賃貸住宅の管理会社や大家さんの担当者に向けて、退去立会いの当日に何をどの順で確かめ、どう記録に残すかをまとめました。
費用をだれが持つかの考え方は、原状回復の費用負担の記事で整理しています。こちらは当日の手順とチェック項目に絞ります。表に出てくる例は書き方の見本で、実在の物件や入居者の話ではありません。
先に結論:入居時と同じ項目で書き、写真は組で残す
立会いでいちばん大事なのは、入居時の記録と同じ項目で、場所ごとに状態を書き、写真を組で残すことです。費用の負担をその場で決め切るより、あとで誰が見ても同じ状態が分かる記録を作るほうを先にします。
| 当日の要点 | やること |
|---|---|
| 持ち物 | 入居時の確認リストと写真、契約書、メジャー、懐中電灯 |
| 回る順番 | 玄関から奥へ、場所ごとに。設備は動かして確かめる |
| 書き方 | 「どこに・何が・どのくらい」を数字と目印で書く |
| 写真 | 1か所につき引きと寄りを組で撮り、記録と番号で結ぶ |
| 費用 | その場で言い切らず、見積もりと契約を確かめて後日書面で伝える |
紙の確認リストとデジカメの写真を別々に持つと、あとで突き合わせる手間がかかります。exbk.jp の退去立会いチェック(無料・登録なしで使える)なら、場所ごとの状態と写真を1つの画面で持てます。ほかの不動産向けアプリはアプリ一覧にまとめています。
退去立会いをする理由
退去立会いは、借主と管理会社(または大家さん)が一緒に部屋を見て、傷や汚れの場所と状態について認識をそろえる場です。
ガイドラインが挙げるトラブルの原因
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」は、トラブルの大きな原因として、入居時と退去時の物件の確認が不十分なことを挙げています。契約が長くなるほど、当事者の記憶だけではあいまいになるからです。
そのためガイドラインは、入居時と退去時にチェックリストを作り、部位ごとの状態を当事者が立ち会って確かめることが必要だとしています。平面図への書き込みや写真など、目で見て分かる手段を併せて使うことも勧めています。こうしたチェックリストは、のちに争いになったときの証拠資料にもなりうる、とも書かれています。数か月後に「言った・言わない」にならないための資料、と考えておくとよいでしょう。
金額は後日、が多数派
国土交通省が令和5年3月に出した参考資料では、令和4年のアンケートの結果が紹介されています。退去時に借主の立会いのもとで点検し、修繕が必要な部位をその場で伝え、精算書を後日送る、という回答が約6割でした。
立会いの場は確認と記録、金額は後日。この進め方が多いようです。
立会いの前に用意するもの
当日の出来は、準備でほぼ決まります。入居時の記録がないと、傷が入居前からあったのかを比べる手段がありません。
| 用意するもの | なぜ要るか |
|---|---|
| 入居時の物件状況の確認リスト | 退去時の状態と、同じ場所どうしで比べるため |
| 入居時の写真 | 入居前からあった傷かどうかを見分けるため |
| 賃貸借契約書 | ハウスクリーニングなどの特約があるかを確かめるため |
| 記録用紙(またはアプリ) | 場所ごとに状態・写真・備考を書くため |
| 写真を撮る端末 | 引きと寄りの写真を残すため。電池の残りも確かめる |
| メジャー | 傷の長さや範囲を数字で書き、写真に写し込むため |
| 懐中電灯 | 押入れの奥、流し台の下、浴室の隅など暗い場所を見るため |
| 鍵の本数の控え | 契約時に渡した本数と、返却された本数を比べるため |
国土交通省の参考資料は、借主に向けて「入居時に撮影した写真や物件状況リスト等を用意しておきましょう」と書いています。管理会社側も同じものを持って行けば、その場で両者が同じ資料を見て話せます。
当日の流れ
決まった順番で回ると漏れが減ります。1K〜2DK程度の部屋を想定した見本です。
| 順番 | すること | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 1 | 借主と顔を合わせ、確認の進め方を伝える | 立会い日、立ち会った人の名前 |
| 2 | 契約書と入居時の記録を一緒に見る | 特約の有無、入居日 |
| 3 | 玄関から奥へ、場所ごとに確認する | 場所・箇所ごとの状態、写真 |
| 4 | 設備を動かして確かめる | エアコン、換気扇、給湯などが動くか |
| 5 | 気になった点を借主と一緒に見直す | 双方で確かめた内容、借主の言葉 |
| 6 | 鍵を受け取る | 返却された鍵の本数 |
| 7 | 記録に両者で確認の署名をする | 署名、日付 |
| 8 | その後の流れを伝える | 精算の連絡時期と方法 |
ガイドラインの確認リストの例にも、最後に「上記の通り物件各箇所の状況について点検し、確認しました」という欄があります。借主、貸主、管理業者と確認担当者が名前を書く形です。確認した内容を両者で認めた形を残しておきます。
場所ごとのチェックリスト
国土交通省の「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)」は、場所を次のように分けています。
玄関・廊下/台所・食堂・居間/浴室/洗面所/トイレ/各居室/その他
それぞれの場所の箇所ごとに、入居時と退去時の損耗の有無と具体的な状況、修繕・交換の要否などを書く形です。以下の表は、このリストの箇所を並べ、当日に見るとよい点を添えました。「見る点」の欄は実務で確かめる目安として書いたもので、リストの文言ではありません。
玄関・廊下
| 箇所 | 見る点の目安 |
|---|---|
| 天井 | しみ、はがれ |
| 壁 | 傷、へこみ、画びょうなどの穴、汚れ |
| 床 | 傷、へこみ、変色 |
| 玄関ドア | 傷、へこみ、開け閉めの具合 |
| 鍵 | かかり具合、返却された本数 |
| チャイム | 鳴るか |
| 下駄箱 | 扉の具合、中の汚れ |
| 照明器具 | つくか、割れ |
| 郵便受け | 開け閉め、鍵 |
台所・食堂・居間
| 箇所 | 見る点の目安 |
|---|---|
| 天井 | しみ、油やすすの汚れ |
| 壁 | 冷蔵庫の後ろの黒ずみ、コンロまわりの油汚れ、穴 |
| 床 | 傷、へこみ、水まわりの変色 |
| 流し台 | さび、傷、排水口のにおい |
| 戸棚類 | 扉の具合、中の汚れ |
| 換気扇 | 動くか、油汚れ |
| 給湯機器 | お湯が出るか |
| 電気・ガスコンロ | 火がつくか、焦げ |
| 照明器具 | つくか |
| 給排水設備 | 水漏れ、流れの悪さ |
浴室・洗面所・トイレ
| 場所 | 箇所 | 見る点の目安 |
|---|---|---|
| 浴室 | 天井・壁・床 | かび、傷、ひび |
| 浴室 | ドア/風呂釜/浴槽/シャワー | 動き、ひび、水漏れ |
| 浴室 | 給排水設備/照明・換気扇/タオル掛け | 流れ、動くか、ぐらつき |
| 洗面所 | 天井・壁・床/ドア | かび、傷、水はねの跡 |
| 洗面所 | 洗面台/洗濯機置場/給排水設備 | ひび、水漏れ、排水口の汚れ |
| 洗面所 | 照明器具/タオル掛け | つくか、ぐらつき |
| トイレ | 天井・壁・床/ドア | しみ、傷 |
| トイレ | 便器/水洗タンク | ひび、水漏れ、流れ |
| トイレ | 照明・換気扇/ペーパーホルダー | 動くか、ぐらつき |
居室とその他
| 場所 | 箇所 | 見る点の目安 |
|---|---|---|
| 各居室 | 天井・壁・床 | 家具の跡、日焼け、たばこのヤニ、穴、傷 |
| 各居室 | 間仕切り/押入・天袋 | ふすまや扉の破れ、かび |
| 各居室 | 外回り建具 | 窓・網戸の動き、破れ、結露の跡 |
| 各居室 | 照明器具 | つくか |
| その他 | エアコン | 動くか、リモコンの反応 |
| その他 | スイッチ・コンセント | 割れ、焦げ |
| その他 | バルコニー/物干し金具 | 汚れ、破損 |
| その他 | TV・電話端子 | 割れ、抜け |
自社の物件に合わせて足し引きする
リストの例は「適宜追加・削除」して使う前提です。ロフトや収納、給湯器のリモコン、インターホンの画面など、物件にあるものは足し、ないものは消して、自社の物件に合った表にしておきます。
ワンルーム中心の会社と、ファミリー向けや戸建てを多く扱う会社では、見る場所も変わります。この足し引きを紙の書式でやり直すのは手間です。自社の確認リストをそのまま画面にしたい場合は、社員が自分で業務アプリを作れるようになる不動産業向けの Claude Code 研修で、進め方を紹介しています。
状態の書き方は「どこに・何が・どのくらい」
「傷あり」「汚れ」とだけ書くと、数か月後に請求の説明をするとき、どの傷の話か分からなくなります。
ガイドラインの確認リストにも、損耗の有無に丸を付ける欄とは別に、具体的な状況を書く欄があります。入居時の欄の注記には、写真などを撮影して添付し、より具体的にすることが望ましいと書かれています。
| よくない書き方 | 伝わる書き方(見本) |
|---|---|
| 床 傷あり | 居室の床、窓側から約1mの位置に、長さ約30cmの引きずった傷 |
| 壁 汚れ | 台所の冷蔵庫の後ろの壁に、幅約60cmの黒ずみ |
| 換気扇 汚れ | 換気扇の羽根と周りに油汚れ。清掃で落ちるか要確認 |
| エアコン 不具合 | エアコンは冷房で動くが、リモコンの反応が悪いときがある |
| 特になし | 玄関ドアと鍵、開け閉め・かかりに問題なし。鍵2本返却 |
書くときに気をつけるのは、次の3点です。
- 場所を目印で書く:「窓側から約1m」「冷蔵庫の後ろ」のように、部屋にいなかった人でも見つけられる書き方にする
- 大きさを数字で書く:「大きい」ではなく「約30cm」。メジャーを当てた写真と組にする
- 判断と事実を分ける:「清掃で落ちるか要確認」のように、まだ分からないことは分からないと書く
状態を「問題なし/汚れ/傷/要確認」のような短い区分で付けておくと、あとで一覧にしたとき、問題のある箇所だけを拾えます。
写真の撮り方
写真は、入居時の状態と比べるための証拠で、借主と認識をそろえる道具にもなります。国土交通省の参考資料は、入居時に写真を撮っておくことを、入居中に生じた損耗かどうかを判断するための客観的な証拠として有効だとしています。
| 撮り方 | 理由 |
|---|---|
| 1か所につき「引き」と「寄り」を組で撮る | 引きで部屋のどこかが、寄りで傷の中身が分かる |
| メジャーを当てて撮る | 大きさが写真だけで伝わる |
| 入居時の写真と同じ向き・同じ距離で撮る | 見比べたときに差が分かりやすい |
| 問題がない箇所も撮る | 確認したことの記録になる |
| 写真と記録の項目を番号で結ぶ | 「No.3の写真」と言えば、どの箇所か分かる |
| 暗い場所は懐中電灯で照らして撮る | 押入れの奥や流し台の下のかびが写る |
撮った写真は、立会いの日付と部屋番号が分かる形で保管します。端末の中にばらばらに残すと、数か月後にどの物件の写真か分からなくなります。
入居時の記録との比べ方
退去時の記録は、入居時の記録と並べてはじめて役に立ちます。ガイドラインの確認リストの例も、1つの表の中に入居時と退去時の欄が横に並ぶ形です。退去時の注記には、入居時に記入した状況などをもとに、部屋・部位ごとに確かめると書かれています。
比べ方の手順は次のとおりです。
- 入居時のリストで「損耗あり」だった箇所に、先に印を付けておく
- 当日は、その箇所を入居時の写真と同じ向きで撮る
- 入居時より広がっている、増えている場合は、その差を具体的に書く
- 入居時に記録がない傷は、「入居時の記録なし」と事実として書く
- 借主から「入居時からあった」と言われた箇所は、その言葉を記録に残す
入居時の記録がない場合、退去時に見つかった傷がいつできたのかを示すのは難しくなります。ガイドラインは、原状回復の問題を「出口」(退去時)ではなく「入口」(入居時)の問題として捉えるとしています。退去立会いの記録の質を上げる近道は、入居時の記録を同じ項目で残しておくことです。
費用はその場で言い切らない
立会いの場で、借主から「これはいくらになりますか」と聞かれることがあります。その場で金額や負担の割合を言い切ると、あとで見積もりや経過年数を確かめたときに食い違うことがあります。
ガイドラインの費用算定の手順の図でも、立会いで物件の状況を確かめたあと、負担割合の検討、経過年数の確定、見積費用の確認を経て、精算に進む流れです。立会いの場では、次のように伝えるのが無難です。
今日は、傷や汚れの場所と状態を一緒に確かめて記録します。費用については、見積もりと契約内容を確かめたうえで、後日書面でご連絡します。
負担の考え方は、原状回復の費用負担の記事にまとめています。この記事は一般的な実務の整理で、個別の案件への法的な判断ではありません。判断に迷うときは、専門家や公的な相談窓口に確かめてください。
よくある失敗
ここまでの内容から、立会いでつまずきやすい点を拾いました。
| よくある失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 「傷あり」「汚れ」とだけ書く | 数か月後、どの傷の話か分からない | 目印と数字で「どこに・何が・どのくらい」を書く |
| 入居時の記録を持たずに行く | 入居前からの傷か比べられない | 入居時のリストと写真を必ず持参する |
| 写真を端末にばらばらに残す | どの物件の、どの箇所の写真か分からなくなる | 日付と部屋番号で保管し、記録と番号で結ぶ |
| その場で金額を言う | 見積もりや経過年数を確かめたあとで食い違う | 確認と記録にとどめ、費用は後日書面で伝える |
| 鍵の本数を確かめない | 返却漏れに気づくのが遅れる | 契約時の本数の控えと照らして記録する |
立会いの記録を1つの画面にまとめる
場所ごとの状態と写真を1つの画面で持つだけでも、立会いのあとの整理が軽くなります。
退去立会いチェックは、部屋の場所ごとに傷・汚れの状態と写真を記録し、借主と一緒に確かめた記録として印刷できるアプリです。

画面には、はじめから見本のデータが入っています。物件名や借主名は「【サンプル】」の付いた架空のもので、場所ごとの状態が「問題なし」「汚れ」「傷」「要確認」で並びます。上で書いた短い区分と同じです。入居日の欄は、経過年数を確かめるときに使う前提です。
使う前に知っておきたい点が2つあります。
- ログインしていない間は、入力したデータはその端末のブラウザの中にだけ保存され、サーバーには送られません。別の端末で使うときや、ブラウザのデータを消す前は、バックアップを書き出します
- 写真は撮った端末のブラウザにだけ保存され、ほかの端末からは見られず、バックアップにも入りません。確認書は写真を撮った端末から印刷(またはPDFで保存)します
このアプリは、 という、指示を文章で伝えると作業を進めてくれる を使って作りました。プログラムを書いた経験がなくても、「この項目を足したい」「印刷の形をこうしたい」と言葉で伝えながら、自社の確認リストに合った画面を作れます。
まとめ
- 退去立会いは、借主と一緒に傷・汚れの場所と状態の認識をそろえ、記録に残す場
- 当日は入居時の記録と契約書を手元に置き、玄関から順に場所ごとに確かめる
- 状態は「どこに・何が・どのくらい」で書き、写真は引きと寄りを組で撮って番号で結ぶ
- 費用の負担はその場で言い切らず、見積もりと契約を確かめて後日伝える
退去立会いの書式を、自社の物件に合った形で社員が自分でアプリにしたいときは、不動産業向けの研修で進め方を学べます。
