからです。

理由は2つです。数字の誤りが利用者への支払いに直結すること、そしてAIの答えには、どう計算したかの根拠が表のようには残らないことです。計算は表計算ソフトや工賃計算のアプリで行い、AIには「利用者向けに、工賃の計算のしかたを短く説明する文」の下書きを頼むくらいが向いています。工賃の決まりと計算の方法は、就労継続支援B型の工賃の計算方法で条文とあわせて書きました。

身体拘束の記録と送迎記録も、今回は下書きを作らせていません。身体拘束は、やむを得ない理由や経過を事実どおりに残す記録で、AIに文章を整えさせる利点が小さいと考えたためです。

よくある失敗と、始める前に決めること

下書きを作らせてわかった失敗しやすい点を、先に並べておきます。

よくある失敗どうなるか防ぎ方
「計画を作って」とだけ頼む本人が言っていない意向や、根拠のない数字が入る「メモにないことは【要確認】と書いて」と頼む
走り書きを整えさせて、そのまま確定するその場になかった様子の言葉が記録に残るその場にいた職員が読み直してから確定する
氏名を入れたまま頼む個人情報が外部のサービスに渡る「Aさん」に置き換え、特定につながる情報を外す
AIの解説をそのまま研修資料にする事業所の実際の手順と違う説明が広まる通報や相談の手順は事業所の決まりに書き換える

職員がそれぞれ思い思いにAIを使い始める前に、管理者が決めておきたい項目は次のとおりです。

決めること決め方の例
使ってよいサービス事業所として契約・確認したものだけ
入れてよい情報氏名や住所は入れない。置き換えのルールを紙1枚に
下書きを確定する人記録はその場にいた職員、計画はサービス管理責任者
使ってよい書類まずは研修資料と記録の文章整え。計画は下書きまで

AIへの頼み方は、書類ごとに決まった文面を用意しておくと、職員による差が小さくなります。上の依頼文で使った「メモにないことは書かない」「【要確認】と書く」といった一文を、事業所の頼み方の見本として配るところから始めるのが現実的です。

こうした頼み方のルールや、個人情報を扱う現場での使い方を事業所で決めるところまでを含めて学べるのが、障害福祉事業所向けの Claude Code 研修です。 は、日本語で指示を書くとアプリを作れる道具で、この記事で紹介した障害福祉アプリもこれで作りました。研修では、支援記録、個別支援計画、モニタリング記録、工賃計算やサービス提供記録のアプリを作り、自分の事業所の業務で演習します。全10時間(2時間×5回)の、Zoomでのライブ形式です。

まとめ

  • AIに任せやすいのは、走り書きを記録の文章に整える、面接メモを計画の欄に振り分ける、研修の確認問題を作る、といった形を整える仕事です。
  • 本人の意向は、面接で聞いた本人の言葉だけで書きます。AIに頼むときは「メモにないことは【要確認】と書く」と指示すると、推測が混じりにくくなります。
  • 計画は、指定基準どおり、面接、会議、説明と文書での同意、交付を人が行います。AIの出力は原案の前の下書きです。
  • 利用者の氏名など個人情報は外部のAIに入れず、置き換えのルールを事業所で決めておきます。
  • 工賃の計算は道具で行い、AIには説明文の下書きを頼む程度にします。

AIに下書きを頼むことと、毎日使う書式をアプリとして整えることは、同じ書類仕事を軽くする2つの方法です。書式づくりのほうを職員が自分でできるようになりたい事業所は、障害福祉事業所向けの研修の内容を一度のぞいてみてください。