障害福祉サービス事業所の管理者と虐待防止の担当者に向けて、虐待防止の研修と委員会の決まりと、記録の残し方をまとめた記事です。
やることは3つです。委員会を開いて結果を職員に伝える、研修を行う、担当者を置く。回数の目安は、委員会が少なくとも1年に1回、研修が年1回以上と新規採用時。そして、どちらも「やった」ことを記録で示せる状態にしておきます。
条文と厚生労働省の通知は、この記事を書くときに原文を開いて確かめました。回数や細かい扱いは、事業所の指定権者(都道府県や市)が独自に示している場合もあるので、最後は所管の指導内容で確かめてください。
先に結論:義務は3つ、回数は「最低1年に1回」
運営基準(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)は、居宅介護の第四十条の二で「虐待の防止」を定め、ほかのサービスでも同じ内容が準用されています。条文と、厚生労働省の解釈通知(条文の読み方を示した通知)を並べるとこうなります。
| やること | 条文の書き方 | 解釈通知で示された目安 |
|---|---|---|
| 虐待防止委員会 | 「定期的に開催する」とともに、結果を従業者に「周知徹底を図る」 | 少なくとも1年に1回は開催が必要。管理者と虐待防止担当者が参画すれば人数は問わない |
| 虐待防止の研修 | 従業者に対し「定期的に実施する」 | 年1回以上。新規採用時には必ず実施。実施内容を記録する |
| 担当者 | 上の2つを適切に行うための「担当者を置く」 | 専任の虐待防止担当者は必置。居宅介護ではサービス提供責任者等を配置 |
条文そのものは「定期的に」としか書いていません。「1年に1回」「年1回以上」は解釈通知で示された数字で、しかも下限です。年1回開けば足りる、と読むより、年1回は最低ライン、と読むほうが実態に合います。
なお、障害者虐待防止法の第十五条も、施設の設置者や障害福祉サービス事業を行う者に、職員の研修や苦情処理の体制づくりなど、虐待防止のための措置を講じることを求めています。運営基準の3つの義務は、この考え方を事業所の運営のルールに落としたものと読めます。
実施日・参加者・内容を残して、次の予定を出すところまでは、exbk.jp の虐待防止の研修・委員会のアプリ(無料・登録なしで使える)でもできます。記録の項目の決め方は、このあと表で説明します。
こうした記録の書式を、事業所の職員が自分でアプリにできるようになる障害福祉向けの Claude Code 研修もあります。プログラミングの経験がなくても、日本語で指示して作る内容です。
虐待防止委員会で決めること・話すこと
委員会の役割は3つ
解釈通知は、虐待防止委員会の役割を次の3つにまとめています。
| 役割 | 中身の例(解釈通知より) |
|---|---|
| 計画づくり | 虐待防止の研修の計画、労働環境・条件を確認して改善する計画、指針の作成 |
| チェックとモニタリング | 虐待が起こりやすい職場環境になっていないかの確認 |
| 起きたあとの検証 | 虐待やその疑いが生じたときに事案を検証し、再発防止策を検討・実行 |
年1回の委員会で「何も起きていないので特になし」で終わらせると、3つのうち計画づくりもチェックも抜けてしまいます。年1回しか開かないなら、少なくとも来年度の研修計画と、職場環境の確認の結果は議題に入れておきたいところです。
誰が入るか
解釈通知では、構成員の責務と役割分担をはっきりさせること、専任の虐待防止担当者を決めることが必要とされています。利用者や家族、専門的な知見のある外部の第三者を加えることは「望ましい」とされています。
小さな事業所で気になるのは人数です。これも解釈通知に書いてあり、管理者と虐待防止担当者が参画していれば、最低人数は問わないとされています。法人単位でまとめて委員会を置くこともできます。
報告と分析の流れ
解釈通知は、委員会まわりの具体的な対応として、次のような流れを想定しています。
- 虐待(不適切な対応の事例も含む)が起きたときに報告する様式を用意する
- 職員は、起きるたびに状況や背景を記録し、その様式で報告する
- 委員会で、報告された事例を集計・分析する
- 起きたときの状況から原因と結果をまとめ、再発防止策を考える
- 労働環境・条件を確かめる様式を用意し、集計・分析する
- 事例と分析結果を職員に周知する
- 再発防止策を講じたあと、効果を確かめる
通知は、この仕組みが職員を罰するためのものではないことにも触れています。報告した職員が責められる雰囲気だと、報告が上がらなくなります。委員会の場でも、この点は毎回確かめておきたいところです。
身体拘束の委員会と一緒に開く
身体拘束等適正化検討委員会とは関係する職種が重なるため、解釈通知では一体的に設置・運営することも差し支えないとされています。一緒に開くなら、議事録の中で「虐待防止」「身体拘束」の議題を見出しで分けておくと、指導の場で聞かれたときに探しやすくなります。
虐待防止の研修の決まりと中身
回数と対象
解釈通知の該当部分を要約すると、次のとおりです。
委員会が作った研修プログラムで、定期的な研修を年1回以上行う。新規採用時には必ず虐待防止の研修を行う。研修の実施内容を記録する。
見落としやすいのは「新規採用時」です。年度の途中で入った職員は、年1回の全体研修を待たずに研修を受ける必要があります。採用のたびに短い研修を行い、その記録も残しておきます。
外部の研修でもよい
解釈通知では、事業所内の職員研修のほか、協議会や基幹相談支援センターなどが行う研修に事業所が参加した場合でも差し支えないとされています。
ただ、外部研修に1人が出ただけだと、ほかの職員は内容を知りません。参加した人が戻ってから職員会議で共有した、という事実まで記録に残すと、研修が事業所全体に届いたことを示せます。
何を学ぶか
厚生労働省の「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」は、研修の例として、障害特性を理解して適切に支援するための知識と技術に関する研修を挙げています。虐待の多くが、障害特性への知識不足や、行動障害への対応の技術不足の結果として起きている、という指摘があるためです。
手引きはまた、年間の研修計画の作成と見直しを虐待防止委員会で定期的に行うことにも触れています。研修と委員会は別々の行事ではなく、委員会が研修の計画を立て、研修の結果が次の委員会の材料になる、という関係です。
研修の題材の見本を表にします(事業所の状況に合わせて選ぶための例です)。
| 題材の見本 | ねらい |
|---|---|
| 虐待の5つの類型と、不適切な支援の具体例 | どこからが虐待かの線を職員でそろえる |
| 自分たちの支援記録や事例を使った振り返り | 日々の支援の中の「気になる関わり」に気づく |
| 障害特性と行動の背景の理解 | 行動への対応の技術を身につける |
| 身体拘束等の適正化 | 身体拘束を行う場合の手続きと記録を確認する |
| 通報の義務と、通報した職員が守られること | 迷ったときに動けるようにする |
最後の行について、障害者虐待防止法の第十六条は、障害者福祉施設従事者等による虐待を受けたと思われる障害者を見つけた人は、速やかに市町村に通報しなければならないと定めています。同じ条文で、職員が通報したことを理由に解雇その他の不利益な扱いを受けないことも定めています。研修でこの2点を伝えておくと、職員が迷ったときの判断の助けになります。
身体拘束等の適正化の研修についても、解釈通知は年1回以上と新規採用時の実施、内容の記録を求めています。虐待防止の研修の中で身体拘束等の適正化を扱った場合は、身体拘束等の適正化の研修を行ったものとみなして差し支えない、ともされています。1回の研修で両方を扱うなら、研修記録の「内容」の欄に、両方を扱ったことを書いておきます。
実施の記録に残す項目
研修も委員会も、指導の場で確かめられるのは「行ったことが記録で確認できるか」です。毎回同じ項目で残すと、抜けが出にくくなります。
委員会の記録
| 項目 | 記入の見本 |
|---|---|
| 開催日・時間 | 2029年10月2日 14:00〜15:00(見本) |
| 開催方法 | 対面/オンライン(条文でテレビ電話装置等の活用が認められている) |
| 出席者 | 管理者、虐待防止担当者、生活支援員2名(見本) |
| 議題 | 年間の振り返り、職場環境の確認結果、来年度の研修計画 |
| 検討した内容と決まったこと | 事例の集計結果、再発防止策、担当と期日 |
| 職員への周知の方法 | 職員会議で報告、議事録を回覧し確認の署名 |
| 次回の予定 | 半年後に開催(見本) |
条文は委員会の開催と並べて、結果を職員に「周知徹底を図る」ことを求めています。開いただけで周知の記録がないと、義務の半分が抜けて見えます。回覧の確認欄や、会議での報告日を残しておきます。
研修の記録
| 項目 | 記入の見本 |
|---|---|
| 実施日・時間 | 2029年9月11日 17:00〜18:00(見本) |
| 研修の種類 | 定期研修/新規採用時研修/外部研修への参加 |
| 講師・実施者 | 虐待防止担当者(見本) |
| 参加者 | 氏名の一覧。欠席者には後日どう伝えたか |
| 内容 | 不適切な支援に気づくための事例検討(見本) |
| 使った資料 | 資料名、配布したもの |
| 参加者の理解の確認 | 振り返りシートやアンケートの有無 |
欠席した職員の扱いは抜けやすい項目です。後日に資料と録画で受けた、個別に説明した、などを参加者の欄に書き足しておくと、全員に届いたかどうかが一目でわかります。
保存期間は、運営基準の記録の整備の条文と、指定権者の条例で定められている場合があります。虐待防止の研修・委員会の記録を何年残すかは、所管の自治体の取扱いで確かめてください。
アプリで記録と次の予定を管理する

exbk.jp の虐待防止の研修・委員会のアプリは、上の表のうち「いつ・誰が・何を」の部分を残すためのものです。画面に出ているのは、アプリに入っている見本データ(架空の就労継続支援B型事業所)です。
- 虐待防止委員会、虐待防止の研修、身体拘束等適正化委員会、身体拘束等の適正化の研修の4つを並べて、最新の実施日を表示します
- 事業所で決めた実施の間隔(月数)を入れると、次の予定と残りの日数を出します。一度も記録がない種類は「記録なし」と表示されます
- 虐待防止の担当者と、身体拘束等の適正化のための指針の整備日も残せます
- ログインしていない間は、入力したデータはその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません
実施の間隔は自分で決めて入れる項目です。画面の注記にもあるとおり、基準は「定期的に」としか書いていないので、解釈通知の下限と所管の指導内容を見て、事業所で決めた間隔を入れてください。
新規採用時の研修は、年1回の定期研修とは別に、入職のたびに記録を足す使い方になります。
よくある抜けと、先に決めておくこと
よくある抜け
| 抜け | 起きやすい理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 年度途中の新入職員の研修がない | 年1回の全体研修だけを予定に入れている | 入職時の研修を採用の手順に組み込む |
| 委員会の結果を周知した記録がない | 議事録を作って満足してしまう | 回覧の確認欄か、会議で報告した日を残す |
| 外部研修の内容が事業所に共有されていない | 参加した本人だけが知っている | 伝達の場を設け、その日付を記録する |
| 委員会が「特になし」で終わる | 虐待が起きていないと議題がないと思っている | 研修計画と職場環境の確認を毎回の議題にする |
| 担当者が異動して空席になる | 担当者を運営規程に書いたまま更新していない | 人事異動のたびに担当者の欄を見直す |
始める前に決めること
- 虐待防止担当者を誰にするか(解釈通知では必置)
- 委員会を事業所単位で開くか、法人単位で開くか
- 身体拘束等適正化検討委員会と一緒に開くか
- 年間の研修計画(何月に、どの題材で、誰が講師か)
- 新規採用時の研修を、採用の手順のどこに入れるか
- 記録の書式と、置き場所
運営基準は、事業所の運営規程に「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めることも求めています。担当者の名前や研修の方法は、運営規程の記載と実際の運用がずれていないかもあわせて確かめます。
記録の書式を、事業所の中で作れるようにする
研修の記録や委員会の議事録は、事業所ごとに少しずつ形が違います。法人単位で開くのか、身体拘束の委員会と一緒に開くのかで、必要な欄も変わります。
exbk.jp の障害福祉アプリは、(日本語で指示してアプリを作れる道具)で作りました。事業所の決まりに合った書式を職員が自分でアプリにできるように、障害福祉の事業所向けの Claude Code 研修を行っています。対象は生活支援員やサービス管理責任者、事務員など、支援記録や計画を作っている職員で、Zoomでのライブ形式、5回の研修です。
研修資料の下書きを生成AIに作らせることもできますが、法令の回数や条文番号は、AIがもっともらしい誤り()を書くことがあります。数字は必ず原文で確かめてください。書類仕事でAIを使うときの注意は、障害福祉のAI活用は書類からにまとめています。
支援記録の書き方は支援記録の書き方、個別支援計画の作り方は個別支援計画の書き方で紹介しています。研修で事例検討をするときの題材選びにも使えます。
まとめ
- 運営基準の義務は3つ。委員会の開催と結果の周知、研修の実施、担当者の配置
- 条文は「定期的に」。解釈通知では、委員会は少なくとも1年に1回、研修は年1回以上と新規採用時に必ず行う
- 委員会は管理者と虐待防止担当者がいれば人数は問わず、法人単位や身体拘束の委員会との一体運営もできる
- 記録は、日付・参加者・内容に加えて、職員への周知と欠席者への伝え方まで残す
- 回数や保存期間は、所管の指定権者の指導内容でも確かめる
記録の書式を自分たちの手で整えたいときは、障害福祉向けの Claude Code 研修の内容も見てみてください。
