就労継続支援B型事業所の職員や管理者の方が、工賃の決まりと計算のしかたを確かめるための記事です。条文は執筆時(2026年9月)に で確かめ、全国の数字は厚生労働省の資料から引いています。見本の数字はすべて説明のための架空のもので、実在の事業所のものではありません。

先に結論:工賃の決まりと、2つの計算

工賃について押さえることは、決まりが2つ、計算が2つです。

知りたいこと答え根拠
何を払うか生産活動の収入から、生産活動に必要な経費を引いた額に相当する金額基準省令第201条第1項
下限1人1月あたりの工賃の平均額が3,000円を下回ってはならない(一人ひとりの最低額ではない)同条第2項
利用者ごとの額事業所が決めた時間単価や出来高単価で計算する国が決めた一つの式はない
平均工賃月額前年度の工賃支払総額 ÷(延べ利用者数 ÷ 開所日数)÷ 12月令和6年度の報酬改定
全国の平均令和6年度は24,141円厚生労働省の工賃実績の公表

注意したいのは、月の工賃合計を支払人数で割った額と、報酬の区分に使う平均工賃月額が、別の数字だということです。後半の見本では、同じ事業所で15,000円と20,000円に分かれます。

利用者ごとの工賃と平均工賃月額の両方を計算できる工賃計算のアプリを、exbk.jp で無料・登録なしで使えるように公開しています。記事の見本の数字は、このアプリの見本データと同じです。ほかの障害福祉の書類向けのアプリは、障害福祉アプリの一覧にまとめています。

B型の工賃とA型の賃金の違い

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、生産活動(作業)の機会を提供するサービスです。利用者が作業をしたことに対して事業所が支払うお金を工賃と呼びます。

雇用契約を結ぶA型では賃金を払い、最低賃金などの労働法のルールがかかります。B型は雇用契約を結ばないので、支払うのは工賃で、決まりは障害福祉の運営基準に書かれています。

A型(雇用契約あり)B型(雇用契約なし)
利用者に払うもの賃金工賃
主な決まり労働法のルール+運営基準運営基準(基準省令第201条など)
平均額の下限(基準省令)雇用契約を結ばない利用者の工賃の平均額は3,000円以上(第192条第5項)工賃の平均額は3,000円以上(第201条第2項)
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基準省令第201条が決めている4つのこと

工賃の決まりは、「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号。以下、基準省令)の第201条にあります。4つの項の要点を表にまとめます。

決まりの中身現場でやること
第1項生産活動の収入から、生産活動に必要な経費を引いた額に相当する金額を、工賃として支払う生産活動の収支を出し、その分を工賃に回す
第2項利用者それぞれに支払う1月あたりの工賃の平均額は、3,000円を下回ってはならない平均額が3,000円を下回らないか確かめる
第3項利用者の自立を支えるため、工賃の水準を高めるよう努める工賃を上げる工夫を続ける
第4項年度ごとに工賃の目標水準を決め、目標水準と前年度の工賃の平均額を利用者に知らせ、都道府県に報告する目標を決め、利用者への通知と都道府県への報告をする

もう一つ、第202条はA型の第192条第6項をB型にも当てはめています(準用)。工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付(国などから事業所に払われる報酬)をもって充ててはならない、という決まりです。災害その他やむを得ない理由がある場合は例外とされています。工賃のお金は生産活動で稼いだお金から出す、というのが基本の考え方です。

収入から経費を引いた額を、月ごとに見る

第1項を毎月の数字で確かめるには、生産活動の収入と、生産活動に必要な経費を分けて記録しておく必要があります。見本で見てみます。

項目(見本)金額
生産活動の収入412,000円
生産活動に必要な経費(材料費など)268,000円
収入 − 経費144,000円
その月に払った工賃の合計56,475円
87,525円

この見本では、収入から経費を引いた額が、その月の工賃の合計を上回っています。差が大きいまま続くなら、単価の見直しや差額の扱いを事業所で話し合う材料になります。どの経費を生産活動に必要な経費に入れるかや、差額の扱い方は、条文では確かめきれないので、所管の自治体の案内で確かめてください。

利用者ごとの工賃の計算方法

利用者ごとの工賃の決め方(時間給か、出来高か、両方か)について、国は一つの式を決めていません。事業所が工賃の規程などで決めた方法で計算します。よく使われる形は3つです。

決め方計算向いている作業
時間単価作業時間 × 時間単価清掃、軽作業など、時間で区切りやすい作業
出来高出来高数量 × 出来高単価箱詰め、袋詰めなど、数を数えやすい作業
組み合わせ作業時間 × 時間単価 + 出来高数量 × 出来高単価 + 調整額作業が日によって変わる場合

調整額には、皆勤の手当や端数の調整など、事業所の規程で決めたものを入れます。何を調整額にするかを規程に書いておけば、職員が替わっても同じ計算ができます。

見本:3人分の月の工賃

時間単価250円の事業所で、3人の利用者の1か月分を計算した見本です。

利用者(見本)作業日数作業時間時間単価出来高工賃
Aさん21日94.5時間250円23,625円
Bさん18日81時間250円120個 × 30円23,850円
Cさん12日36時間250円9,000円
合計56,475円

Bさんは、81時間 × 250円 = 20,250円に、出来高の120個 × 30円 = 3,600円を足して23,850円です。

3人の合計を支払人数の3で割ると18,825円です。事業所内で今月の1人あたりを見るにはわかりやすい数字ですが、報酬の区分に使う平均工賃月額は、次の章の別の式で求めます。

作業時間は提供記録と合わせる

作業時間や作業日数は、日々のサービス提供の記録と合っている必要があります。工賃の計算表だけを別に作ると、提供記録の利用日と工賃表の作業日数がずれることがあります。月末に両方を並べて確かめれば、ずれに早く気づけます。

提供記録の書き方はサービス提供記録の書き方の記事に、作業の目標を計画にどう書くかは個別支援計画の書き方の記事にまとめています。

平均工賃月額の算定式(令和6年度から)

平均工賃月額は、B型の基本報酬の区分を決めるときなどに使う数字です。厚生労働省の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」では、令和6年度の報酬改定で算定方法が見直され、次の算定式が示されています。

平均工賃月額 = 年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月

使う数字はすべて前年度のものです。かっこの中の「延べ利用者数 ÷ 開所日数」は、1日あたりの平均利用者数を表します。同じ資料では、それまでの算定方法が次のように書かれています。

前年度の各月の工賃支払対象者の総数を出し、前年度に支払った工賃総額をその総数で割って、1人あたり平均工賃月額を出す

見直しの理由として、同じ資料は、障害の特性などで利用日数が少ない方を多く受け入れる場合があることを踏まえた、と説明しています。新しい算定式の導入に伴い、それまでの算定方式の除外要件は廃止するとされています。

見本:新しい式と以前の式で比べる

同じ事業所の1年分の数字を、2つの式に当てはめた見本です。

前年度の数字(見本)
年間工賃支払総額3,600,000円
年間延べ利用者数3,600人
年間開所日数240日
各月の工賃支払対象者の総数(毎月20人 × 12月)240人
計算のしかた計算平均工賃月額
新しい式3,600,000円 ÷(3,600人 ÷ 240日)÷ 12月 = 3,600,000円 ÷ 15人 ÷ 12月20,000円
以前の式3,600,000円 ÷ 240人15,000円

この見本では、毎月20人に工賃を払っていますが、1日に来る人は平均15人です。週に数日だけ通う人が多いと、工賃を払った人の数より、1日あたりの平均利用者数のほうが小さくなります。新しい式はこの小さいほうで割るので、額が大きく出ます。

端数と数え方は自治体の案内で確かめる

延べ利用者数に何を数えるか(たとえば短い時間の利用をどう数えるか)や、端数の扱いは、この記事では確かめきれていません。報酬の区分の判定や都道府県への報告では、厚生労働省の通知と、所管の自治体の案内で確かめてください。

アプリで、月の工賃と平均工賃月額を計算する

ここまでの2つの計算は、冒頭で紹介した工賃計算のアプリでできます。

工賃計算のアプリの画面。見本データとして、架空の事業所の利用者3人分の工賃、月の合計、生産活動の収支が表示されている
工賃計算のアプリの画面。見本データとして、架空の事業所の利用者3人分の工賃、月の合計、生産活動の収支が表示されている

画面の数字はアプリに入っている見本データです。この記事の「見本:3人分の月の工賃」と「収入から経費を引いた額を、月ごとに見る」の表は、この見本データの数字をそのまま使っています。記事を書くときに手で計算し直し、一致することを確かめました。

機能中身
利用者ごとの工賃作業時間 × 時間単価 + 出来高数量 × 出来高単価 + 調整額(円未満切り捨て)
この月の合計工賃を支払う人数、工賃の合計、1人あたり(合計 ÷ 支払人数)
生産活動の収支収入 − 経費と、工賃の合計との差
平均工賃月額の計算前年度の工賃支払総額 ÷(延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月。3,000円を下回ると知らせる
書き出しCSVで書き出し、工賃明細として印刷

アプリの「この月の合計」に出る1人あたりの額は、その月の工賃の合計を支払人数で割った、事業所内の目安です。国の平均工賃月額とは計算が違います。報告や報酬の区分に使う数字は、アプリの「平均工賃月額の計算」の欄に前年度の数字を入れて求め、自治体の案内と突き合わせてください。アプリは円未満を切り捨てて表示します。

ログインしていない間、入力したデータはその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。

このアプリは で作り、計算の式は、この記事で確かめた基準省令と厚生労働省の資料に合わせました。工賃の決め方は事業所ごとに違い、時間単価だけの事業所もあれば、作業ごとに出来高単価が違う事業所もあります。表計算ソフトの計算表を自分の事業所の規程どおりに動く画面にしたいときのために、職員が自分でアプリを作れるようになる障害福祉の現場向けの Claude Code 研修を行っています。

全国の平均工賃月額

厚生労働省は、B型事業所が報告した前年度の工賃の実績を集計して公表しています。直近2年度の数字は次のとおりです。

年度B型事業所の平均工賃月額集計した事業所数備考
令和5年度22,649円16,499か所計算方法の変更で大幅に増加。令和8年3月に23,053円から修正
令和6年度24,141円(対前年比106.6%)18,245か所

出典は、厚生労働省「令和5年度工賃(賃金)の実績について」「令和6年度工賃(賃金)の実績について」です。この公表でいう工賃には、工賃、賃金、給与、手当、賞与その他名称を問わず、事業者が利用者に支払うすべてのものが含まれます。

厚生労働省の公表では、令和5年度の実績から新しい計算方式による平均工賃月額が反映され、令和5年度は計算方法の変更で実績が大幅に増えたと注記されています。令和4年度は17,031円と公表されていますが、これは以前の計算方法による数字です。令和5年度以降と並べて、伸びたと読まないようにしてください。

報酬の区分は最新の通知で確かめる

B型の基本報酬には、平均工賃月額に応じて区分が分かれる報酬体系があります。ただし区分の基準は令和8年度の報酬改定で見直しの対象になっていて、事業所の指定を受けた時期などで扱いが分かれます。この記事では、区分ごとの金額や単位数は書きません。自分の事業所がどの区分になるかは、最新の告示・通知と所管の自治体の案内で確かめてください。

よくある勘違い

工賃について、現場で混同しやすい点をまとめます。

よくある思い込み条文・資料で確かめられること
一人ひとりに毎月3,000円以上払わないといけない第201条第2項は1月あたりの工賃の平均額が3,000円を下回ってはならない、という決まり
今月の合計 ÷ 人数が、報告する平均工賃月額報酬の区分に使う平均工賃月額は、前年度1年分の数字で、1日あたりの平均利用者数を使って求める
足りない分は報酬から工賃に回してよい工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならない(第202条で準用する第192条第6項)
平均工賃は事業所の中だけの数字目標水準と前年度の平均額を利用者に知らせ、都道府県に報告する(第201条第4項)
令和4年度と令和5年度の全国平均は、そのまま比べられる令和5年度から計算方法が変わっている

まとめ

  • 工賃は、生産活動の収入から必要な経費を引いた額に相当する金額を、利用者に支払うもの(基準省令第201条第1項)
  • 1人1月あたりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならない。一人ひとりの最低額ではない(同条第2項)
  • 利用者ごとの工賃は、事業所が決めた時間単価や出来高単価で計算する
  • 平均工賃月額は「前年度の工賃支払総額 ÷(延べ利用者数 ÷ 開所日数)÷ 12月」。令和6年度の報酬改定で変わり、月の合計 ÷ 支払人数とは別の数字になる
  • 全国の平均工賃月額は、令和6年度で24,141円(厚生労働省)

毎月の工賃の計算表を、自分の事業所の規程に合わせて職員の手で作り直したいときは、障害福祉の Claude Code 研修をのぞいてみてください。