アセスメントシートは、個別支援計画を書くための材料を集める書類です。ここが薄いと、計画の目標が「作業に慣れる」のような、誰にでも当てはまる文になってしまいます。
この記事では、基準省令の条文で定められている手順を確認したうえで、シートの欄ごとに何を聞き、どう書くかを見本の表でまとめます。登場する事業所名も利用者名も架空で、数値はすべて書き方の見本です。
読む人は、サービス管理責任者と、聞き取りに同席する支援員を想定しています。
先に結論:アセスメントで押さえるのはこの6つ
条文の言葉を、シートの欄に置き換えると次のようになります。
| シートの欄 | 条文が求めていること | 書くときの目安 |
|---|---|---|
| 本人の意向 | 利用者の生活に対する意向 | できるだけ本人の言葉のまま「」で残す |
| 家族の意向 | 家族の生活に対する意向 | 本人の意向と別の欄に分けて書く |
| 置かれている環境 | 置かれている環境の評価 | 住まい、同居者、支援者、利用中の他サービス |
| 日常生活全般の状況 | 日常生活全般の状況等の評価 | 食事、身の回り、金銭管理、通所の様子 |
| 有する能力 | 利用者の有する能力の評価 | できていること、得意なこと、経験 |
| 解決すべき課題 | 生活全般の質を向上させるための課題 | 支援が必要なことを、場面つきで書く |
この6つは、あとで個別支援計画の原案にそのまま引き継がれます。条文が原案の記載事項として挙げているのは、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、サービスの目標及びその達成時期、提供する上での留意事項などです。つまりアセスメントの欄と計画の欄は、もともと対応する形になっています。
exbk.jp のアセスメントシートのアプリは、この並びのまま入力できるようにした画面です。無料で、ログインしなくてもブラウザだけで試せます。事業所で共有したいときは無料のアカウント登録で、事務所のパソコンと支援の場のタブレットに同じデータを出せます。
こうした書類を業者に頼まず職員が自分で作れるようにする障害福祉の Claude Code 研修も行っています。対象は、支援記録や計画、工賃計算の作成を担当している生活支援員、職業指導員、サービス管理責任者、事務員の方です。

アセスメントは基準省令のどこに書かれているか
根拠は、障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの基準を定めた省令(平成18年厚生労働省令第171号)です。療養介護の章にある第五十八条が、個別支援計画の作成手順を定めた条文の本体で、生活介護など他のサービスの章は第九十三条などでこの条文を準用しています。
第五十八条の第二項に、アセスメントの定義そのものが書かれています。
サービス管理責任者は、療養介護計画の作成に当たっては、適切な方法により、利用者について、その有する能力、その置かれている環境及び日常生活全般の状況等の評価を通じて利用者の希望する生活や課題等の把握(以下この章において「アセスメント」という。)を行うとともに、利用者の自己決定の尊重及び意思決定の支援に配慮しつつ、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上での適切な支援内容の検討をしなければならない。
ここから読み取れることが3つあります。評価の対象は能力と環境と日常生活全般の状況であること。目的は「利用者の希望する生活や課題等の把握」であって、職員が課題を決めることではないこと。そして把握で終わらず、支援内容の検討までが同じ条文に入っていることです。
面接は省略できない
第四項は、アセスメントは利用者に面接して行わなければならないと定めています。あわせて、面接の趣旨を利用者に十分に説明し、理解を得なければならないとも書かれています。
書類を先に埋めてから本人に見せる、という順番にはなりません。シートの「聞き取りの方法」の欄に「本人と面接(母が同席)」のように書き残しておくと、誰とどう話したかがあとから分かります。
意思を伝えにくい人への配慮
第三項は、利用者が自ら意思を決定することに困難を抱える場合について、意思決定の支援を適切に行うため、本人の意思及び選好並びに判断能力等について丁寧に把握しなければならないとしています。
ここでやりがちなのが、支援者の推測を本人の意向の欄に書いてしまうことです。「工賃を増やしたいと思っている」は、本人がそう言ったのか、通帳を見て職員がそう考えたのかで、意味がまるで違います。言葉が出にくい方でも、選択肢を示したときの反応、通所の様子、以前に口にしていた希望など、根拠になる事実は残せます。根拠と解釈を分けて書いてください。
欄ごとの書き方
ここからは、シートの欄を順に見ていきます。表の記入例はすべて架空の見本です。
本人の意向
「どんな生活や働き方を望んでいるか」を聞く欄です。支援者の要約より、本人の言葉のほうが計画の役に立ちます。
| よくない書き方 | 書き直した見本 | 直したところ |
|---|---|---|
| 就労意欲あり。 | 「毎日通って、自分で稼いだお金で好きな本を買いたい」 | 本人の言葉をそのまま「」で残した |
| 特に希望なし。 | 「今のままでいい」と話される。作業の種類を3つ示すと、袋詰めを指さされた。 | 希望なしと判断した根拠を書いた |
「特に希望なし」は、意向がないのではなく、聞き方が届いていないことのほうが多い欄です。選択肢を見せる、写真を使う、別の日に聞き直すといった工夫をしたなら、それも書いておくと次の担当者が助かります。
家族の意向
本人の意向と同じ欄にまとめないでください。条文も「利用者及びその家族の生活に対する意向」と、両方を並べて挙げています。食い違うときは、食い違ったまま両方書きます。
| よくない書き方 | 書き直した見本 |
|---|---|
| 家族も同意。 | 体調を崩さずに通い続けてほしい。「週5日は無理をさせたくない」と母。 |
| 家族の理解が乏しい。 | 一般就労については「まだ早いのでは」と母。本人は「働いてみたい」と話しており、意向が分かれている。 |
「理解が乏しい」のような評価は、読む人に何も伝えません。誰が何と言ったかに置き換えます。
置かれている環境
住まい、同居者、支援者、利用中の他のサービスを書きます。相談支援事業所がサービス等利用計画を作っているなら、その事業所名も入れておくと、計画の交付先を確かめるときに使えます。
見本:
母と2人暮らし。相談支援事業所【サンプル】ひかり相談室がサービス等利用計画を作成。平日は当事業所、土曜は移動支援を利用。
日常生活全般の状況
食事、身の回りのこと、金銭管理、通所の様子など、暮らしの側面を一通り押さえます。ここは「自立」「一部介助」だけで済ませると、あとで何も使えません。
| よくない書き方 | 書き直した見本 |
|---|---|
| ADLは自立。 | 身の回りのことは自分でできる。金銭管理は母が手伝っている。朝の準備に時間がかかる日がある。 |
| 遅刻が多い。 | 8月は20日の通所のうち4日、30分ほど遅れて到着。いずれも前日に就寝が遅かったと本人が話している。 |
数え方が決まっている項目(通所日数、遅刻の回数)は、印象ではなく数で書くと、半年後の見直しのときに比べられます。
心身の状況
アプリの欄では「障害の特性・服薬・通院・配慮が必要なこと」としています。ここに書くのは、支援の場で配慮が必要になることです。
月1回通院。季節の変わり目に疲れが出やすい。大きな音が苦手で、作業室の機械音が続くと席を立つことがある。
診断名や処方の内容をどこまで書くかは、事業所の方針と本人の同意によります。支援に必要のない医療の情報まで集める必要はありません。の上でも、集める情報は利用目的の範囲にとどめるのが原則です。
社会参加・作業・就労の状況
これまでの経験と、今できている作業を書きます。「有する能力」の評価にあたる部分です。
以前は一般企業で2年勤務。袋詰めなど手順の決まった作業が得意。工程が途中で変わると手が止まりやすい。
得意なこと・好きなこと・できていること
課題の欄より先に、この欄を埋めてください。計画の目標は、できていないことを埋める形だけでなく、できていることを広げる形でも書けます。
作業が丁寧。数を数えるのが正確。後輩に道具の置き場所を教えている場面がある。
解決すべき課題
条文の言葉では「生活全般の質を向上させるための課題」です。ここが個別支援計画の目標の元になります。
課題は、場面とセットで書くと目標に変換しやすくなります。
| 場面が抜けている | 書き直した見本 | 計画の目標にすると |
|---|---|---|
| 疲れやすい。 | 作業の途中で休憩を申し出ることが難しく、疲れがたまりやすい。 | 午前と午後に1回ずつ、自分から休憩を申し出る |
| コミュニケーションが苦手。 | 分からない工程があっても職員に聞けず、手が止まったまま待っていることがある。 | 困ったときにカードを使って職員に知らせる |
左の列のままでは、目標が「体調管理に気をつける」で終わります。右の列まで書いておけば、目標と達成時期を決める作業がほとんど残りません。
面接の進め方
条文の手順をそのまま並べると、次の流れになります。
| 順番 | すること | 条文の該当箇所 |
|---|---|---|
| 1 | 面接の趣旨を本人に説明し、理解を得る | 第五十八条第四項 |
| 2 | 本人に面接してアセスメントを行う | 第四項 |
| 3 | 意思決定に困難がある場合は、意思や選好を丁寧に把握する | 第三項 |
| 4 | 支援内容を検討し、計画の原案を作る | 第二項、第五項 |
| 5 | 担当者を集めた会議を開き、原案について意見を求める | 第六項 |
| 6 | 原案を本人または家族に説明し、文書で本人の同意を得る | 第七項 |
| 7 | 作成した計画を本人と指定特定相談支援事業者等に交付する | 第八項 |
第六項の会議は、テレビ電話装置等を活用して行うことができると条文に明記されています。関係する事業所が離れている場合でも、集まれないことを理由に会議を省く必要はありません。
この段取りを通しで確認したい方は、個別支援計画の書き方もあわせて読んでください。アセスメントの次の工程を扱っています。
よくある失敗
聞き取りそのものより、書き方でつまずくことのほうが多いようです。現場でよく見かける形を4つ挙げます。
推測を本人の意向として書く。 「工賃を上げたいと思われる」は、意向ではなく職員の見立てです。本人の欄には言葉を、見立ては別の欄に書きます。
前回のシートを写す。 半年前と一字一句同じアセスメントは、評価をしていないのと同じです。変わらなかったなら「前回から変化なし」と書けばよく、変化を確かめた日付を入れておきます。
課題を支援者の困りごとで埋める。 「送迎時に時間がかかる」は事業所側の課題です。本人の生活の質に引き直すと「朝の準備に時間がかかり、出発に間に合わない日がある」になります。
計画の欄と用語がそろっていない。 アセスメントで「疲れやすい」と書き、計画で「体力面」と書くと、対応関係が追えません。シートと計画で同じ言葉を使ってください。
個別支援計画へのつなげ方
アセスメントの欄と、計画の原案の記載事項は次のように対応します。
| アセスメントの欄 | 計画の原案の欄 |
|---|---|
| 本人の意向 | 利用者の生活に対する意向 |
| 家族の意向 | 家族の生活に対する意向 |
| 置かれている環境、日常生活全般の状況、心身の状況 | 総合的な支援の方針を決める材料 |
| 解決すべき課題 | 生活全般の質を向上させるための課題 |
| 得意なこと、社会参加・作業の状況 | 目標と、その達成時期を決める材料 |
条文は、事業所が提供するサービス以外の保健医療サービスや他の福祉サービスとの連携も、原案に位置付けるよう努めることとしています。相談支援事業所や通院先との関わりをアセスメントで拾っておけば、この部分も埋まります。
アセスメントシートのアプリは、同じ画面の上の並びに個別支援計画とモニタリングの画面を置いています。利用者を選ぶと、アセスメントで書いた課題を見ながら計画を書けます。印刷もできるので、会議の場に紙で出せます。
支援記録の書き方は支援記録の書き方にまとめました。日々の記録が具体的であるほど、次のアセスメントで書くことに困らなくなります。
モニタリングと見直し
計画を作ったあとの手順も、同じ第五十八条に入っています。
第九項は、計画の作成後に実施状況の把握を行うこととし、これに「利用者についての継続的なアセスメントを含む」と書いたうえで、モニタリングと呼んでいます。見直しの頻度は「少なくとも六月に一回以上」です。
第十項は、モニタリングにあたって利用者や家族等との連絡を継続的に行うこととし、特段の事情がない限り、定期的に利用者に面接すること、定期的にモニタリングの結果を記録することを求めています。
つまりアセスメントは入所時の一度きりの作業ではありません。半年ごとに、前回書いたシートを開いて、変わったところを確かめる仕事です。第十一項では、第二項から第八項までの規定が計画の変更にも準用されるとされています。変更のときも、面接と会議と同意と交付の手順は同じです。
記録の保存
記録の整備については、サービス種別ごとの章に条文があります。療養介護の第七十五条を例にとると、個別支援計画、サービスの提供の記録、市町村への通知に係る記録、身体拘束等の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況等の記録を整備し、サービスを提供した日から五年間保存しなければならないとされています。
アセスメントシートそのものは、この条文で列挙された記録の中に名指しでは出てきません。とはいえ計画の根拠になる書類なので、計画と同じ期間そろえて保管している事業所が多いはずです。自治体の条例で別の定めがある場合もあるので、保存年数を決めるときは所管の自治体に確かめてください。
虐待の防止に関する記録や研修の記録も、同じように整備が求められる書類です。そちらは虐待防止研修の進め方で扱っています。
AIに下書きを作らせてみた
この記事を書くのに使った生成AI()に、見本の聞き取りメモを渡して、アセスメントの欄の下書きを作らせてみました。以下はその結果です。実在の利用者の情報は使っていません。
渡した見本のメモ:
9/3 面談 本人+母同席。本人「毎日来たい」「本が買いたい」。袋詰め好き。途中で疲れても休憩と言えない。母は体調心配、週5は不安。朝の支度に時間かかる日あり。金銭は母が管理。月1通院。
返ってきた下書き:
本人の意向:「毎日通いたい」「自分で稼いだお金で本を買いたい」と話される。
家族の意向:体調を崩さずに通い続けてほしい。週5日の通所には不安があると母が話している。
日常生活の状況:金銭管理は母が行っている。朝の準備に時間がかかる日がある。
解決すべき課題:作業中に疲れを感じても、自分から休憩を申し出ることが難しい。
メモの断片が、欄ごとの文の形にはなりました。ただし、そのまま提出できるものではありません。「休憩と言えない」が「申し出ることが難しい」に変わっていて、言えないのか言いにくいのかという肝心なところが、AIの言葉遣いで埋められています。月1回の通院にはどの欄にも触れていません。
使いどころは、面談直後のメモを欄ごとに仕分けさせるところまでだと考えています。仕分けた先の言葉が本人の言ったことと合っているかは、面談にいた人が見るしかありません。障害福祉での生成AIの使いどころと注意点は障害福祉のAI活用にまとめました。
なお、利用者の氏名や障害の状況をそのまま外部のAIサービスに入力するかどうかは、事業所として先に決めておく必要があります。決めないまま各自の判断で使い始めるのが、いちばん危ない状態です。
事業所の書式に合わせたい場合
アセスメントの様式は、自治体や法人でひな形が配られていることが多く、欄の名前も並びも事業所ごとに違います。市販のソフトに合わせて聞き取りの順番を変えるのは、本末転倒です。
アセスメントシートのアプリは で作りました。欄の名前も並びも、実際に聞き取りをする人が決めたほうが、面談の流れどおりになります。事業所の様式に合わせて職員が自分で作れるようにするClaude Code 研修では、支援記録、個別支援計画、モニタリング記録、工賃計算といった書類をアプリにする手順を、全5回の Zoom のライブで扱っています。
まとめ
- アセスメントは、能力と環境と日常生活全般の状況を評価して、本人が希望する生活と課題を把握する手続きだと、第五十八条第二項に定められている
- 本人への面接は必須で、面接の趣旨を説明して理解を得ることも条文に書かれている
- 意思決定に困難がある場合は、意思や選好を丁寧に把握する。支援者の推測を本人の意向の欄に書かない
- 課題は場面とセットで書く。そこまで書けば、計画の目標と達成時期はほぼ決まる
- 計画の作成後はモニタリングを行い、少なくとも六月に一回以上見直す。変更のときも面接から交付までの手順は同じ
書式づくりまで職員の手に置いておくと、様式が変わったときに待たされません。障害福祉の Claude Code 研修では、その手順を現場の書類を題材に練習します。
