月の予算を逆算する計算式
4つの数字を1つずつ埋めていきます。上から順に決めると迷いにくくなります。
ステップ1:受注件数を決める
広告から月に何件の契約を取りたいかを、社長が決めます。売上目標から割り戻すのが素直なやり方です。たとえば広告で月120万円の売上を上乗せしたく、1件の契約が平均60万円なら、目標は2件です。
ここで欲張って大きな件数を置くと、あとの計算で予算がふくらみます。最初は「この件数なら営業が対応しきれる」と言える数にしておくほうが、始めてからの判断がぶれません。
ステップ2:必要な問い合わせ件数を出す
次に、過去の営業記録から成約率を出します。直近1年で問い合わせが40件あって、そのうち10件が契約になっていれば成約率は25%です。
必要な問い合わせ件数 = 受注件数 ÷ 成約率
受注2件、成約率25%なら8件です。紹介経由の成約率は高く出やすいので、できればWebからの問い合わせだけで計算してください。分けて記録していない場合は、全体の成約率より低めに置くと安全です。
ステップ3:必要なクリック数を出す
サイトに来た人のうち問い合わせた人の割合を、この記事では問い合わせ率と呼びます。広告の用語では
にあたります。
必要なクリック数 = 問い合わせ件数 ÷ 問い合わせ率
問い合わせ8件、問い合わせ率2%なら400クリックです。自社サイトのアクセス解析で、問い合わせ完了ページに到達した人の割合が分かっていれば、その数字を使ってください。分からない場合は、たとえば1%、2%、3%の3通りで計算して、幅として持っておく方法があります。
ステップ4:クリック単価を掛ける
最後にクリック単価を掛けます。配信前は、Google広告のキーワードプランナーで見込みを調べられます。ヘルプでは、キーワードの検索で表示される広告の平均費用を確認して予算の計画に使える、と説明されています。
月の広告費 = 必要なクリック数 × クリック単価
400クリック × 300円で12万円です。これを30.4で割った約3,950円が1日の平均予算になります。
粗利から「使ってよい上限」も出しておく
上の計算は「目標を達成するにはいくら要るか」でした。もう1つ、「いくらまでなら使っても赤字にならないか」も出しておくと、予算を決めるときに社内で揉めにくくなります。
問い合わせ1件を取るのにかかった費用を
と呼びます。使ってよい上限は次の式で出せます。
問い合わせ1件あたりの上限 = 受注1件の粗利のうち広告に回せる額 ÷ 受注1件に必要な問い合わせ件数
仮に、契約1件の粗利が60万円で、そのうち3割の18万円までなら広告に使ってよいと決めたとします。成約率25%なら受注1件に4件の問い合わせが要るので、問い合わせ1件あたり4万5,000円が上限です。この考え方は
とも呼ばれます。
継続して取引が続く商売なら、取引が続く期間全体の粗利(
)で考える方法もあります。ただ、始めたばかりのうちは1回目の粗利で計算しておくほうが、予算を使いすぎる心配が小さくなります。
BtoBの3業種で試算する
ここからは、架空の条件を置いて3つの業種で計算します。数字はすべて「仮に」置いたもので、実在の会社の実績や業界の平均ではありません。自社の数字に置き換えるときの型として使ってください。
試算1:工場向けの設備メンテナンス会社
仮に、地方で工場の設備点検を請け負う会社が、月2件の新規契約を取りたいとします。
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| 目標の受注件数 | 月2件 |
| 問い合わせから商談になる割合 | 50% |
| 商談から契約になる割合 | 25% |
| 必要な問い合わせ件数 | 2 ÷ 0.25 ÷ 0.5 = 16件 |
| 問い合わせ率 | 2% |
| 必要なクリック数 | 16 ÷ 0.02 = 800クリック |
| クリック単価 | 300円 |
| 月の広告費 | 800 × 300 = 24万円 |
| 1日の平均予算 | 24万円 ÷ 30.4 ≒ 7,900円 |
BtoBでは、問い合わせのすべてが商談になるわけではありません。見積もりだけ欲しい人、営業の売り込み、対象地域の外からの相談も混ざります。この例では、成約率を「商談になる割合」と「商談から契約になる割合」の2段に分けました。2段に分けただけで、必要な問い合わせは8件から16件に倍増しています。
試算2:地域の税理士事務所の顧問契約
仮に、地域の中小企業を相手にする税理士事務所が、月3件の顧問契約を増やしたいとします。
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| 目標の受注件数 | 月3件 |
| 成約率 | 30% |
| 必要な問い合わせ件数 | 3 ÷ 0.3 = 10件 |
| 問い合わせ率 | 3% |
| 必要なクリック数 | 10 ÷ 0.03 ≒ 334クリック |
| クリック単価 | 250円 |
| 月の広告費 | 334 × 250 = 8万3,500円 |
| 1日の平均予算 | 8万3,500円 ÷ 30.4 ≒ 2,750円 |
配信する地域を絞る業種は、クリックできる人の数にも限りがあります。計算上は800クリック要るとなっても、その地域でその言葉が月に数百回しか検索されていなければ、予算を積んでもクリックは集まりません。キーワードプランナーで月の検索数を見て、必要なクリック数と比べてください。
試算3:法人向けソフトウェアの資料請求
仮に、中小企業向けの業務ソフトを販売する会社が、資料請求から月5件の商談を作りたいとします。
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| 目標の商談件数 | 月5件 |
| 資料請求から商談になる割合 | 20% |
| 必要な資料請求件数 | 5 ÷ 0.2 = 25件 |
| 資料請求率 | 4% |
| 必要なクリック数 | 25 ÷ 0.04 = 625クリック |
| クリック単価 | 500円 |
| 月の広告費 | 625 × 500 = 31万2,500円 |
| 1日の平均予算 | 31万2,500円 ÷ 30.4 ≒ 1万300円 |
資料請求は問い合わせより気軽なので、率は高めに置いています。そのぶん商談になる割合は下がります。この試算だけ目標を商談の件数にしました。契約までの期間が長い商材だと、1か月の受注件数で広告を評価しにくいからです。
3つの試算を並べて分かること
| | 試算1 設備メンテ | 試算2 税理士 | 試算3 業務ソフト |
|---|---|---|---|
| 月の広告費 | 24万円 | 約8万4,000円 | 約31万円 |
| 問い合わせ1件あたり | 1万5,000円 | 約8,400円 | 1万2,500円 |
| 受注・商談1件あたり | 12万円 | 約2万8,000円 | 6万2,500円 |
予算の大きさを分けたのは、クリック単価より、問い合わせから契約までに何段の関門があるかでした。試算1はクリック単価が試算3より安いのに、1件の契約あたりの費用は一番高くなっています。広告費を下げたいとき、入札額を下げる前に、商談になる割合や問い合わせ率を上げられないかを見ると、効く場所が見つかりやすくなります。
試算した予算で足りるかを確かめる
計算で出た数字をそのまま1日の平均予算に入れる前に、3つのことを確かめてください。
検索される回数が足りているか
必要なクリック数が、狙うキーワードの検索回数を超えていないかを見ます。広告が表示された回数のうちクリックされた割合を
と呼びます。たとえばクリック率が5%なら、800クリックを取るには1万6,000回の表示が必要です。検索回数が足りなければ、キーワードを広げるか、目標件数を下げるかを考えます。
予算不足で広告が止まっていないか
配信を始めたら、
を見ます。Googleのヘルプでは、広告が表示可能だった回数のうち実際に表示された割合と定義され、入札単価や予算を上げたときに表示が増える余地があるかの目安になると説明されています。表示されなかった理由が予算不足なのか、広告ランクが足りないのかを分けて見るのが大事です。
の用語集もあわせてご覧ください。
予算不足で表示されない割合が大きいなら、予算を増やすと表示もクリックも増えやすい状態です。逆に、ほとんどの検索で表示されているのに問い合わせが少ないなら、予算を増やすより、広告文や受け皿のページを直すほうが先です。
判断できる件数が集まるか
月に問い合わせが1〜2件しか出ない予算だと、広告の良し悪しを数字で判断できません。試算で出た問い合わせ件数が少ない場合は、予算を上げるか、判断する期間を2〜3か月に延ばすかを最初に決めておきます。
Google広告には、問い合わせが増えるように入札額を自動で調整する
などの入札方法があります。自動の入札は問い合わせの記録をもとに調整するので、問い合わせがほとんど記録されない予算では、調整の材料が足りなくなります。
営業が対応しきれるか
見落としやすいのが、社内の受け入れ体制です。試算1では月16件の問い合わせを見込みました。1件の問い合わせに、電話での聞き取り、訪問、見積もりの作成まで含めて半日かかるとすると、月に8日分の営業の手間が増えます。
広告の予算は、問い合わせに返事をする人の時間とセットで決めてください。問い合わせが来ても返事が翌週になれば、その間に相手はほかの会社に声をかけているかもしれません。成約率が下がれば、計算の前提そのものが崩れます。対応できる件数に上限があるなら、その件数から逆算して予算を決めるほうが、お金を無駄にしにくくなります。
記録がない会社は今月から数える
成約率も問い合わせ率も分からない、という会社は少なくありません。その場合は、広告を始める前の月から、問い合わせがどこから来て、何件が商談になり、何件が契約になったかを表に書き始めてください。表計算ソフトで、日付、会社名、経路、結果の4列があれば足ります。
最初の試算は仮置きの数字で構いません。数か月分の記録が貯まれば、仮置きを自社の実績に置き換えられます。
代行に頼む場合の費用の内訳
「google広告 代行 費用」も調べている方に向けて、代行を使う場合のお金の分け方を書いておきます。
代行を頼むと、支払いは次の2つになります。
| 支払い | 払う相手 | 中身 |
|---|---|---|
| 広告費 | Google | クリックなどに対して発生する費用。この記事で計算してきた金額 |
| 運用手数料 | 代行会社 | キーワードの選定、広告文の作成、入札や予算の調整、報告などの作業代 |
代行会社の手数料は、広告費に対する割合で決める形と、月額の固定で決める形があります。見積もりを比べるときは、広告費と手数料を合わせた月の総額で比べてください。
エクスバンクの場合、Google広告かMeta広告の1媒体の運用は月8万円から(税別)で、広告費の20%を目安にしています。広告費そのものは、月20万円からを目安にご案内しています。これより少ない広告費でもお引き受けはできますが、自動の入札が学習に使う問い合わせの件数が貯まるまで時間がかかります。
この金額を上の試算に当てはめると、判断の材料が見えてきます。試算2のように広告費が月8万円台だと、手数料が広告費と同じくらいになり、総額に占める作業代の割合が大きくなります。広告費が小さいうちは自社で運用し、試算1や試算3のように広告費が月20万円を超えるあたりから外部に頼むか検討する、という分け方もあります。どちらが合うかは、社内に広告を見られる人がいるかどうかで変わります。
始めてから3か月の予算の動かし方
計算で出した予算は、配信前の仮の数字です。始めたら、仮に置いた数字を実績に置き換えていきます。
1か月目:仮置きの数字を実績と比べる
最初の1か月で見るのは、クリック単価と問い合わせ率の2つです。どちらも配信すれば実績が出ます。仮置きより単価が高かったのか、問い合わせ率が低かったのかで、次に手を入れる場所が変わります。
- クリック単価が高い:キーワードの選び方を見直す。関係のない検索で表示されていれば
を追加する
- 問い合わせ率が低い:広告を押した先の
の内容と、入力フォームの項目数を見直す
ページの直し方は
LPの構成要素12項目で扱っています。
2か月目:計算式に実績を入れ直す
1か月目の実績を計算式に入れ直し、同じ目標件数に必要な予算を出し直します。24万円のつもりが32万円必要だった、という例で考えます。そう分かったら、予算を増やすか、目標件数を下げるか、ページを直して問い合わせ率を上げるかを選びます。3つのうちどれを選ぶかは、経営の判断です。
3か月目:受注まで追いかける
BtoBでは、問い合わせから契約まで1か月以上かかることがあります。3か月目になると、1か月目の問い合わせのうち何件が契約になったかが見え始めます。ここで初めて、粗利から出した上限の獲得単価に収まっているかを確かめられます。
広告費と問い合わせ、受注を1枚の表で追う方法は、
広告の費用対効果を見るLooker Studioの型にまとめています。
まとめ
Google広告の費用は、相場から選ぶより、自社の数字で逆算したほうが納得できる金額になります。
- 月の広告費 = 目標件数 ÷ 成約率 ÷ 問い合わせ率 × クリック単価
- 1日の平均予算は、月の広告費を30.4で割った額。月の請求はこの30.4倍を超えない
- 使ってよい上限は、受注1件の粗利のうち広告に回せる額から出す
- 仮置きした数字は、配信1か月目の実績で置き換える
- 代行を頼むなら、広告費と手数料を足した総額で比べる
リスティング広告の仕組みや運用の流れを全体から確かめたい方は、
リスティング広告のフル運用フローも合わせてご覧ください。