叱責 2: 「順番が逆だ。バズ投稿実物を先に見ろ」
リサーチを進めて X 投稿の「型」を抽出させたとき、AI は「バズるツイートの法則」という Web 記事を 4 本読んで、抽象的な型を 5 つ提示してきました。「自己認識トリガー 5 要素中 3 つ以上含むと保存率が高い」のような、それっぽい仮説でした。
私は再度止めました。「
実際のバズ投稿そのものを 1 本も見ていない じゃないか」と指摘しました。記事を読んでも「型」は仮説止まりです。検証するには実投稿のデータが要ります。
修正後、AI は X スクレイピングのライブラリを探し、サブ垢で
Cookie 認証して、「フォロワー 1,000 以下なのに 5,000 いいね以上ついた投稿」14 本を実取得しました。結果、自分が出していた仮説は
Top50 のうち 0 件 でしか成立していませんでした。
代わりに見えたのは、平均 fav/フォロワー比 232 倍という異次元の数字と、「反復セリフ」「物語+セリフ落ち」「知識リスト」など、実投稿に裏打ちされた 5 つの黄金型です。
仮説と実データの解像度差
叱責 3: 「同業者じゃなくて、釣ってる隣接アカウントを見ろ」
X のリサーチアカウント候補を 10 名提案してきたとき、AI は
占い系インフルエンサーばかり をリストアップしてきました。鏡リュウジ、紫微斗数の宮本、桝元つづり、など。
これも止めました。理由はシンプルで、「
同業者が釣っているのは占い好きな層 」だからです。同じターゲット層を釣っているのは、占い以外の領域 ── 30 代女性ライフ作家 (ジェーン・スー・紫原明子)、メンタル自己受容系 (Jam・minori)、キャリア悩み系 (やつづかえり) などです。
修正後、AI は隣接ジャンルのアカウントを 10 名選び直しました。実取得段階では 4 アカウントしか有効にならない (screen_name の特定誤り) という別の失敗もありましたが、方向性は正解でした。実バズ投稿の
母集団 に、ペルソナと近い投稿が増えました。
叱責 4: 「お前、X Harness の仕様書読んだのか?」
ここが一番痛い叱責でした。
AI は 12 キャンペーンの運用設計を提案してきました。各投稿に UTM タグを付けて、Cloudflare Web Analytics で遷移計測する、という案です。それっぽく見えましたが、私は「お前、X Harness の Campaign と Engagement Gate を理解しているのか?仕様書を読み直してこい」と差し戻しました。
X Harness OSS には
Engagement Gate というキラー機能があります。リプライキーワード + いいね + リポスト + フォローの 4 条件をクリアした人だけに、
verify_only モードで特典を配布する仕組みです。これは LINE Harness のフォームと連携して、Cron 不要・X API 課金最小で動きます。
UTM 計測なんて出る幕ではありません。AI は仕様書 (
docs/SPEC.md、
docs/LINE-HARNESS-INTEGRATION.md) と実装ファイル (
engagement-gate.ts、
engagement-gates.ts) を読み直し、設計を全面的に組み直しました。
> 💡
KEY TAKEAWAYS
> AI は「それっぽい設計」を出すのが得意です。ただし社内ツールやプロダクトの
既存仕様 を踏まえているとは限りません。「うちのシステムにはこれがある」という前提を踏まえさせるには、仕様書のパスを渡して読ませるしかありません。読まずに出した提案は、必ず筋から外れます。
叱責 4 の前後 — 設計の比較
| 観点 | 叱責前 (UTM 計測案) | 叱責後 (Engagement Gate 案) |
|---|---|---|
| トラッキング | UTM パラメータ | リプライキーワード + 4 条件 |
| 配布判定 | リンクをクリック | verify API でリアルタイム判定 |
| LINE 連携 | 別途自然流入頼み | 友だち追加 + タグ付与 + シナリオ自動開始 |
| ステルス性 | 低 | Cron 不要、API 課金最小 |
| キャンペーンごとの工数 | バラバラ | 12 本同じフォーマットで統一 |
叱責 5: 「すべてキーワードリプ投稿で campaign を組む!」
仕様を読み直した AI が再提案してきた設計を、私はさらに振り切らせました。「
全 12 本を、すべて Engagement Gate のキーワードリプ型に統一しろ 」と指示したのです。軽いリプ誘発型 (DM ボット) も、しっかり 4 条件型 (verify_only) もありますが、根本構造はすべて「キーワードでリプライさせる」という形に揃えました。
これで運用も一気に簡素化されました。同じ Python スクリプト (
setup_campaigns.py) で 12 本分の Gate と LINE Form を一括登録できる構造になり、「
--apply --filter cmp-found-pin」のようにキャンペーン単位での実行もできます。
叱責 5 で揃えた、12 キャンペーンの統一設計
完成した MVP — cmp-found-pin
最終的に、初発のキャンペーン
cmp-found-pin は次のフローで本番稼働しました。
1. PIL + qrcode でブランド統一画像 (1080×1350, ゴールドの QR 入り) を Python から生成
2. X Harness の
/api/media/upload で画像を X にアップロード (
media_id 取得)
3.
/api/posts で本投稿 (
post_id 取得)
4.
setup_campaigns.py --apply で Engagement Gate を登録 (キーワード「咲く」、4 条件、
verify_only モード)
5. LINE Harness のフォーム (事前登録済み) の webhook URL を新
gate_id に書き換え
6. LINE シナリオ S01 (7 日間講座) を 5 ステップ連続で API 登録
7. verify API を実際に叩いて、
eligible: false (まだリプ未達) のレスポンスを確認
すべて API 経由の自動実行で、最後の
「投稿をプロフィールに固定する」 だけが手動 という状態に着地しました。
:::details 完成までに作った成果物 (campaign/2026-05-04/ 配下)
-
campaign_master.md — 12 キャンペーン分の運用バイブル v2
-
setup_campaigns.py — Gate + Form 一括登録スクリプト
-
x_canva_briefs_v2.md — 画像 12 枚分のデザイン指示書
-
line_harness_fixtures.md — フォームとシナリオの仕様書
-
MVP_RUNBOOK.md — 残り手動 4 ステップの手順書
-
diagnose_pdf_draft.md — 特典 PDF の原稿 (4 ページ)
-
gen_card_c05.py — PIL による画像自動生成
-
Image01_C05_pin_saku.png — 投稿された実画像
:::
叱責駆動開発の 4 つのコツ
最後に、AI を参謀として使うときに私が気をつけている 4 つを残しておきます。
1.
前提を疑え : AI が前提条件を取り違えていると感じたら、すぐ止めて指摘する。前提を直せば残りは AI 側が一気に進めます。
2.
仕様書を読ませろ : 既存システムを踏まえた提案が必要なときは、仕様書のパスを必ず渡す。「読んでくれているはず」は通じません。
3.
抽象論を二度受けない : 1 回目の提案が抽象的なら、2 回目は実データを取らせる。実データに基づかない型は、実装段階で破綻します。
4.
叱責は履歴に残せ : 一度叱った内容は組織の知識資産。チェックリストやテンプレートに変えれば、次のメンバーが同じ高さからスタートできます。
次のアクション
EXBANK では、こうした
AI を「叱って育てる」業務体制の構築支援 も行っています。「ウチも AI で動ける体質か?叱り返すリテラシーが現場にあるか?」と気になった方は、社員が自分で業務のアプリや仕組みを作れるようになる
Claude Code 研修 も行っています。
具体的な業務に AI を入れる相談がある場合は、お問い合わせフォームでご連絡ください。叱責の数だけ AI が育つので、最初の 3 ヶ月は伴走支援も可能です。